第3話 森へ
「ふんふんふ~ん♪」
鼻歌を歌いながら森に向かってユウヒは草原を歩いている。
「それにしても、ほんとにきもちーな。」
リアルでは常に病院にいるユウヒはこのきれいな景色、おいしい空気など未体験であった。
「常にこんなところにいたら私の病気も治りそうなのに。そういうわけにもいかないのが残念だ。」
大きく腕を振って景色を楽しみながら歩く。
ちらほら会うほかのプレイヤーたちと少し話をしたり、軽く会釈をしたりしながらのんびり歩く。
ほげーーーーーーーーーーーー。
「って!いつの間に!」
ぼーっと歩いていたらいつの間にかホワイトウルフの群れに囲まれてしまっていた。
「ど、どうしよう!さすがにいきなりこの数は厳しい!!」
ホワイトウルフの数は8、レベルはすべて1。
あせるユウヒ。
引くか?やるか?
でも囲まれているので引こうにも引けない。
絶体絶命のピンチである。
「どうする?どうする?ほかのプレイヤーさんに助けを求めるか?」
周りを見渡す。
近くにプレイヤーの存在は確認できなかった。
「よし、こうなったらもうやるしかない!」
ふんす、と鼻を鳴らして気合いを入れる。
それが合図になったかのように8匹のモンスターたちは一斉に飛び跳ね、襲い掛かってくる。
「いまだ!!スキル、加速!!」
ユウヒは加速のスキルを発動しながら身をかがめ、飛び跳ねたホワイトウルフの下を潜り抜け、一目散に走った。
身長が低いこともあって割と楽に抜け出すことができた。
「ふっ、馬鹿め!よし!逃げるんだYO!!」
先ほど行ったランニングの知識も生かしながら走る。
すると急に、
「レベルが3上昇しました。スキル、『加速』は『超加速』へと進化しました。称号、『卑怯者』を獲得しました。」
「だれが卑怯者じゃい!!って、ええ!?」
驚いて後ろを振り返る。
勢いよく仲間に衝突したのか、そこには倒れているホワイトウルフ8体の姿があった。
「えぇ......、どうして?このゲームのモンスター弱くない??なんか純粋に弱いっていうか頭が弱いっていうか......。まあ、ふん......、とりあえず勝てたからいっか!どれ、ドロップアイテムは何かな??」
ドロップアイテム:『ホワイトウルフの毛皮』×7、『ホワイトウルフの肉』×8、『ホワイトウルフの骨』×2、『5200G』
「おお、さすがスキル効率化、お金の量が半端じゃない。」
ユウヒはらっきーらっきーとつぶやきながらその場を後にする。
森へ向かう途中何回かモンスターと遭遇したが、ささっと倒して森へ到着した。
「おぉ~、これは、禍々しいというかなんというか。空気が一気に変わったな。」
森は鳥の鳴き声もしなくやけに静かで、非常に不気味な雰囲気を醸し出していた。
「よしっ、いくぞ!」
(よし、いくぞ!吉幾三。ぷぷぷっ。)
............。
ユウヒは不気味な雰囲気であることを忘れたかのように愉快に前へ進む。
進む。
進む。
進む。
「ん?なんかさっきから結構歩いたんだけどまじでモンスターと会わないっていうか普通の動物とも会わないぞ。」
そういいながらあたりを見回す。
周りにはたくさんの木々があった。
動物の気配などしない。
すると、木々の隙間に赤く発光する点が2つ見えた。
「ん?なんだあれ?距離は結構離れてるかな?ってなんか近づいてきてる!?」
どすん!どすん!どすん!という大きな音を立てながら二つの赤い光は近づいてきている。
「え?どうする?あれモンスター?やるか?」
しばらくして、ユウヒはモンスターと接敵した。
「な、なんだこいつ......、」
そこにいたのは体長が10mを超えるような超巨大なクマのモンスターだった。
一部は腐ったように変色しており、目は赤く光っている。
「どう見たって普通じゃない。どうする?どうする?と、とりあえず、相手の名前とかレベルとか確認しないと。」
ジャイアントベアー(突然変異)
「突然変異?なんか強くなるっていうことか?って!?レベル23!?無理でしょ!!私今レベル9だぞ!!」
森へ来る途中に会うモンスターを倒していたらレベルは9まで上がった。
しかし、上がったとは言えども目の前の巨大熊とのレベル差は14。
「勝てるわけがない。でも、たぶんこれ走っても逃げれない。」
先ほどスキル超加速を入手した。
草原を歩いているときに少し使ってみたのだが、早すぎていまの状態では到底扱いきれない。
木にぶつかって倒れてしまうのが落ちだ。
「やるしかない......。」
ユウヒは頬をパチンッ!と叩いて、目の前の大きな熊と向き合った。
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