第10話 オーク

ユウヒは時々出てくるモンスターをサクッと討伐しながら上へ上へと登っていく。


「うわ~、こりゃすごい景色だ!」


相当高いところまで登ってきたので周りを見回してみた。


そこには先ほどまでいたヒメナ村が米粒のように小さく映っている。


のどかな田舎に広い草原、そびえる山々。


空気はきれいに澄んでいて、遠くまでしっかり見渡せる。


「こりゃ夕方に来たらもっときれいだろうな......。」


今の時刻は午後1時。


真っ昼間である。


眩しいし暑いしで結構最悪な状態だ。


少しがっくりとなったが気を取り直して再び山登りを再開する。



しばらく歩いてまた初めて見るモンスターに遭遇した。


「うぉっ!オークだ!!」


このゲームにおけるオークの見た目はでけえ二足歩行の豚という感じであった。


豚というだけあって動きもたらたらとしている。


「ふん、これは余裕かもしれないな。」


しかしいざ戦ってみるとただたらたらした弱いだけのモンスターではなかった。


攻撃の重さが違う。


大きな腕からくる攻撃は一発一発が重い。


うまくよけているため攻撃は当たってはいない。


しかし、攻撃を受けた地面やがけはえぐれている。


「うぇえ、これはやばい。一発でもモロに当たったら大変だ。」


武器は新しくした。


しかし装備に関しては初期装備のままだ。


幸いなことに動きは遅い。


しっかりと見ていれば楽に避けることはできた。


スキルを使ってササッと近づいて目に剣を刺す。


オークを強く蹴って空中に飛び上がり、空中ジャンプを使って再びオークに向かって跳ぶ。


オークはとっさに腕を前に出して私を弾いた。


そのときに両方の手にある双剣でパパパッと腕を斬りつける。


オークは雄叫びを上げながらふらつく。


「いまだ!」


首ががらがらになったので一気にスキルをかけ合わせて詰め、首を斬る。


うまく攻撃を与えることはできたが首が太いため切り落とすことができない。


「あとちょっとでやれそうなのに!」


アイテムボックスからメアリーからもらった鉄製の双剣を取り出した。


片目は先程潰していたが、もう一方の目はまだ潰せていない。


まだ潰せていない方の目に向かって投げナイフを使って投げる。


1回目は防がれてしまっていたが、2回めに投げた方のナイフはうまく目に刺さってくれた。


オークの両目は潰れている。


もう目が見えないオークはよろめき、地面に倒れた。


急いで駆け寄ってオークの首を切り落とす。


「ふぅ......。やっと勝てた!!」


スキルを上手く駆使しながら自分より身長のある敵を倒していく。


極めて面白い。


「スキル『空中ジャンプ』のレベルが1上がりました。」


「おほー!3レベになった!!やったぜ!」


ユウヒはふと崖の方を見る。


「この崖このスキルで登れないか?」


相当高い崖なのだが、跳躍と空中ジャンプを組み合わせれば飛べそうだ。


ものは試しということで実際にやってみた。


「しゃあいくぞ!!」


地面を強く蹴って高く飛ぶ。


空中でジャンプを1回、2回、3回とする。


...届かない。


3分の2くらいは到達したのだが届かなかった。


その時ちょっとしたひらめきが頭に浮かんだ。


(これ崖を一回蹴ったらスキルもう1回使えるのでは?)


やってみた。


「できた!できた!できた!!これやばいぞ!!うひょーー!!山越えなんてラクラクじゃないか!!!」


ユウヒはぴょんぴょんと喜びを体で表現するかのように飛び回る。


「これまじでやばいぞ!!いくらでも上に登れちゃうじゃん!!!え!?いいんですか!?こんなスキルを手にして!!!」



このスキルとユウヒの他のスキルの相性が本当に良すぎる。


どれか一つかけてもここまでうまくは使えないだろう。


「私ってばラッキー人間だな。今までの人生が不幸すぎたからここで一気に還元されてるとかそんな感じか?」


ニヤニヤニヤ。


きっと今のユウヒを知らない人が見たら通報者だろう。


すぐ横には崖がある。


その崖の近くでニヤニヤしながら跳び回ったり、大きな声で独り言を言ったり......。


「えぇい!そんなことはどうでもいい!!さあ進むぞ!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る