第23話 全力勝負の約束
―――――試合開始30分前―――――
「失礼します。ヘヴィメタさん」
「ユーグ・・・久しぶりだな」
俺は大会出場選手の控室、ヘヴィメタさんが待機している部屋にお邪魔した。二人の看守が俺たちの会話を聞いているとはいえ、久しぶりにヘヴィメタさんとゆっくり話せる。
「まずは、ここまで勝ち進んでお互い良かったですね」
「ああ。まさか俺が勉強漬けの毎日を過ごすなんて考えもしなかったよ」
「あの筆記試験はなかなかハイレベルでしたね。俺はあんまり自信なかったんですがなんとかパスできてよかったです」
「お前は元々優秀だし大丈夫だろ。学生時代ろくに勉強してなかった俺がパスできるなんて奇跡だろ」
「奇跡なんかじゃないですよ。あなたがこのドミネイトリーグにかける思いは誰よりも強いはずです」
「・・・・・知っていたのか?俺がこのリーグに参加した本当の理由を」
「ええ、知ってますよ。このリーグで優勝してプロになれば、あなたとハーピィさんは晴れて自由の身になれるんですよね?」
「そうだ。リーグに優勝すれば俺とハーピィが犯した罪が免除されるように取引した。警察の奴らも意外と話が分かるんだな。有能なデュエリストなら檻から出しても問題ないって訳だ。デュエルに支配されたドミネイト様様だ」
1年前にヘヴィメタさんとハーピィさんが犯した罪。デュエルでハーピィさんを傷つけデュエルを冒涜したことになっていたが、この話がすべてヘヴィメタさんとハーピィさんが作ったでっちあげだと二人とも証言したのだ。誰も傷つけていないことが証明されたが、世間を
「・・・・・本音を言えばこのデュエルはヘヴィメタさんに勝たせて二人を釈放させたい。ですが俺にも譲れない想いがある。たくさんの期待を背負ってここまできた。あなた方の事情を知っていてもこのチャンスを棒に振ってプロになる道を諦める訳にはいきません」
「そうだ、この戦いに八百長なんて許されない。互いに譲れない信念がある限り全力でぶつかるしかない。それがデュエリストってもんだ」
「あなたと戦うのはあの時以来ですが、このデュエルは勝たせてもらいます」
「俺もお前に絶対に勝つ!どっちも全力で戦って最高のデュエルをすると約束しよう」
「ええ!」
本当はもっとヘヴィメタさんと話をしたい。だが、戦いを目前に控えたデュエリストがこれ以上語り合う訳にもいかない。デュエル前のデッキ調整や戦略を練る時間も必要だ。なにより・・・ずっとヘヴィメタさんと話してると戦意が削がれそうだ。
「じゃあスタジアムで会いましょう」
「おう」
それから俺は振り返ることなく控室を出ていった。
もしこのデュエルで俺が勝てば、ヘヴィメタさんとハーピィさんを再び地獄に堕とすことになる。罪悪感がないわけじゃないけど、このデュエルは絶対に勝ちたい。
それに俺はヘヴィメタさんにも償うべき罪があると思っている。それは真実を告発しなかったことではない。自分が犠牲になればハーピィさんが幸せになれると思いあがっていたことだ。どんな事情があっても誰かを犠牲にしたうえでの幸せなんて本当の幸せじゃない。たとえどんなに荒れた道でも二人で幸せを掴むべきだった。
もちろん二人がこうなってしまったのはチームドランカードの一員だった俺にも責任がある。もっと二人とちゃんと話すべきだった。二人の心と向き合うべきだった。
だがそんな事情も今は関係ない。たとえヘヴィメタさんとハーピィさんから怨まれることになっても俺はこのデュエルに勝って夢を掴む。
―――――回想終了―――――
ヘヴィメタさんの場には《
「俺のターンドロー!手札から魔法カード 《孤高の誓い》を発動!デッキの上からカードを二枚墓地に送りデッキから《孤高》魔法、
「前のターンにモンスターが全滅したばかりなのにもう立て直したか」
「俺のデッキは墓地にカードが貯まっていればモンスターをたくさん出せますからね。何度倒されても諦めずに
バトル!オーバー・ザ・レインボーでガトリングドラゴンに攻撃!そしてこの瞬間手札から速攻魔法 《孤高の魂》を発動!バイオレットナイトをリリースしてその攻撃力500ポイントをオーバー・ザ・レインボーに加える!さらにオーバー・ザ・レインボーはカード効果で攻撃力が変化した時攻撃力を倍にする!これで攻撃力は6000です!」
「オーバー・ザ・レインボーとガトリングドラゴンの攻撃力の差は3200!ヘヴィメタのライフも3200!この攻撃が通れば一気にユーグの勝利です!これはさっきの1ターンキルの意趣返しでしょうか!?」
「甘いぞユーグ!
「何っ!?」
パワーアップしていたオーバー・ザ・レインボーは元々の攻撃力2500でガトリングドラゴンを斬りつけるが、《
ユーグLP1200→600
「起死回生の反撃も不発に終わりユーグのライフも残り600!ギリギリの瀬戸際まで追い詰められました!ユーグに逆転の手は残されているのでしょうか!?」
「《
「ああ。今までこのカードは使ってなかったが、お前相手なら役に立つ」
「・・・確かにこのカードは相性最悪ですね」
かつて共に戦っていたヘヴィメタさんのエースモンスターが、今じゃ俺に対峙するアンチカードに早変わりしちまったぜ。これがヘヴィメタさんの本気か・・・こいつは一筋縄じゃいかないな。
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