第1章 デュエルスクール編
第1話 転生召喚!「ユーグ・オー」
俺の名前は「ユーグ・オー」。正確な発音はもう少し複雑だけど日本語で表現するとだいたいこんな感じだ。元居た世界からこっちの世界に転生されてから約7年が経過しようとしている。幼いころから天才とか神童とか言われるのにも慣れてきたが決して努力は怠らない。技術や才能というものが所詮一過性のものだってことを知っているから。
「お母さんおはよう!」
「おはようユー。今日も元気いっぱいね。学校行く準備はもうできた?」
「もちろん!昨日は楽しみでなかなか寝れなかった!」
こっちの両親には本当に感謝している。家自体はごくごく一般的な一軒家だけど本だけは充実していて勉強するのにも困らなかった。おかげで2歳から文字の読み書きもできるようになったし、4歳になるころには読書が日課になるくらいには言語力が上がっていた。テレビもなければネットもない不便な世界ではあるけど、俺はここでの生活に満足していた。
今日は待ちに待ったデュエルスクールの登校初日だ。この学校は基本的には10歳になる年から入学するものだが、俺は日頃の勤勉さや行儀の良さが評価されて特別に6歳で入学を許された。つまり特待生ということになる。学校に入ってすぐに行われた入学式は退屈だったが、今日は学校生活よりも楽しみにしていることがある。
それは、ついにデッキが手に入ることだ。この世界では学校入学を機にようやく自分のデッキを持つことができるようになるのだ。この世界では誇張でもなくカードは神聖な儀式で扱うものであり、年端もいかない少年少女が扱えるものではない。カードにもそれを操るこの世界の人間にも微力ではあるけど魔力が宿っていて、その力を開放することでカードの実体化が可能になる。つまりカードさえあれば誰でもダイレクトアタック!が可能なのだ。だから不用意に子供にカードは与えられないから俺は何年もの間カードを一切握ることなくカード図鑑とにらめっこしていた訳である。
だが、ようやく自分のカードが持てるようになる。こんなにわくわくするのは久しぶりだ!きっと初めてカード買ったときもこんな感情を抱いたんだろうなぁ。
さっそく担任のクロス先生が手渡してきたのは「力のデッキ」と「技のデッキ」だ。俺はカード図鑑を熟読してきたので初心者用に作られたこの二つのデッキの特徴は既にインプット済みだ。俺は迷わずに「力のデッキ」を選んだ。クロス先生は「ようこそ、デュエルの世界へ」と生徒全員を歓迎してくれた。生徒全員が自己紹介を終えた後、俺は意気揚々と校庭に向かう。そして・・・
「おう、お前が噂のユーグか。さっそくだけど俺とデュエルしてもらうぜ!」
「僕でよければお相手しますよ、カイバー君。よろしくお願いします!」
ついに、ついにデュエルができるぞ!!ここまで本当に長かったぜ!!こんなにデュエルがしたくなるのも何年ぶりだろう…。
さぁ、おなじみの掛け声を叫ぼうじゃないか!!
「「デュエル!!」」
互いのデュエルフィールドが展開され手札のカードがプレイヤーの正面に投影される。
「いくぜ俺のターン!《
するとカードの一枚がモンスターゾーンに置かれ、中からモンスターが飛び出してくる。獰猛な牙を持った厳つい顔のライオンのような姿。
「モンスターが、実体化した!!」
「え?あたり前じゃないか。なに驚いてんだよ」
「ああ、そうだね・・」
そう、こっちの世界ではこれがあたり前なんだよなぁ・・・。俺が前にいた世界じゃただのカードからモンスターが飛び出してくれるなんて漫画とアニメだけの話だった。いつかはデュエルディスクが発明されると子供の頃は夢見てたなぁ。
「俺はカードを一枚伏せてターンエンド。・・・・・おい、なにボーっとしてんだよ。次はユーグのターンだぞ」
「ああ、うんそうだね!僕のターン!ドロー!」
ここにきて俺は一つの疑問を抱くことになる。この世界に住んでる人間は皆モンスターを実体化させる力を持っているが、あっちの世界からやってきた俺は本当にこんなことできるのか?まずい、今更不安になってきた・・・・。大丈夫、きっと俺にもできるはずだ。こんなもん気合でなんとかなるだろ!
「気合いだ!気合いだ!気合いだ!気合いだー--!!!!!」
「おいおい、急になに叫んでんだよ!?キアイダーってなに?」
やばい!動揺して母国語がでちゃったよ!
「ああ、これから頑張るぞー!って言うときにこんな掛け声をするんですよ。気合いだーって」
俺はあわててこっちの言葉で説明する。
「そんなの聞いたことないけどなぁ。まぁいいや、続けてくれ」
「僕は《
頼むぞ・・・!俺はなんとなく体中のエネルギーをカードに向けるように集中する。するとカードがモンスターゾーンに置かれて白銀の竜が飛び出してくる。
「やったぜ!モンスターが実体化したー!!俺にもできたぞー!!すごいぞーかっこいいぞー!」
「おいおい、ずいぶん大げさだな。モンスターが出てきただけで驚いたり騒いだり、変な掛け声上げたり、お前そうとう変わってるな」
「あっ・・・、初めてのデュエルだしテンション上がるでしょ?」
「まぁユーグは6歳だしな。子供ならそんくらいテンション上がるか。ちゃかして悪かったな」
一応俺は向こうの世界で生きてた年月も換算するなら、32年生きてることになるんだが、まだ10歳の子供に子供扱いされちまった。でもそんなこと気にならないくらいに舞い上がってるぜ!異世界ライフ最高!!
「・・・・・なぁ、そろそろデュエルを続けてくれないか?これ以上待たせると遅延行為ってことにするよ?」
「すす、すみませんでした!」
やばい、こっちの世界だとデュエルは神聖的なものとされてるから、イカサマはもちろんちょっとした遅延行為ですら御法度だ。例えばリストバンドにカードを仕込むようなことをすれば打ち首確定だ。やっぱり異世界ライフって怖い・・・。
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