病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。

べちてん

プロローグ

私は生まれたころから体が弱く、物心ついたときにはすでに病院にて入院生活を送っていた。


一応勉強をしてはいたのだが、ろくに学校に通ったこともない。


外に出たことも片手で数えれる回数しかない。


まあ、当然そのような生活を送っていたのだから、友達ができるわけもなく。


友達どころか、話し相手もお医者さんや看護師、家族くらいしかいないのだ。


朝起きて、薄味の病院食を食べて、テレビや本を読んで暇をつぶし、大して疲れているわけでもないのに眠りにつく。


そんな生活を16年間続けてきたわけで、今更何か新しいことを始めたいとは思っていなかったわけだ。


しかしそれは表面上の話で、心の底にその気持ちがあったことは正直気がついていた。


思っていたのか、思っていないのかよくわからないけど、何もすることがないというのは寂しい。


「ああ、暇だ。」


テレビをつけてもどこも同じようなニュースばっかりだし、観光系のテレビを見たとしても、私はそこに足を延ばすことすら不可能だ。


テレビに映る風景が、私に対する嫌みのように感じてならなかった。


そんなある日、いつものようにぼんやりとテレビを見ていた私の目に飛び込んできたのは、ある1つのコマーシャルだった。


『フルダイブ型VRMMORPG、サンライズファンタジー発売決定。』


「フルダイブ型VRMMO……」


感覚や意識をすべて、ゲームの中に持っていく仮想現実。


その技術が一般に発表されたのは、つい最近のことであった。


暇さえあれば本を読んでいたので、私はざっくりとだがVRMMOがどのようなものなのか把握していた。


現実では動かせないが、仮想現実なら体を自由に動かせることができる。


できなかった友達だってできるかもしれない。


不安だったけど、やらない理由はないわけで、私は生まれて初めて、自分から母親にお願いをした。





母にこのことを伝えると、すぐに機械を買ってくれた。


VRMMO用の機械は、寝返りを打たせないといけないとか、そういう関係で、高くて非常に大きい。


そう簡単に買えるような代物でもないのだが、どうやら私の為に貯金をしてくれていたらしく、それを少し使って買ってくれたみたいだ。


なんせ、私からの初めてのお願いだ。


叶えてやりたかったのかもしれないな。





ゲームの発売日は今日から1週間後で、機械が届くのが4日後。


ゲームソフトはインターネットでダウンロード版を予約している。


発売日当日にプレイしてやるのだ。





それから1週間が経過した。


機械も届き、すでに病室の隅に設置してある。


知ってはいたけど、実物を見ると相当大きくてびっくりする。


ゲームのダウンロードも完了した。


「ついに……。」


私は機械の中に体をすっぽりと収め、静かに、そして心を躍らせながら呟いた。


「ゲームスタート。」


私がそう言葉を発すると、意識が吸い込まれていくのを感じる。


そこの存在しない穴に落ちていくような感じだ。


あたりも真っ暗だし、何もないただ広い空間に落ちていく。


しかし、なぜか怖くなかった。


無性に湧き出る感じたことのない感情。


これが“楽しい”という感情なのかもしれない。


自由に動ける素晴らしい世界。





意識が戻り、気が付いたときには真っ白な部屋の中にいた。


顔を上げると、そこに立っていたのは1人の女性。


「サンライズファンタジーへようこそ!あなたのお名前は何ですか?」


「しゃ、しゃべった……。」


そりゃしゃべるよね。


多分これはNPCなんだろう。


名前ねぇ……、多分私病室から出ることはないから、別に本名でいいかな。


「私はユウヒ。」


「ユウヒさん!素敵なお名前ですね!次は、見た目を設定してください。」


NPCだからか知らないけど、感情の起伏がすごいな。


素敵なお名前!って盛り上がった感じで言った後に静かに次のアナウンスだ。


まあいい。


「見た目の設定は、ここをいじるのかな?」


今、私の目の前には、空中に浮く謎のパネルがある。


結構いじる項目があって、髪色とか、目の色とか身長とか体重とかその他もろもろ。


私は小っちゃい子が大好きなので、小さくてかわいい守ってあげたくなるような見た目にすることにした。


「えっと、ここをこう?ああ!これじゃあ変な感じ!!」


なかなか難しい。


一気にいじりすぎて、めちゃくちゃ目がでかくなったりとかして結構大変だ。


ぽちぽちと、集中して設定画面をいじっていく。





「よし!やっとできた!」


10分くらい必死にいじって、ようやく自身のアバターを作成することができた。


長めの金髪で、くりくりパッチリなお目目に小さな身長。


よし、可愛い。


この中に入れるっていうだけでもうこのゲーム買った価値あるよね。





「では、次は職業の選択をしてください。」


NPCがそういうと、職業選択のパネルが出てきた。


ちなみに、職業の数は相当多くて、こんなの誰がやるんだっていうのもあったりした。


まあ自由な世界がこのゲームの売りなわけだ。


生産系とか、戦闘系とか、様々な職業の中から私が選んだ職業は『双剣使い』だ。


風を切るようにしゅたたっ!と動いて敵を蹴散らす。


「うへへ!かっこいい!!」


双剣使いはなんか下の方にちょこんとあった。


多分あまり人気がないんだと思う。


ちなみに、戦闘系の中の剣を扱う職業だけでも結構たくさんあって、『片手剣使い』とか、『大剣使い』とか。


あと、『侍』ってのもある。


短剣を二本構えて戦うのかっこいいよね。


やっぱり双剣が一番かっこいいと思う!


「『双剣使い』ですね。では、最後にご自身の初期ステータスの調整をお願いします。」


初期ステータスっていっても、私あんまりわからないから適当に割り振っておいた。


でも、魔法を使うために必要なMPとかはあまり使わなそうだから、そういうのには少なめにしておいた。


「では、これにて初期設定を終了します。チュートリアルを実行しますか?」


「大丈夫です!」


ああ、早く遊びたい!!


チュートリアルとかやってる時間はないぞ!


「わかりました。では、サンライズファンタジーをお楽しみください!」


そうNPCが言うと、私の意識は再び吸い込まれていった。





気が付いたとき、私はのどかな村に立っていた。


一面本屋アニメで見たような世界、ファンタジーな世界だ!





~あとがき~

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