第18話 不倶戴天の敵
俺のライフポイントは3500で「俺」よりも少ないが奴の場にモンスターはいない。場の状況は俺が有利だが楽観はできない。「俺」もどうやらこれがミラーマッチだと気づいているだろう。同じデッキを使っていることを前提に戦略を練ってくるはず。
さっきセットモンスターが破壊された時「俺」はわずかに伏せカードを発動する素振りを見せた。奴のデッキが俺と同じだとするとこのタイミングで発動するカードというとあのカードか・・・
「俺のターンドロー!墓地の《
地中からダークナイトが舞い戻ってきた。漆黒の剣を携え嘲笑を浮かべながら俺のモンスターと対峙する。このカードも俺のデッキの主力のカード。
「バトル!ダークナイトでマリンナイトを攻撃!」
ダークナイトの斬撃がマリンナイトを両断。ダークナイトの攻撃力は2000でマリンナイトは1700。その差の300が俺のライフから削られる。
ユーグLP3500→3200
くっ・・・また体を引き裂くような痛み・・・
「この瞬間ダークナイトの効果発動!戦闘で相手モンスターを破壊した時その攻撃力分のダメージを与える!」
ダークナイトは二の太刀で俺を切りつける。マリンナイトの攻撃力分1700のダメージが襲う。
ユーグLP3200→1500
「あああああ!!!」
今まで感じたことのない肉体的苦痛。この痛みが闇に堕ちてしまった「俺」の叫び・・・。こんな痛みに負けるわけにはいかない!「俺」の心を救うにはこの叫びを受け止め続けるしかない。
このターンの「俺」の攻撃を凌いだ。安堵してとりあえず一呼吸を入れる。
ふぅ、熱い・・・。俺は額の汗を手で拭う。その瞬間俺は目を見開く。
俺の手のひらには血がべっとりと付いていた。俺が汗だと思って拭ったのは額から流れた血だった・・・
よく見れば体のあちこちに切り傷ができていた。傷を見てしまうとより痛みを意識して俺はうろたえる。傷口の痛みは熱を帯びていき俺の気力を急速に奪っていく。
心配しているのかフレシアちゃんが俺の元に近づいてくる。
「マスター!大丈夫ですか!?♡」
「・・・・・来るなフレシアちゃん!これは俺たちの戦いだ!たとえ誰であっても邪魔するのは許さない!」
「でもそんなボロボロの体じゃまともに戦えないですよ!♡」
「・・・俺は大丈夫だ。むしろようやく体が温まってきたぜ!ここ最近ロクなデュエリストと戦ってなかったしちょうどいいウォームアップだ」
俺はフレシアちゃんに笑顔で応える。やせ我慢に見えたかもしれないが精一杯の強がりだ。それにお前だって誰かの介入でデュエルに横槍が入るのは気に食わないだろ?もう一人の「俺」よ
「マリンナイトの効果発動!このカードが破壊されたときデッキから《虹彩騎士》を特殊召喚できる!来い!《虹彩騎士ーオーバー・ザ・レインボー》!」
七色の剣を携えたオーバー・ザ・レインボーがダークナイトと呼応するように睨み合う。この戦いに小細工なんて必要ない。俺たちのデッキはパワーデッキ。どちらが相手の喉笛を引き裂くかの力比べ。
不意に「俺」が笑みを浮かべる。無意識に俺も笑っていた。やはりお互い考えることは同じようだ。
俺たちは互いに望んでいる。「自分に勝ちたい」と。
「俺はカードを一枚伏せてターンエンド」
「俺」のフィールドにはダークナイトと二枚の伏せカード・・・。さっきスパークナイトに攻撃した時伏せカードが発動しなかったところを見ると次の俺の攻撃は通りそうだが新たにカードをセットしたため再び警戒せざるおえない。ダークナイトの攻撃力は2000でオーバー・ザ・レインボーの攻撃力は2500。攻撃が通れば倒せるが・・・
「俺のターンドロー!」
よし!このカードならいける!
「バトル!オーバー・ザ・レインボーでダークナイトを攻撃!」
二体のモンスターの剣が組み合う。オーバー・ザ・レインボーが優勢になりダークナイトを切りつけ破壊に成功。それぞれの攻撃力の差の500ダメージが「俺」に与えられる。俺は力を調整して全力で「俺」に衝撃を与える。奴が本気ならこっちも全力で「俺」を倒す。
「俺」LP4000→3500
「ぐっ!・・・」
衝撃に耐えかねて「俺」はその場に膝をつく。
「・・・立てよ!お前の気力はこんなものか?」
「バカに・・するな・・!」
「俺」は体に傷を負いながらも立ち上がる。この「闇のゲーム」は互いに初めてだが地下デュエルで命がけのゲームをやって
「
ダークナイトが地の底から再びフィールドに現れる。やはりその伏せカードは《反逆の牙》か。だがこの展開は読めていた!
「速攻魔法 《孤高の称号》発動!バトルフェイズ中に相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、自分のモンスター1体の攻撃力を倍にする!そしてオーバー・ザ・レインボーは攻撃力がカード効果で変化した時攻撃力を倍にする!よって攻撃力は10000だ!
ダークナイトは《反逆の牙》で攻撃力が4000になっているが、この攻撃が通れば6000のダメージで俺の勝ちだ」
「そいつは俺の読み通りだぜ!速攻魔法 《孤高の烈火》発動!相手モンスターの攻撃力がカード効果で変化した時、変化した数値を自分のモンスターに加えデッキからカードを1枚ドローする!」
「何!?・・・まさか前のターンの攻撃でスパークナイトが破壊された時、わざと逡巡するフリをしていたのか!?」
「ああ、《虹彩騎士》を使ってる時点でパワーデッキなのは予想できたからな。セットカードが《反逆の牙》だと思わせれば必ず攻撃力を上げて対抗してくると思ったぜ!」
「・・・やるな、お前」
これでダークナイトの攻撃力は7500加算されて11500になりオーバー・ザ・レインボーの攻撃力を1500上回った。この攻撃が通れば1500しかない俺のライフは尽きて負け。逆にこっちが追い詰められたか・・。
「罠カード《光の転生》発動!自分のモンスター1体をリリースしてその元々の攻撃力分ライフを回復する。オーバー・ザ・レインボーをリリース」
オーバー・ザ・レインボーの姿が光となって昇天し俺を包む。その攻撃力2500が俺のライフに加算される。
ユーグLP1500→4000
ありがとう、オーバー・ザ・レインボー。ライフが回復したことで俺の傷も癒されていく。
「ふん、犠牲はモンスターだけで自分だけ助かったか」
「オーバー・ザ・レインボーの犠牲は無駄にしないぜ!どんなことがあっても俺はカードとの絆を信じる!」
「そんな綺麗事がいつまで通用するかな?」
「墓地のオーバー・ザ・レインボーの効果を発動!墓地から《虹彩騎士ーマリンナイト》、《孤高の称号》、《光の転生》を除外して墓地から守備表示で特殊召喚する!」
七色の閃光と共に再びオーバー・ザ・レインボーがフィールドに戻る。
「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」
「なら行くぞ俺のターン!」
「俺」を纏っていた邪悪なオーラがさらに増長した。これは・・・
「デステニードロー!!!」
ここで使ってきたか! そうなるとこのターンで勝負を決めてくるか。オーバー・ザ・レインボーの守備力は2000でダークナイトは11500。たとえ戦闘で破壊されてもダークナイトの効果で2000ダメージで済むが・・・。
「俺は《虹彩騎士ークリアナイト》を召喚!その効果でデッキから《虹彩騎士ーバイオレットナイト》を墓地に送る。そしてバイオレットナイトは自分フィールドに《虹彩騎士》がいる時墓地から特殊召喚できる!」
「俺」のフィールドにはモンスターが3体か。確かにこのまま攻撃すれば「俺」の勝ちだが・・・
「そして俺はこの3体のモンスターをリリースして《虹彩騎士ーダークソウルノヴァ》を特殊召喚!」
「・・・ダークソウルノヴァだと!?」
バカな・・・俺のデッキにそんなカード入ってないぞ・・・
まさか・・こいつは「俺」の心が生み出した邪悪なモンスターということか。
地中から巨大な手が出現して「俺」のフィールドの3体のモンスターを握りつぶした。苦しみもがくナイトたちからエネルギーを奪い巨大なモンスターが姿を現す。こいつが《虹彩騎士ーダークソウルノヴァ》か。
全身が邪悪なオーラに覆われ鋭い眼光でこちらを睨む漆黒の怪物。どうやら「俺」の黒いオーラの正体はこいつだったようだ。心の闇の化身のこいつを倒さない限り「俺」を救うことはできない・・・。
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