第7話 メアリーへの怒り

「えぇ......、なんだこれ......。」


ユウヒは何もすることができず、ただ美しい花々が枯れていくのをくぼみから見つめていることしかできなかった。


しばらくすると攻撃が止み、くぼみの外に出てみた。


「うげぇ、ひどいなこれは......。」


あたりは本当にひどい惨状であった。


しかし、パぺプテ草は力を使い果たしたようにしぼんでいて、核がむき出しになっていた。


ユウヒはゆっくりとその核に近づいて思いっきり力を入れて剣を刺し、その核を砕いた。


「......。勝った気がしない。これを後4体か。」


その言葉を発した直後、パぺプテ草は消滅した。


「レベルが2上昇しました。スキル『強化』を取得しました。」


静かな丘に、アナウンスの声だけが響き渡る。


しばらくして、ユウヒは自分の頬を叩いた。


「だめだ!気を取り直していこう!!」


あと4匹。


「ドロップ品は『パぺプテ草の核』か。やっぱりこれをとって来いってことだったんだな。で、強化?これは、多分力とかを強化するスキルかな?」


顔をあげてあたりを見渡す。


ひどい惨状になっていた丘にはぽつりぽつりとピンク色の花が咲いていた。


「残ってるのはパぺプテ草だけか。さすがに毎回あんなことやってられない。なにか簡単な倒し方を調べないと。」


そういってユウヒは検索エンジンを開く。


「えっと、パぺプテ草 倒し方 と。ふむふむ。」


攻略サイトに書いてあった簡単な倒し方は、本体が土に埋まっている状態で地上に出てる花を根元から切る。


......。


「そんな簡単に倒せるのかよ......。」


近くのパぺプテ草に近づいてナイフで切ろうとしたら、


「って、おい!!攻略サイトテメー!!でたらめ書くなよ!!!」


またもやツタで腕をつかまれ、本体が地面から出てきてしまった。


「はぁ......。また戦うのかよ。もう嫌になっちゃうよ。」


ユウヒはうっすらと目に涙を浮かべながらパぺプテ草と向き合った。



何とか2体目のパぺプテ草を倒し切った。


新しく獲得したスキルのおかげもあってか、1回目よりは簡単に倒すことができた。


でもつらいのに変わりはない。


イライラしたユウヒは文句を言ってやろうともう一度攻略サイトを見る。


『注意、スキル等を使って遠くから切らないと本体が出てきてしまいます。』


「はぁ......。私の見逃しかよ......。」


2回もつらい思いをしたのに。


「メアリーあいつ先に言えよ。戻ったらぶん殴ってやる!」


心の底から湧いてきた自分への怒りはメアリーへと方向転換を行った。



メアリー「はくしょい!!ズズズズ。誰か噂でもしてるのか?おおっ、なんか寒気がしたぞ今。」


メアリーは寒気を感じて体をプルプルと震わせた。



ユウヒはスキル『投げナイフ』を使って遠くから花を切断した。


すると先ほどまでの苦労が嘘のように残りの3本は簡単に集まってしまった。


疲労を顔に浮かべながらユウヒは『メアリー武具店』へ向かった。



ユウヒは勢いよく扉を開けて、


「おい!メアリーてめぇ!先に言えよ!!!」


「えっ?えっ?ちょ?なになになに!!」


メアリー武具店の中に大きな音が響き渡った。



「うぅ......、そんなひどく殴らなくてもいいじゃない......。」


「あんたが先に言わなかったのが悪い!なんでああやってはぐらかしたの!!!」


「面白いと思って。」


再び大きな音が響いた。


「私死ぬかと思ったんだよ!!確かに先に調べなかった私も悪いけどね!!はいこれ!とってきたからよろしく!」


ユウヒは勢いよくカウンターに取ってきた素材を乗せる。


メアリーはおびえたような声で


「はい。わかりました。」


と小さくつぶやいた。


完成は4日後らしく、お詫びもかねて貸していた双剣はプレゼントしてくれるようだった。


喧嘩というのは仲が縮まるもので、メアリーとはフレンドになった。


明らかに喧嘩というよりは一方的だったが、そんなことは知ったこっちゃない。

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