第6話 配信! 晩酌!

0時6分。凛は満足感に浸りながらカップラーメンを啜っていた。

 まさかVRchatがあんなにも楽しいゲームだったなんて……。

 

「明日は紫苑ちゃんも誘おうかな。あ、アバターも探してみよ。」


 やりたことが次々に溢れ出してくる。

 こんな感覚は、Vtuberを初めて以来だ。

 凛はワクワクしながら、Twitterを開き、自分の裏垢に飛ぶ。

 このアカウントは完全に趣味用のアカウントで、好きな絵師やVtuberをフォローするのに使っているアカウント。

 凛はそのアカウントで、”水白 黒”と検索をかける。


「アカウントどれだろ……。」


 教えてもらったことによると、大体のユーザーはTwitterを使っているらしい。

 黒さんのアカウントは教えてもらい損ねたけど、検索をかけたら出てくるはず!

 

 と、しばらく画面をスクロールしていると、個性的なケモミミアイコンのアカウントが出てきた。


「これだ!」


 凛は素早くアカウントにアクセスして、即フォロー。そして少し投稿を遡って見てみる。

 すると、2分前にツイートされていることを発見した。


「お?」


 どうやら、今日の写真をアップしたらしい。

 私と、黒さんと、まよちゃんの三人の写真……いつの間に撮られてたんだろう。

 凛は少し混乱したが、それ以上に、

 

「ッッ~~~!!」

 

 嬉しくなった。

 Vtuber活動で登録者が増えた時や、ゲームでチャンピオンを取った時とは違う嬉しさ。

 凛は勢い余って四枚の写真を保存して、壁紙にした。


「よし! 明日もやろう! ……ダメだ明日配信だわ。」


 ちくせう。

 昼間は時間があるが、みんな仕事や学校がある。


「はぁ~……寝よ。」


 カップラーメンのゴミをゴミ箱にシュートして、そのまま寝床に付いた。



ー次の日の夜ー

「今日は雑談配信だよ~ん。」


 凛は机の上に缶チューハイとナッツのお菓子を置いて、配信を開始する。

 コメントでは、『待ってました!』『酒盛りじゃーーー!』『飲むぞ!』など、大いに盛り上がっていた。


「はいはい。あいも変わらずアル中しかいないのね。ここ。」


 そう言いながらも、凛は缶チューハイの栓を開ける。

 プシュ! っという素晴らしい音が、人の欲望を刺激する。


「今日は何について話す?」


 凛の雑談配信はいつもこんな感じで、最初からリスナーに話題を貰っていくスタイルだ。

 いつもノープランだが、貰った話題に対するトーク力の高さも人気の一つだ。

 そうしていつものように、大量のリクエストが流れてくる。

 ちなみに、スパチャしてくれる人優先だ。ここは、お金を払ってもらっているので当然と言えば当然である。

 そして、一番最初に飛んできた赤スパの質問は、『企業でやっているYoutuberってどう思うん?』


「あ~最近多いよね。だってあれ、企画費用って経費で落とせるんでしょ? よくわかんないけど。まあ、最初から環境が整ってるのは強いよね。」


『それな。その辺のYoutuberよりもクオリティ高い。』

『凛よりも面白い。』


「おい! 私よりも面白いってコメントしたやつ! アルコール入ってないだろ! 正論言うな!!」


 必死である。

 この凛の返事にリスナーは『アルハラや! 逃げろ!』や『正論は草。』、『アルコールが入っているか見抜ける程度の能力か……。』など、アルコールが入ってそうなコメントばかりである。


「でも、本当に一企業に一チャンネルの時代とか来るかもね。だってほら、もし企業チャンネルでVtuber始める人がいたら、マジモンの企業Vだよ。」


 企業に所属のVtuber ではなく、企業で活動しているVtuberである。

 もし、そのチャンネルが成功したら案件動画投稿し放題である。

 

「まぁ、Vtuberって色々難しいから、まだ難しいと思うけどね~。」


 段々とアルコールが体に回ってきて、気持ちよくなってきた凛は、特に何も考えずに話を進める。

 ……が、凛はまだ知らない。この発言が、とんでもないブームを巻き起こすことになる……。

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