最終章 ドミネイトリーグ編
第21話 俺たちの戦いはこれからだ!
「俺」との闘いが終わってから1年か・・・・・あれから目まぐるしくいろいろなことがあった。
あの後すぐに俺は生まれた故郷に帰った。しばらく手紙も寄越さず何年も帰ってなかったのに両親もエリアルも快く迎えてくれた。スクールに行ってクロス先生にも会ってきたし故郷にいたクラスの仲間にも久々に顔を見せてみんなとデュエルもやった。プロデュエリストとして
1か月間故郷に滞在した後再びドミネイトに戻り病院で検査を受けた。特に体に異常はなかったが、おっさんの警告も無視できない。酒に入り浸っていた俺の食生活で体に潜在的に悪影響がないか一応見ておく必要がある。おそらく俺が元いた世界よりもこの世界の医学レベルは高くないと思うが、検査の結果は問題ないとのことだった。だが過去に酒で失敗した俺だからこそわかるが、酒による体への負担は侮れない。俺は禁酒する決意を固めた。
俺が犯してしまった罪については自首することも考えたけど、結局黙っていることにした。刑務所を爆破して看守の一人を傷つけたけど、結果的に死者は出ていないし、俺が出頭すれば身内まで非難を浴びることになる。彼らを犠牲にしてまで罪を償おうとは思わない。俺が犯した罪は自分の心の中にしまっておこう。それに今の俺にとって罪を償うために「真のデュエリスト」を目指すことを諦める選択ほど無責任なことはない。
そして俺は今プロデュエリストになるためにドミネイトリーグトーナメントに参戦している。200人いた志願者のなかからプロになれるのはたったひとり。プロデュエリストになるための試験は筆記テストと面接から始まり、選ばれた8人がトーナメントに出場し、優勝したデュエリストがドミネイトシティ公認のプロデュエリストになれるという方式だ。この試験に受かるためにこの1年間は血眼になってデュエルの勉強に勤しんだ。一度は挫けてしまった「努力」の継続を再びやり通した。たくさんの期待を背負って送り出されたからこのチャンスをものにしたかった。
そうしてようやくリーグの決勝までこぎつけた。本当にここまで長かった。俺の努力が実るまであと一息だ。
「数々の激闘を繰り広げたドミネイトリーグトーナメントもいよいよ大詰めです!実況は私ウィンが務めさせてもらいます!よろしくお願いします!」
「ウィンちゃーん!!」「今日もかわいいよー!」「会いたかったぞー!」
栄えある決勝の舞台のはずなのにプレイヤーよりも実況者の方が目立ってるな・・・。
実況者は「風使いのウィン」という別名を持っている女性デュエリスト。デュエルの実力もさることながら黄緑色の目と髪のかわいらしい見た目からこの世界ではアイドル的人気を誇っているデュエリストだ。
「決勝までコマを進めたのは、どんな強敵も力でねじ伏せるパワーデッキのスペシャリスト!ユーグ!」
名前を呼ばれたのでスタジアムに入場する。スタジアムは中央にデュエルスペースがあり周りを観客が囲んでいる形だ。観客は5000人はいるだろう。
スタジアムに入った瞬間俺への歓声が上がる。こんなのチームドランカードで大会に出てた時以来だ。俺は嬉しくなって客席に手を振る。まだカードも持っていない5歳くらいの少年が俺に手を振り返してきた。俺のデュエルでこんなに人を熱狂させられるなんて・・・やっぱりデュエルって素晴らしいな・・・。
そして、俺は客席にいるエリアルを見つめる。俺がプロデュエリストになるための手助けをしてくれた大切な存在。心配そうな顔をしている彼女に「安心しろ、絶対に勝つ」と訴えるように笑顔で応える。
「対するは、ギャンブルカードを使いながらそのプレイングは緻密かつ正確無比!至高のカリスマデュエリスト!ヘヴィメタ!」
その瞬間盛り上がっていた客席が唐突に静寂につつまれる。ヘヴィメタさんが入場しても誰も歓声を上げない。俺にとっては尊敬すべきデュエリストだが世間的にはあの人は未だにデュエルを穢した犯罪者のままだ。
ヘヴィメタさんはチームドランカード時代とは見た目が大きく変わっていた。あの頃は長めだった髪も五分刈りになっていたし、いつも派手なコーディネイトをしていたが今は地味なグレーの囚人服を着ている。そして彼の両隣には制服を来た看守二人が付いていて、ヘヴィメタさんの両腕には犬のリードのように鎖が繋がれその端を二人の看守が握っている。今のヘヴィメタさんには一切の自由も与えられていない。
「よろしくなユーグ。ちゃんと約束は守ってくれよ」
「ええ、俺は全力であなたを倒します」
決勝進出者同士が握手を交わしても客席は静かなままだ。だが今の俺には関係ない。
余計なことは考えずデュエルに集中する。
誰もがヘヴィメタさんは落ちぶれたと言うだろう。今の彼はあの頃に比べて痩せ細っていたし衣装もあの頃より落ち着いたものになっている。
だが俺にはわかる。あの人の目は人生に絶望している目じゃない。このデュエルに希望を見出そうと必死に命を燃やし尽くそうとしている目だ。あの人はあの頃と同じ、いやあの頃以上に強い闘志を感じるぜ。
このデュエルは俺が今まで戦ってきたどのデュエルよりも
「二人のデュエリストの準備が整いました!それではドミネイトリーグトーナメント決勝戦!デュエル開始です!」
「「デュエル!!」」
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