第7話 殺しの後で
次の日の学校で私たちの話題は今朝のニュースだった。
「唯愛、見た?このニュース!」
「これって麻美がやられた店だよね!?」
「そうそう!私も今朝見てビックリしたよ!」
朋花と日向に言われるまでもなく、今朝のニュースは私もチェックしてた。
驚いては見せてるけど、私がモロに当事者だし。
「こいつら相当荒稼ぎしてたんだね~刑事も抱き込んでさあ」
「しかも人身売買とかイカレすぎでしょ」
朋花と日向が言うように、あそこのホストクラブがやっていた悪事は全て明るみに出た。
刑事と組んでいたことも。
「売られた女の子も帰れるといいよね」
朋花が私に振る。
「大丈夫でしょ!記事にも書いてあるし」
答えながらいろんなサイトの記事に目を通した。
ホストたちと刑事が誰に殺されたかは一切不明になっている。
中には金庫から金がなくなってることから、仲間割れかと推察する記事も。
「それにしても誰がやったんだろうね?」
「あれじゃない?暴力団みたいな抗争ってやつ?唯愛はどう思う?」
「さあ……でも悪人が死んで、監禁されたり売り飛ばされてた女の子が助かるんだから良いことでしょ」
聞いてきた日向に返す。
「だね」
朋花もうなずいた。
私は烈の方をチラッと見る。
烈は静かで……
時折話しかけるクラスメイトに笑顔で返していた。
裏の顔を知っている私は、まだそのギャップに慣れない。
「どうしたの?唯愛。ぼーっとして」
「ううん、なんでもない」
そうだ……
「ねえ?今日とか、学校終わったら麻美のお見舞い行かない?」
「いいね!行こ行こ!」
「OK~!」
二人とも即答だった。
私は烈の机に歩み寄った。
「烈」
「やあ、唯愛さん。おはようございます」
「おはよう。そのさあ……今日の放課後なんだけど…友達のお見舞いに行くんだ。麻美って子……良かったら烈も一緒に行かない?」
麻美のお見舞いに烈を呼ぶのは不自然かと思った。
でも、一応声だけはかけておきたかった。
烈は困ったような笑を見せると、申し訳なさそうに言った。
「唯愛さんの友達といっても、僕は初対面ですし。相手に余計な気を遣わせるのはどうも……」
「そう…だよね!ごめん!私ってバカだわ」
これは烈の言うことがもっともだと思った。
「お大事に。と、お伝えください」
「うん!わかった!伝えとくよ!」
答えてからあることを思い出した。
「そうだ。今度、家に来なよ」
「家?」
「うん。久しぶりに帰ってきたんだし、圭吾さんとかにも話したら会いたがってたよ」
「ああ……圭吾さんか」
烈は眼鏡の奥にある目を懐かしむように細めた。
「今度、時間があるときに。皆さんにはよろしくとお伝えください」
「うん!伝えとく」
すると日向と朋花が来た。
「新年会に呼んじゃえば?」
「そうだよ!今年、唯愛の家でやったやつ。来年もやろうって言ってたじゃん?」
「そうだね!そうしよう!決まりね!」
「えっ?」
一瞬戸惑う烈。
「私の家でさあ、新年会やったのよ。庭でみんなでお餅ついたりね」
「はあ……」
「私、お餅なんてついたの幼稚園以来だったよ」
朋花が興奮気味に言う。
「私は施設で毎年やってるから得意なんだよね~」
「そうそう!日向って上手いよね!」
盛り上がる私たちをよそに、烈はそそくさと席を立った。
「ってわけだから!予定入れといてね」
間髪入れずに烈の背中に声をかける。
「だから時間が合えば」
「ありがとう!楽しみにしてる!」
「……」
烈は頭を軽く振ると、教室から出て行った。
我ながら強引だったかな……?
でもいっか。
なんか周りに距離置いてるからね。
これくらい強引にいかないと♪
「よし!中村君来るなら新年会は気合入れてこっと!」
「朋花がんばれ!」
こっちのほうは……
まあ、いっか……
放課後になり、面会した麻美は思っていたよりも元気そうだった。
傷は本当の意味で癒えるのにはもっと時間がかかるだろう。
もしかしたらずっと癒えないのかもしれない。
そんなときに……
どうしても癒えない、辛いというときに、私たちがいて少しでも紛れるなら……
私は嬉しい。
私たちに白い歯を見せる麻美を見ながらそう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます