第4話 友達甲斐
家に帰ると麻美の言っていた事件のことを調べてみた。
発見された麻美の友達の遺体からは薬物反応が出たとか。
サークルの子からも情報提供が来ていた。
麻美の友達が入れ揚げていたホストクラブ。
ヤバイ噂があるみたい。
どうもホストが違法なクスリを売りさばいてる、警察に目を付けられないのは所轄の刑事に賄賂を渡してるとか。
証拠はない、あくまで噂だけど……
でもクスリっていうのは麻美の友達とも繋がる。
あとは他にもあそこのホストと関わって消えちゃった子たち……
どう関係してくるんだろう?
麻美ったら大丈夫かな?
この前も一人でホストにボコられそうになってたし、危ないんじゃないかな?
麻美には一人で動かないようにLINEを送って、改めて明日会うことにした。
次の日、学校が終わってから私と朋花、日向は渋谷で麻美と待ち合わせした。
ハチ公前で合流すると向かいにあるマックへ。
店内には放課後ということもあって、私たちと同年代のお客がけっこういる。
「どうだった?なにかわかった?」
席に着くや否や麻美が聞いてきた。
「それがさあ……」
私たち三人は顔を見合わせる。
「ウチらの友達でも、あそこに通ってていなくなったっていう子がいるって言ってるんだよね」
「じゃあ…!」
「でも、これって証拠がないのよ」
「そんな……」
朋花の話に食いついた麻美は落胆した。
「噂だけど、けっこう危ない店ってのは評判みたいなんだよね。だから、こっから先は一人で関わらない方がいいと思うの」
「でも……」
日向が言っても麻美は納得がいかない。
「一つ聞いても良い?」
私は麻美の顔を見ながら聞いた。
「なに?」
「その亡くなった友達とあんたはどんな関係?」
「どんなって……友達だよ。親友」
「そっか……あんたがそこまで一生懸命になるってことは、よっぽど大事な友達だったんだね」
私が言うと、麻美は懐かしむような笑顔で話し始めた。
「私、高校に入ってすぐにいじめられたの」
私たち三人は麻美の話すことに黙って耳を傾ける。
「みんなにシカトされて、嫌がらせされて……そんな中、美波だけが私と仲良くしてくれた」
美波というのが亡くなったこの名前だと麻美は言った。
「美波はけっこう遊んでて、先生や周りからは不良って言われてた。でも私には優しくて……美波といるようになってからは、いじめも止んで……私たち、けっこう仲良かったんだよね」
亡くなった友達を思いながら語る麻美の心情を思った。
いじめこそ受けないが、美波もまたクラスでは孤立していたと麻美は言う。
だから自分に声をかけてくれたんだろうと。
「美波は親友でもあるけど、私の恩人なんだ……だからあの子がどうしてああなったのか、亡くなったあの子のためにもハッキリしたことが知りたくて」
「そっか……わかった」
麻美の思いの強さを理解した私はうなずいた。
「でもね、私たちを頼ってきたんだ。あんたも、麻美も友達だよ」
「そうだよ。私も」
「私もね」
私に続いて朋花と日向も言う。
「あんたたち……」
「だから友達甲斐として言わせて。ここは私たちに任せて」
私が言うと朋花も諭すように話す。
「そうだよ。麻美は向こうの奴にも顔を覚えられてる」
「ウチらは人数いるし、いろいろあたれるから」
日向も人懐っこい笑顔で言った。
「だからさあ、ここは私たちに任せてあんたは目立たないようにしてた方がいいよ」
「うん……」
私が見た感じだと麻美は納得がいっていない様子だった。
ちょっと不安だったけど、その日はそれで解散した。
「大丈夫かな?」
「ちょっと心配…」
帰りの電車の中で朋花と日向が懸念を口にする。
「うん……とりあえず今は私たちが麻美の代わりに調べるしかないよ」
「そうだね」
「他にできることないしね」
私と朋花、日向の三人は一抹の不安を抱きながら家に帰った。
それから二日くらいサークルの子にも協力してもらって調べたけど目ぼしい話は聞かなかった。
いっそのこと店に客として行ってみようかな……
でも、この前あそこのホストを痛い目に合わせたから顔が知られてるだろうしなあ……
うーん!なんかいい方法ないものか?
自分の部屋であれこれ悩んでいるときに着信が来た。
麻美だ。
「はいはーい!どうしたあ?」
『この前はありがとう。いろいろ言ってくれて』
「いいよ。気にしないで」
『それよりさあ、ちょっと進展があったんだ』
「進展…?」
どことなく麻美の声は弾んでる。
『所轄の刑事さんが話しを聞いてくれるって連絡があったの!』
「えっ!そうなの!?」
警察が話聞いてくれるなら安心だ。
『だから、これから警察署に行って話してくる』
「良かったじゃん!でも警察のヤツ、急に話聞く気になってどうしたんだろうね」
『私、なんかヤバイとこ見ちゃったんだよね』
「ヤバイとこ?」
『昨日、お店を見張ってたらさあ』
「あんたダメだよ!私たちに任せなっていったじゃん!」
『聞いて!まだ営業中なのに店から女の子が何人も出てきて車に乗せられたの』
「それお客さんじゃないの…?」
『違う!開店から見てたけど、私が見た客は三人くらいしかいなかったし、車に乗った中にはいなかった!あの子たちはどこか他の場所にいたんだよ!』
本格的にヤバイな……
そういえば噂では警察にも仲間みたいのがいるっていうのを思い出した。
「ねえ。いつ警察に話しに行くの?私も一緒に行くよ」
『……』
「麻美!」
『ごめん。言いたくないんだ』
「なんでよ!?」
『私にも友達甲斐で言わせてよ。これ以上巻き込みたくないの。ヤバイ話しってなったらなおさらだよ』
「バカ!あんたになにかあったら私たちはどうすんのよ!?」
『だって、警察が捜査を始めたら話した奴は絶対狙われるって。そこにみんなを巻き込めないって。それに……』
「なに?」
『私は美波の仇をとってやらなきゃ』
「麻美…でも警察にも仲間みたいのがいるって噂なんだよ?」
『大丈夫だって!噂でしょ?警察だよ?安心して』
「麻美……」
『ありがとう。私が話せば、あとは警察がやってくれるよ!全部終わったらみんなで遊ぼう!』
「わかった。気をつけてね」
『ありがとう!』
ガチャッ…
電話が切れた。
なんだろう?嫌な予感がする。
烈に相談してみようかな……
ダメダメ。
あいつは金払わなきゃ動いてくれないから。
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