第15話 後日
次の日、伊織は重い瞼を必死でこじ開けて目を覚ます。
とりあえず体を起こして、ベッドの上で大きく伸びをする。最近、歳のせいなのか分からないが、伸びをすると少し目眩がする。
よっこらせとベッドから降りて、朝の身支度に向かう。
洗面所で歯を磨きながら、スマホを見ていると、狛音からPDFが届いているのを発見した。
「マネージャーの業務要項か。」
大して気にしてなかったが、確かにどんな仕事なのかは知っておく必要がある。
最悪、本業の方をどうにかしなければならなくなるかもしれない。
そうなったら面倒臭いなとか思いながら、狛音から送られてきたPDFを確認する。
「え~っと……まじ?」
驚きのあまり、伊織は咥えていた歯ブラシを床に落とした。
「スケジュール管理と配信の手伝い、メンタルケアで月給23万……だと。」
何だよそれ、うちの会社よりホワイトじゃん。
一見低いように見えるが、この仕事量でこの給料はコスパが良い。
そして、どうやらこの要項は狛音が書いてものではなく、Virtual Planning Fでの募集のようだ。
「やっぱり大手企業様は待遇も違うな。」
でも、少しだけ気になることがあるとするならばやっぱり、
「メンタルケアってなんぞ?」
うがいをしながら、メンタルケアって何をすればいいかを考えるが、全く思いつかない。
カウンセリングみたいなものだろうか。だとしても、伊織はカウンセリングなんてした事もしてもらったこともない。
伊織はリビングに戻って、ロボット掃除機の電源を入れる。
「……はぁ。勉強するしかないか……。」
仕事としてお金をもらう以上、半端な仕事は出来ない。分からないなら調べるなり勉強するなりするしかない。
ということで、伊織は通販サイトを開いて心理学やマネージメント系の本を数冊購入した。ちなみに伊織は電子書籍は読まない。タブレット端末で見ていると無性にゲームがしたくなるからだ。
まあ、本が届くまでのタイムラグはあるが……。
「なんか食べよ。」
冷蔵庫から取り出した冷やご飯をチンして、某業務用スーパーで購入した瓶詰めの鶏そぼろを乗せて食べる。
これから一人暮らしを始める人に助言があるとするなら、業務用スーパーが自転車圏内にあるようにしよう。
伊織は鶏そぼろご飯を3分でかきこんで、寝間着から着替える。
出社する時はスーツなのだが、家の中ぐらい私服でいいだろう。
「出社時間までまだあるな。」
出勤時間がないため、いつもより20分くらい余裕がある。
だが、20分という時間は何かをするには微妙すぎる時間なので、ソファでゴロゴロすることにした。
ぐでーんとソファで寝転びスマホでネットサーフィンに勤しんでいると、ディスコードの通知が来た。
八重桜 京:黒さん今日はVRchatします?
水白 黒:仕事の進捗次第かな。今日はパーツ分けする予定だけど、終わる気がしない……。
八重桜 京:頑張ってください黒さん!!
凛の何気ない応援が、伊織に響いた。久しぶりに誰かに応援された気がする。
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