第20話 再契約
「俺が・・・負けた・・・」
「もし《創世開幕》でモンスターを蘇生する効果を選んでおけばお前は勝っていた。ダークソウルノヴァの蘇生効果を使うために墓地のモンスターをフィールドに出すのを
「強力モンスター1体に勝利を委ねたのが敗因ということか・・・・・」
「デュエルはたった一枚のカードで勝敗が決まるものじゃない。デッキに入っているすべてのカードを信じてこそ勝利の道は開かれる。たとえ心を闇に堕としても
「や・・やめろ・・・もう俺は・・・負けたくない・・」
「俺」の様子がおかしい。急に
これは・・・おそらく敗北すると浴びせられる電気ショックがトラウマになっているんだ。デュエルに敗北すると電気ショックをくらっていたから、無意識に敗北に恐怖を感じるようになっているんだろう。
「嫌だ・・・地獄は嫌だ・・・」
「もう終わったんだ。安心しろ、俺は何もしない」
「助けてくれ・・・死にたくない・・・」
茫然自失になっている「俺」に駆け足で近づく。もう言葉が通じないなら・・・
俺は「俺」の元に行き血だらけの肩に添えるように手を置く。身も心も傷だらけになっても目を背けたりはしない。しっかりと「俺」を見据えて諭すように語りかける。
「電気ショックなんて襲ってこない。もうあんな地獄に身を投じなくてもいいんだ。本当は人を傷つけるのも傷つけられるのも嫌なんだろ?もう楽になっていいんだ」
「・・・・・もう楽になっていいのか?・・・・・苦しまなくていいのか?・・・」
「お前は十分苦しんだよ。もうデュエルに縛られなくてもいいんだ。
「俺」は安心したように微笑んでいた。その瞬間「俺」の姿は徐々に光に変化していってやがて俺を包んでいく。そうして「俺」の感情が流れ込んできた。
「俺」が抱いた挫折と苦悩、
この思い出も感情も全て引き受けよう。もうどんなことがあっても忘れない。今まで経験したこと全部
「マスター!目が覚めたんですね♡」
「ん?・・・・・フレシアちゃん・・・?」
俺は仰向けになっていてフレシアちゃんが手を握ってくれていた。
「デュエルが終わったらすぐに倒れちゃったから・・・たくさん傷があったから眠ってる間に治しておきましたよ♡」
そうか・・・ずっと痛みを我慢してたからあの瞬間に気を失っちまったんだな・・・。傷はすっかり治って体は問題なく動く。俺は元気になったことを伝えるためにフレシアちゃんの手を強く握り返す(決して
「ありがとう!2回も俺を助けてくれるなんて君は本当にいい子だよ~」
「マスターが元気になって良かったです!・・・・・でも元の世界に帰っちゃうんですね・・・寂しいです♡」
「ああ、俺の帰りを待ってる人がいるから今すぐ帰らなきゃいけない。俺が目指すのは誰かが思い描いた
「はい♡」
いつのまにかこの空間を占拠していた闇が消えて元の白い空間に戻っていた。心の闇の化身だった「俺」が消えたから闇が祓われたってことか。
「なぁおっさん、一つ聞いていいか?」
「なにかな?」
「もしかして俺がここでやったことは全部あんたの計算だったんじゃないか?俺が雷に打たれて、過去の世界に行って、目を覚ました『俺』とデュエルして魂を開放するのは全部俺の魂を蘇らせるための試練だったんじゃないか?」
「そこまで考えてはおらんよ。儂はただ君の願いを叶えただけだ」
「雷に打たれた後フレシアちゃんが俺の治療してたけど、そんなこと頼んじゃいないぜ」
「君が雷に打たれる直前に急に未練がましい表情をしていたから彼女を呼んだだけだ。君の意見を聞かずに契約を破棄して儂の独断で君の死期を早めたとなれば処罰が下される。別に君のためにやったことではない」
「・・・・・あんたって実はツンデレ?でも一応礼は言っておくよ、ありがとう」
「儂からも一つ聞いていいかな?」
「なんだよ」
「君が理想とする『真のデュエリスト』とは一体なんだ?」
「うーん・・・うまく説明できないけど・・・とにかくデュエルを楽しむことかな」
「そんな抽象的な目標なのか」
「人が生きる目標なんて割と適当でいいんだよ。生きてりゃ目標なんてポンポン出てくるしな。・・・・・そうだな・・・『真のデュエリスト』ってのは伝説になるようなデュエリストだな」
「ほう・・・・・伝説って?」
「ああ!」
俺はおっさんの手を握る。再契約の証。俺のデュエリスト人生の再スタートだぜ!
俺はもう諦めない。何度現実に打ちのめされて挫けそうになっても仲間との絆があれば何度でも生まれ変われる、転生できる。
たった一度しかないこの人生を最後まで楽しみ続けてやるぜ!
それが俺の「真のデュエリスト」への道だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます