エピローグ
拝啓 ユーグ様へ
お久しぶりです。
今まで何度も手紙を送ってもらっていたのに返事を書かなくてすみませんでした。
私ヘヴィメタは罪を償うために今日も励んでいます。
ユーグ様の活躍は刑務所の中でも噂になるほどのご健闘です。
かつて共にチームを組んでいた身としても誇らしい限りです。
手紙のこの部分までは割と綺麗な字で書かれていたがここから少し字が粗くなる
やっぱりお前相手に敬語使うとか気持ち悪いからいつもの喋り方にするよ。
あのデュエルからもう5年も経っているなんて信じられないな。
つい最近のことのような気がする。
ユーグ相手に久々に本気でデュエルができて楽しかった!
お前のデュエルはあの頃よりも進化していたが、根本的な所はやっぱり変わっていない。
たとえ相手が誰だろうとカードを信じて最後まで諦めずに戦い抜く。
どんな強敵と対峙していても力でねじ伏せる。
俺のチームメイトであり、仲間であり、
互いに全力を出し切った最高のデュエルだった。
まぁ、負けちまったのは悔しかったけどな。
俺とハーピィの刑期なんだが、どうやらあのデュエルをみていた看守が上の奴に取り合ってくれて短くなったようだ。
予定ではあと1年で釈放されるらしい。
もちろん嬉しいけど、ちょっとだけ寂しい気もする。
ここの生活は無意味な労働を課せられるし、飯はまずいし、看守は口うるさいけど、他の受刑者とデュエルしたりできるから意外と楽しんでいる。
俺はこの刑務所の
常に看守の目が光っているから自由は与えられないけど、俺はここでの生活にそれなりに満足していた。
少し名残惜しいけど未来のことも考えよう。
まず、ここを出たらお前と酒を飲みたい。
チームドランカード時代は一緒に酒を飲むなんてほとんどなかったし、獄中じゃ禁酒してるから久しぶりに上等な酒が飲みたいな。
お前は禁酒してるとか言ってたけど拒否権はない。絶対に付き合ってもらう。
お前とは話したいことが山ほどあるしな。
俺とハーピィの話もしたいし、お前の話も聞かせてほしい。
謝らなきゃいけないこともたくさんあるからな。
それまでガトリングドラゴンは預けておく。無くすなよ。
手紙はこれで終わった。なんていうか・・・・・やっぱりヘヴィメタさんは変わってないな。
相変わらずマイペースで、酒豪で、デュエルが大好きで、俺の憧れの人だった。
言われなくてもガトリングドラゴンのカードは大事に保管してある。大事な試合の前にはこのカードに願掛けして必勝祈願する。俺にとってこのカードはヘヴィメタさんとの絆のカードでもあり、お守りにもなっていた。
今でも俺は頑なに酒は飲んでいないが、ヘヴィメタさんが出所した日だけは解禁してもいいかな~なんて考えている。こんな時くらい付き合ってあげないとずっと世話してくれた恩人に対して失礼だと思ったし。
そうか、もうあれから5年か・・・。
俺はあの時から成長しているだろうか。
自分が理想とする「真のデュエリスト」に近づけているだろうか。
ヘヴィメタさんは今の俺を見て素直に喜んでくれるだろうか。
「パパ!そろそろ時間じゃない?」
俺は時計を見た。やばい!手紙を読むのに夢中ですっかり時間を忘れていた!
「今準備してる!」
急いで勝負服の黒のスーツに着替える。プロデュエリストになって5年。大事な勝負の時はいつもこのスーツを着ている。あちこち痛んできてるが構わずに袖を通す。
玄関まで走って向かうと妻のエリアルと息子のプラトが来てくれた。
「じゃあ行ってくるよ。今日のデュエルも絶対勝つからな!」
「パパ頑張ってね!」
「プラトも俺を見習って将来は立派なデュエリストになってくれよ!」
「うん♪」
俺はプラトとエリアルを抱きしめる。これも大事なデュエルの前には絶対やる。
「いってらっしゃい」
「いってきます!」
俺は家を飛び出してスタジアムに向かう。いざ戦場へ!
親バカと言われるかもしれないけど、プラトはデュエルの天才だ。なんせまだ3歳なのにデュエルができているからな。将来はパパみたいなデュエリストになりたいとしきりに言ってくれる。本当にかわいい息子だ。
エリアルは良き妻だ。俺が試合で負けた時はいつだって俺の好きな料理でもてなして励ましてくれる。プロデュエリストとして忙しくて家にいる時間があまり取れない俺の代わりに家事や息子の面倒をみてくれる。エリアルと結婚出来てよかった。
俺にはもったいないくらい幸せな家庭。前世ではこんな幸せは願っても手に入らなかった。
これからもずっと一緒にいたい。俺の支えになってくれる大切な人たちと。
自分が「真のデュエリスト」になっているかどうかなんてわからない。
でも確かに言えることは今の生活を楽しんでいることだ。
プロデュエリストになってたくさんのデュエルをして自分の戦術の幅を広げるができたし、デュエルを通してたくさんの仲間ができた。
日々
デュエルを嫌いになったこともあったが、今なら自信を持って言える。俺が本当にやりたかったのは、これだ。
ヘヴィメタさんとハーピィさんが出所するまであと1年。俺もあの人と話したいことがたくさんある。あの人と出会わなければこんな幸せを手に入れることもできなかった。俺にとってはこれ以上ない位の恩人。
再会できるその時まで俺は諦めない。
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