第5話 メアリー武具店
「さっきも思ったけどさすがにもうこの武器じゃやっていけないよね。新しい武器を買わないと。」
いまユウヒが使っている武器は初めにもらった木製の武器だ。
まだ一層とはいえもうすでに壊れそうだし、2層に行くときのボス討伐にはこの武器では心もとない。
新しく軽くて強い武器が欲しい。
「よし、どっか武器屋にでも行って新しい武器を買おう!」
村の中心部のすぐ近く、大通りに面したところに小さな武器屋があった。
この店はとにかく入りにくい見た目をしていた。
古びた小さな小屋風の建物にはツタ状の植物が絡みついていて、魔女が住んでいそうだった。
店の名前は『メアリー武具店』で、ちょっとかわいい名前だ。
村を歩いていたプレイヤーさんに聞いたら入りにくいけどすごくいいお店だということだと言っていた。
よし!入るぞ!!
「し、失礼しま~す......。」
小さな声でつぶやきながらゆっくりと扉を開ける。
「お~、いらっしゃい。今日はどんなご用事で?」
元気な可愛い声が聞こえてきたと思ったら、そこには水色のボブヘアの女の子が居た。
「えぇっと、武器が欲しいんですけど......。」
「おっけ~。武器は何使ってるの?」
「私は双剣使いなんですけど......。」
若い。
なんかこの店の見た目からしてもっとごつごつした人が出てくるかと思っていたんだけど。
ていうかかわいい!
なんというか抱きしめたくなる可愛さだ!
「むふ、んふふふふ......。」
「な、なに......?」
お店の少女は少し後ずさりをした。
「かわ...いや、私もっと強面の人が出てくると思っていたので、ちょっと意外で......。」
「あー、よく言われるよー。私、メアリー。鍛冶師をやってるの。この店の名前は普通に私のプレイヤーネームからとった。」
「私はユウヒです。鍛冶師だったんですね!てっきりお店の看板娘的な感じかと思っていました。」
「まあこんな見た目だからね~。かわいいでしょ?」
「はい。かわいいです。」
「結構こだわったからね~。ユウヒもかわいいキャラだね。」
「はい。ありがとうございます。」
「えっと、で、この店の見た目だけど、私なんというかこういう古臭い感じの雰囲気が好きなの。なんかおしゃれじゃない?」
「お、おしゃれ...ですか。」
「そう!おしゃれなの!見てこのツタの感じ!腐った木の雰囲気!このいかにも森の奥地にありそうな雰囲気!ん~たまらんっ!!」
「は、はぁ......。」
なんだこの子......。
ちょっと特殊?
「あー!ごめんごめん。で、なんだっけ、双剣?素材は持ってきた?」
「素材ですか?」
「うちの店は素材持ち込みなんだよ。もしかして持ってきてない?」
んー、素材かぁ。
「あの、モンスターの毛皮とかなら......。」
「あ~、持ってないのね。」
「はい......。」
「そうか。う~ん、じゃあどんな感じの武器が欲しいの?」
「できれば軽くて強い武器がいいんですけど......。」
「軽くて強い、ねぇ......。そうだなぁ......、じゃあ、この村から東にしばらく歩いたところに『ホプパぺの丘』っていうところがあって、そこに生えてる『パぺプテ草』っていう草が特殊な素材を落とすんだけど、それをとってきな。」
「ぺ?ぱ??ん??ちょっと、もう一回お願いします。」
「ホプパぺの丘のパぺプテ草!わかった?」
「はい。ホプペペの丘のパぺプテ草。わかりました。」
「ホプパぺの丘!いい?」
「は、はい!」
パとかポとか覚えにくい!もっと覚えやすい名前を付けてくれ!!
「えっと、量ってどのくらい必要ですか?」
「双剣だったら5個くらいかな~。多分大変だよ~。今の武器ってちなみにどんなの使ってる?」
「一応初めにもらった木製の武器を使ってるんですけど......。」
「あ~、ちょっとそれじゃあ厳しいかもしれない。」
「厳しい?草の採取なのにですか?」
「うん、厳しいよ。行ってみればわかる。」
メアリーさんはニヤリと笑いながらそう言った。
「そう...ですか。」
すると、メアリーさんは店の裏側に行って武器を持ってきた。
「ほい。これを持っていきな。ただの鉄製の安物武器だから性能はあまりよくないけど、さすがに木製のよりはマシだよ。」
「はい。ありがとうございます。じゃあ行ってきます。」
「いや、多分今から行ったら帰りめちゃくちゃ遅くなるから明日行きな〜。」
「そうですか、分かりました。じゃあ明日にでも行ってきます。」
「うん、それがいいよ。」
次の日の早朝、私は『ホプパぺの丘』に向かった。
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