第11話‌ ‌洞窟にて

途中、モンスターに遭遇したりもしたが、ユウヒは順調に進んでいる。


ヒメナ村を出てから10時間ほどが経過しており、あたりは暗くなりかけていた。


「う~む、野宿か?これ。」


私野宿用のアイテムなんて持ってないぞ、と思ったのだが、


「いや、これゲームだからログアウトすりゃいいんだわ。」


あまりにもリアルな風景過ぎてゲームであることを忘れていた。


「さすがにここでログアウトするのはまずいか。入ってきて急に襲われたりしたら困るし。」


そういってあたりを見渡すと、近くにちょうどいい感じの洞窟を発見した。


早速その洞窟に入ってログアウトする。



次の日の早朝、薄味の病院食を食べてからすぐログインする。


ログインすると洞窟には光がさしておらず、真っ暗な暗闇であった。


ユウヒがあたりを見渡すが暗くて何もわからない。


ユウヒはとりあえずここに待機をすることにした。



しばらくたち、暗闇に目が慣れてきたのでもう一度あたりを見渡す。


すると、入り口は岩でふさがれているということが分かった。


どうやら洞窟の入り口が崩落してしまい、洞窟から出れなくなってしまったようだ。


「ええ、ワープを使おうにもヒメナ村に戻って一からやり直しはきついよな......。」


崩落してきた岩は大小さまざまで、小さいものならどかせるかもしれないが大きいものはどかせそうにない。


「よし、こうなったら洞窟を奥に進むしかない。」


ゆっくりゆっくり奥に向かって歩みを進める。


自分がログアウトした後雨でも降ったのだろうか。


洞窟の中にはいたるところに水たまりができ、天井や壁からは水が滴っている。


洞窟内は湿度が高く気持ちが悪い。



数分ほど歩いたところで


「うぇあぁ!!ちょ、ちょっと!びっくりした!!」


急に前のほうからコウモリ型のモンスターがたくさん飛んできた。


「ちょっと急に出てこないでってば!!」


コウモリ型のモンスターは話も聞かずにユウヒに攻撃を仕掛けてくる。


数十匹はいるだろうか。


そのコウモリたちに一斉に襲われる。


しかし、ユウヒの武器は双剣である。


短いストロークによって生み出される素早い剣さばき。


剣は2つあるため一度に複数のモンスターと戦うことができる。


ユウヒはところどころにけがを負いながらもすごいスピードでコウモリを倒していき、あっという間に半分ほどに減っていた。


けがは急所だけは外れるようにギリギリで交わしていたので何とか大丈夫だ。


するとコウモリたちは攻撃を辞め、一斉に天井ぶら下がり、


「「「「「キーーーーーーーーーー」」」」」

「ぎゃーーーー!!うるさいうるさい!!!」


甲高い音を出し始めた。


洞窟内はコウモリの声とユウヒのさけび声が混じりカオスな音を響かせていた。


ユウヒは耳をふさいで音を遮断しようとしたが、すべての音が遮断できるわけではない。


甲高い音が頭に響き渡り、具合が悪くなってきてしまった。


「うっ......、頭が......。」


強烈な頭痛と吐き気によってその場にうずくまるユウヒ。


その姿を見てコウモリたちは一斉に攻撃を仕掛けてくる。


(あ、これはまずい。)


避けないといけない。


ユウヒ自体もそれはちゃんとわかっている。


しかし体調が悪いせいで体が動かないのだ。


ログアウトしようにも戦闘中にログアウトをすることはできない。


(私の初めての死は洞窟の中か......。)


ゲーム内での初めての死を悟ったその時、


「おらああああああああああああああああああ!!!!!!」


プレイヤーが洞窟の奥のほうから猛スピードで突進してきて、目の前のコウモリを一斉に薙ぎ払ったのだ。


「大丈夫?ユウヒ。」


「メ、メアリー!!!」


メアリーだった。


メアリーはちらっとこっちを見て、


「ほい、これポーション。飲んで。」


回復ポーションをくれた。


すぐに私はそれを飲んだ。


身体の傷はみるみる癒えていき、体調も回復していった。


「どうしてここに?」


「それは後、まずは目の前のコウモリを倒すよ。」


そういって大剣を構えるメアリー。


(あれ、メアリーって生産職なんじゃ?)


そう思ったが気にせず私も武器を構えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る