第5話 VRchat!2―伊織目線―

久しぶりに初心者集会所にジョインしたら、いかにも感がすごい初心者の人がいた。

 灰色の初期アバターをしてチョロチョロとしているところを見ると、どう話しかけたらいいか迷っているのだろか。

 なんか、懐かしく思えてくるな……。俺も最初はあんな感じだった、、、

 伊織も初心者の頃、『どこに行っても外国人ばっかじゃねーか!!何が楽しいんじゃこれ?!』とか思ってた。

 

 そうして、なんやかんやあって、二人でアバターミュージアムに行くことになった。

 京さんは無言勢だが、びっくりするくらい感情がわかりやすい。


「はい、ここがアバターミュージアムです。」


 くぐったポータルの先は、いかにも博物館という場所で、様々なアバターのサンプルが設置しており、大体のアバターは試着することができる。

 伊織自身、最初にフレンドになった人たちに連れてきて貰った思い出の場所だ。


「ここに飾ってあるアバターは、ほとんどが試着できるので、いい感じのアバターがないか探してみましょう。」


 伊織の提案にまたしても大きく頷く凛。

 ぴょんぴょんとジャンプしながら進んでいく姿は、見ていてとても嬉しくなった。


「京さん、何かいいアバターありました?」


 伊織が聞くと、凛はエルフ風のお姉さんアバターの前でぴょんぴょんと飛んだ。

 灰色の綺麗な髪に、出るところはしっかり出ているスタイルのアバターで、VRchatでもかなり人気の高いアバター。

 

「いいアバターですね。あ、試着の方法は、」


 伊織に試着の方法を教えてもらった凛は、またしてもテンションが上がり、お気に入りのアバターを目指してどんどんと進んでいった。

 

「良かった……楽しそうだ。」


 正直、楽しんでもらえるかかなり不安だったが、想像していた以上に楽しんでくれているようで何よりだ。

 伊織は完全に保護者ポジションで凛を見守る。

 VRchatの楽しさに気づいてもらえた嬉しさもあるが、”昔自分がしてもらえて事を今度は自分がする”事の高揚感というか、満足感というのは計り知れない。

 と、一人感慨に浸っていると、もう一人フレンドが入ってきた。


「やっほ~。」


 ゆる~い話し声でジョインしてきたのは、伊織のフレンドの真夜中まよなか

 話し声通り、アバターも緩い。黒髪ロリっ子姿に、ダボダボのパーカーを着ている。ズボンは一応ショートパンツを履いているらしいが、ホントかどうかは知らない。

 この前興味本位で見せてって言ったら、『黒さんってロリコンなんだぁ~。』と言われ、その後一週間くらい俺のあだ名が”ロリ黒さん”になって、フレンドみんなにしばらくからかわれた。


「まよちゃんども。今初心者の人とアバター選んでるんよ。」

「お~いいねぇ。私も手伝ってあげるよ。」

「ありがたいけど、まよちゃんロリっ子かショタっ子しか興味ないじゃん。」

「小さいのは正義だからね~。仕方ないよ。」


 伊織と真夜中が少し話し込んでいると、凛がドラゴンのアバターをして帰ってきた。


「おわ~でっか!」

「でかいねぇ。」


 またしてもぴょんぴょん跳ねる凛に、伊織は真夜中を紹介する。


「京さん、この人は真夜中ちゃんで、VRchatの大先輩です。」

「真夜中だよ~。長いからまよでいいよぉ。」


 凛はペコリと頭を下げる。

 無言勢にとって、意思疎通は最大の難関だろう。伊織はどうにか楽に意思疎通を取り合う方法を考えるが、全然思いつかない。

 すると真夜中が「そうだねぇ」と前置きをして、


「メッセージチャットを使ったら楽だよ~。」

「それだ!!」


 完全に忘れていた。そういえばメッセージチャットという機能があった。

 真夜中は凛にメッセージチャットのやり方を説明する。

 流石まよちゃん、でもVRヘッドセットをつけた状態だとキーボード打てないんじゃ……。


【ありがとうございます!】

「うんうん。いい感じだねぇ。」


 伊織の心配は不要だった。

 流石にVtuber。時代の最先端の職業でトップクラスにいる凛にとってブラインドタッチは朝飯前だ。

 

「それじゃ、もう少し見ましょ。」

「そうだねぇ。ボクのおすすめはこれだよ~。」

【どれも可愛いですね!】

 

 その後、日付が変わる時間まで、三人でアバター見学をした。


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ちなみに、【⠀】がメッセージチャットです。

分かりづらくてすみませんm(_ _)m

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