第2話 楽しいデュエルだったぜ!
冷静になれ、俺。気持ちを整理するためにも一旦デュエルのおさらいでもしておこう。
このゲームは先に相手のライフポイントを0にした方が勝者になるゲームだ。ライフポイントは互いに4000。これをモンスターの攻撃や魔法や罠で削っていく。攻撃表示モンスター同士が戦った場合、攻撃力の低いモンスターが破壊され攻撃力の差のダメージをプレイヤーは受ける。モンスターがいない場合プレイヤーにダイレクトアタックができて攻撃力分のダメージを受ける。とまぁざっくり言うとこんな感じだ。
さて、デュエルに集中しよう。相手のフィールドには伏せカードが一枚と《
「バトル!《珠玉竜ーブライト》で《曲魔獣ーキマイラ》を攻撃!」
2体のモンスターが激突。ブライトがキマイラを押し倒すが破壊はされない。カイバーのライフポイントが300削られる。
カイバーLP4000→3700
こちらが攻撃を仕掛けても相手の伏せカードは発動しなかった。罠や速攻魔法で攻撃力を増減させて反撃してくることも考えられたが、彼は伏せカードを発動するようなそぶりは見せなかった。となると、あの伏せカードは・・・。
「僕はカードを2枚伏せてターンを終了します」
「じゃあ俺のターンだな」
すると彼の体からオーラが放出された。幻覚でも誇張表現でもなく本当にオーラが出ているのだ。この世界のデュエルは俺が元いた世界のデュエルと大体おなじだが、違う所もいくつかある。その代表例がこれだ。
「いくぞ!ドロー!!!」
この世界だとデュエリストは極限まで集中力を高めると自分が引きたいカードをドローできるらしい(なんだそのインチキドロー)。
「俺は《曲魔獣ーケルベロス》を召喚!ケルベロスの効果発動!自分のフィールドのこのカード以外の《曲魔獣》モンスター1体をリリースしてデッキから《曲魔獣》を特殊召喚する!キマイラをリリースして《曲魔獣ーキマイラア》を特殊召喚!さらにケルベロスの効果をもう一度使いキマイラをリリースして再びキマイラを召喚!そして
これが「技のデッキ」のエースカードか。さすがキングと名乗っているだけあって他の下級モンスターよりもでかい図体をしてこちらの陣営を睥睨している。あのモンスターはレベル7で攻撃力2000。さらにあのモンスターがいる限り俺のレベル4以下のモンスターは攻撃できない。さらにあのモンスターは相手モンスターの効果を受けない。かなり厄介なモンスターだ。だがなぜ奴はキマイラを3体墓地に送った?最初のケルベロスの効果でいきなりキングビーストを特殊召喚してもいいはずだが・・・。
「さらに俺は装備魔法 《アルティメットファング》をキングビーストに装備する。このカードは墓地に同名モンスターが3体いるときそれら一組のモンスターを装備モンスターに装備カード扱いでさらに装備する!そしてこの効果で装備されたモンスター1体につき攻撃力を500上げる!」
なんだこのカード!?俺の知らないカードがいつのまにか「技のデッキ」に入っているだと・・。《アルティメットファング》の効果を使うためにあえてキマイラを3体墓地に送ったのか。これでキングビーストの攻撃力は3500。
「バトル!キングビーストでブライトを攻撃!グレイテストブロー!」
キングビーストが鋭い爪を武器にこちらに向かってくる(せっかく装備したアルティメットファングは使わないようだ)
「
ダメージは受けてしまうが、《珠玉竜ーブライト》はフィールドに残る。今はこれで凌ぐ。
ユーグLP4000→2300
「甘いぞユーグ!!《アルティメットファング》の効果発動!装備されたモンスターを1体墓地に送ることで相手モンスターに続けて攻撃できる!お前がブライトに耐性をつけたおかげで攻撃回数を増やせるぜ!」
なに!?そんな効果があったのか・・・。《孤高の意志》の効果が裏目に出た。キングビーストは攻撃力3000になるが再び攻撃してくる。
「さぁ行くぞ!ダイニダァ!」
ユーグLP2300→LP1100
キングビーストは攻撃力2500でさらに攻撃してくる。
「まだ行くぞ!ダイサンダァ!」
ユーグLP1100→400
最後の装備カードを墓地に送って攻撃力2000で攻撃してくる。
「これで最後だ!ダイヨンダァ!」
ユーグLP400→200
「・・・あれ?まだライフが残るのか・・・。このターンで決着つける計算だったんだけどなぁ。まぁいいだろう、ターンエンドだ」
・・・もしかしたら「ゴレンダァ!」がくるんじゃないかとひやひやしたぜ・・・。なんとかこのターンは生き残った!あとは逆転するだけだ!
しかし、この状況・・・俺もこの引きに賭けるしかないみたいだ。そういやあのインチキドロー、俺も使えるのかな?俺はデッキトップを操作するようなカードゲームを否定するようなこのシステムをあまり使いたくはない。デッキトップ操作とかバカバカしい。でも、一応俺にも使えるかどうか検証する必要がある。だからあんまり期待はしてないけど、一応やってみた。
「うおおおお!!!これが俺のデステニードロー!!!きたぜ!逆転のカード!!」
「お、おう・・・」
相変わらずカイバー君の反応は淡泊なものだったけど、俺がいた世界じゃこんなことできる訳なかったから興奮するぜ!異世界デュエル最高!!
「僕は場に伏せた
「力のデッキ」のエースモンスター《珠玉竜ーパーフェクトダイヤ》降臨!純白の輝きを放ち他のモンスターを寄せ付けない荘厳な姿。攻撃力は2500でキングビーストを上回り、レベル7だからキングビーストの効果で攻撃を封じられることもない。さらにパーフェクトダイヤはモンスターと戦うとき攻撃力を1000上げる効果がある。よって攻撃力は3500になる。これが「力のデッキ」のエース足る所以か。
「バトル!パーフェクトダイヤでキングビーストを攻撃!ダイヤモンド☆ユーグ!」
やばい・・・テンション上がりすぎてクソ恥ずかしい攻撃名叫んじまった・・・。俺の気持ちとは裏腹にパーフェクトダイヤは輝かしいブレスで敵モンスターを粉砕した。
カイバーLP3700→2200
「くっそーキングビーストが・・・。でもこの瞬間
ふぅん、やはりそうきたか。
「カイバー君、君の伏せカードは読めてました。僕の本当の切り札は、これです!速攻魔法 《孤高の称号》発動!このカードは相手のモンスターがバトルフェイズ中に特殊召喚されたときに発動でき、自分のモンスターの攻撃力を倍にする!」
《反逆の牙》はこの世界のデュエルにおける汎用カード。使える除去カードがほとんどないこの世界のデュエルだとモンスターの除去手段が戦闘に集中するためこのカードを発動し奇襲を図るのが定石とされる。だからこそ俺はこのカードに対抗できる《孤高の称号》をデステニードローで引いていた。
「これでパーフェクトダイヤの攻撃力は7000!返り討ちをさらに返り討ちにしてあげます!」
さらに巨大化したパーフェクトダイヤが再びキングビーストを粉砕する。
カイバーLP2200→0 ユーグwin
よし初勝利ゲットだぜ!カイバー君は俺の華々しいデュエル道の一歩を飾る礎になってくれた!これで勝利の美酒でも頂ければ万々歳だが未成年なので今はお預けだ。
おや?カイバー君が俯いている・・・。俺の芸術的なデュエルに感動してるのかな?
「うわあああああ!!!もう少しで俺が勝てたのにいいい!!!」
カイバー君が敗北の悔しさで泣き出してしまった。敗者の悲しみも背負うのが勝者の責任だ。仕方ない、彼はまだ10歳の少年なのだ。たとえ今の体格は彼の方が大きくても精神的には俺の方が年上・・・。
「カイバー君すごかったよー!このターンで決めないと危なかったですよ!
キングビーストは破壊されたターンの終わりに相手モンスターを全滅させる効果があったから僕のパーフェクトダイヤが破壊されて次のターンにケルベロスに攻撃されて負けてましたよ!」
「うぅ・・うぅ・・」
カイバー君はなかなか泣き止まない。生憎子供のあやし方は履修してこなかったんだ・・・。想像より子供の社会で生きていくのは大変そうだ。
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