第19話 孤高の魂

 「俺」のフィールドに突如召喚された《虹彩騎士こうさいきしーダークソウルノヴァ》。《反逆の牙》と《孤高の烈火》の効果で攻撃力が11500まで上がっていたダークナイトをリリースしてまで召喚されたこのモンスターにはそれ程強力な能力が備わっているってことか。てっきり同じデッキを使っていると思っていたが、こいつは俺のデッキには入っていないカードだから効果は全くわからない。

「バトル!ダークソウルノヴァでオーバー・ザ・レインボーを攻撃!」

ダークソウルノヴァの攻撃力は4000でオーバー・ザ・レインボーの守備力は2000。このまま攻撃が通れば倒されてしまうが・・・

トラップカード発動!《七星の結界ーセブンスウォール》!レベル7のモンスターが相手モンスターから攻撃を受ける時、相手フィールドのモンスターを全て破壊する!」

オーバー・ザ・レインボーはレベル7だから効果は有効。これでダークソウルノヴァを破壊できるはず。

 金色の結界に守られダークソウルノヴァの剣から放たれた真空波は反射されて奴の巨躯を貫く。やがてその体は消滅していく。だが・・・

「ダークソウルノヴァの効果発動!このカードが破壊された時、墓地の《虹彩騎士》モンスターを1体除外することで墓地から特殊召喚できる!クリアナイトを除外してダークソウルノヴァを蘇生!」

クリアナイトの魂を糧にダークソウルノヴァが再びフィールドに現れた。なるほど・・・この効果を使うためにあえて墓地のダークナイトの蘇生効果を使わなかったのか。ダークナイトは墓地のカード2枚を除外して特殊召喚できるが、その効果を使えば「俺」の墓地の《虹彩騎士》が減ってしまうからな。召喚しても《七星の結界》で破壊されてしまうから結果的に出さなくてよかったが・・・。


バトルフェイズ中に特殊召喚されたダークソウルノヴァにはまだ攻撃の権利がある。

「再びバトル!ダークソウルノヴァで攻撃!」

この攻撃は避けられない。真空波で俺のオーバー・ザ・レインボーが切り裂かれ破壊される。守備表示だから戦闘ダメージはない。

「この瞬間ダークソウルノヴァの効果発動!相手モンスターを戦闘で破壊した時相手に4000ダメージを与える!」

「4000のダメージだと!?インチキ効果もいい加減にしろ!」

三度ダークソウルノヴァが真空波で俺を攻撃しようとする。

「手札から《虹彩騎士ーリーフナイト》の効果発動!このカードを墓地に送り戦闘ダメージか効果ダメージを1度だけ半分にする!」

リーフナイトが俺の目の前に障壁を作り衝撃を和らげる。


ユーグLP4000→2000


半減したとはいえ2000のダメージは大きい。一旦は癒されたと思っていた体の傷がうずいてきた。

「俺はカードを一枚伏せてターンエンド。この瞬間ダークソウルノヴァの効果発動!互いのターンの終わりに双方のプレイヤーに1000ポイントのダメージを与える!」

「またバーンダメージか!」

ダークソウルノヴァが咆哮を上げながらその場で剣を振り回し俺たちに真空波をぶつけてきた。双方に激痛が襲う。


ユーグLP2000→1000

「俺」LP3500→2500


 まずい・・意識が朦朧もうろうとしてくる・・だがこの痛みは「俺」とて同じ。この痛みに耐えられなければ「俺」を救い出すなんてことできるわけがない。俺たちはボロボロの体でかろうじて意識を保っている。

 俺のライフポイントは残り1000。このターンで決着を付けなければダークソウルノヴァの効果で俺のライフは尽きる・・・。ダメージも疲労もこれが限界。どの道俺の体はあと一撃でも受ければ終わりだろう。・・・・・だが、俺は決して諦めない。必ず「俺」を救ってみせる。


「俺のターン・・・デステニードロー!!!」


・・・・・必死に「俺」の真意を探る。たとえ体中が血だらけで満身創痍まんしんそういになろうとも勝利を得るための最善手を模索する「俺」。仲間も味方もいなくても孤独を恐れず「孤高」を貫き続ける「俺」。そうだ、これがお前のデュエル。

・・・・・お前は立派なデュエリストだよ。世界中の誰もがお前を認めてくれなくても俺だけはお前をリスペクトするよ。



「俺は手札から魔法カード《創世開幕》を発動!このカードの効果には二つの選択肢がある。フィールドのモンスターを全て破壊するかお互いに墓地のモンスターを可能な限りそれぞれのフィールドに特殊召喚するかだ。そしてこの効果の選択権は相手プレイヤー、つまりお前にある!さぁ、選んでもらおうか!」

「・・・・・俺は『フィールドのモンスターを全て破壊する』効果を選ぶ」

フィールドのモンスターは「俺」のダークソウルノヴァのみ。俺のモンスターは破壊されず「俺」のモンスターだけが破壊される。一見プレイングミスに見えるが、これは「俺」の計算通り。

「破壊されたダークソウルノヴァの効果!墓地からバイオレットナイトを除外して蘇る!」

そう、ダークソウルノヴァは墓地に《虹彩騎士》がいれば破壊されても復活できる。もし《創世開幕》の効果で墓地のモンスターを復活する効果を選んでいればダークソウルノヴァの復活効果は使えなくなるからな。《創世開幕》を使ったターンはお互いに受ける戦闘ダメージは0になる。だがダークソウルノヴァの効果ダメージは問題なく使える。つまり「俺」の狙いはダークソウルノヴァを温存し効果ダメージで俺のライフを0にすること。だがこれは

「墓地のオーバー・ザ・レインボーの効果発動!墓地から七星の結界、

リーフナイト、創世開幕の3枚を除外して特殊召喚!さらに手札から魔法カード《共闘の架け橋》発動!場にオーバー・ザ・レインボーがいる時自分か相手の墓地からモンスター1体を特殊召喚しそのモンスターのレベルの100倍オーバー・ザ・レインボーの攻撃力を上げる!俺はお前の墓地からダークナイトを蘇生する!」

「俺」の墓地からダークナイトが復活しオーバー・ザ・レインボーを支援する。ダークナイトはレベル5だから500ポイント攻撃力を上げる。そしてオーバー・ザ・レインボーはカード効果で攻撃力が変化すると自身の攻撃力を倍にする。よって攻撃力は6000になるが・・・。

トラップカード《運命の呪縛》発動!これでオーバー・ザ・レインボーは攻撃できず効果も無効になる。せっかくの切り札も無意味だったな!」

「・・・ああ、俺の切り札がオーバー・ザ・レインボーならそうだろう。だが、本当の切り札は、お前だ」

「・・何を言っている?」

「お前が《創世開幕》の効果でモンスターを破壊する効果を選んでくれたおかげでこのデュエルに勝利できる。お前の戦略は確実に勝利に向かっていた。だが、ダークソウルノヴァの力に頼るあまりお前は自分のデッキを信じられなくなった」

「くだらねぇこと言ってんじゃねぇ!!デュエルなんて勝利が全てだろうが!デッキを信じただけで勝てんなら苦労しねぇんだよ!!」

「デッキを信じる、カードを愛する、デュエルを楽しむ、そんなありきたりで純粋な心がデュエリストを強くしてくれるんだ・・・・・彼女のように」

「お前は・・・」

「バトル!ダークナイトでダークソウルノヴァに攻撃!」

「バカが!攻撃力2000のダークナイトでどうやって攻撃力4000のダークソウルノヴァを倒すんだよ!」

「速攻魔法 《孤高の魂》発動!ダークナイトを対象にそれ以外の自分のモンスターを全てリリースし、対象モンスターの攻撃力をリリースしたモンスターの元々の攻撃力分上げる!」

「なん・・だと・・」

オーバー・ザ・レインボーの攻撃力2500が加算されてダークナイトは攻撃力4500になる。ダークナイトの斬撃がダークソウルノヴァを粉砕する。

「この瞬間ダークナイトの効果発動!戦闘で相手モンスターを破壊した時その攻撃力分のダメージを与える!」

ダークナイトが二の太刀で「俺」を切りつける。ダークソウルノヴァの攻撃力4000のダメージが与えられる。


「俺」LP2500→0 ユーグwin









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