第13話 お面のあやかし VS ガングロ魔女

「なに、あなた。魔法少女のフィールドに土足で上がり込んで、邪魔するの?」


 リクくんそっくりの顔をした魔女が、フヨフヨとほうきに乗って現れた。ローブはミニスカワンピースで、胸がやたらと大きい。苺谷くんに見せてもらったアバターに、そっくりである。


「あなたは何者なの?」


「パープル・キテラ」


 世界で初めて、魔女裁判にかけられた魔女の名前か。


「キテラなんて、ふざけているわね。あたしたちの直系じゃないの」


 アヤコたち魔女は、キテラを起源にしているらしい。


「どうして、人に危害を加えるの?」


 アヤコが、魔女キテラに呼びかけた。


「イヤね、誤解されるって。あたしは、この人たちの欲望を解放してあげているだけ。どうして、妨害されないといけないのかしら?」


 不服そうな顔で、魔女は語る。


「お前のせいで、周りが迷惑をしている。おとなしく、退治されよ!」


 小刀を手にして、狐面の男が魔女に切りかかった。


 ホウキを武器代わりにして、キテラがあやかし仮面の小刀を受け止める。


 二人の怪人が、本気の打ち合いをしていた。


 狐面の青年・あやかし仮面は、徒手空拳に長けている。小刀を逆手に持って、首をはねようと攻め込んでいた。


 魔女・パープル・キテラは、ホウキに込めたピンポイントの防御障壁で、あやかし仮面の攻撃を防ぐ。


「ぼーっとしている場合かい? この子も毒まみれにしてやろうかね?」


 こちらの魔女は、サユさんを盾にしていた。


「キューティーチャー・ミサキ。ボクのことはいいから、キミは少女を」


「はい。でも、キテラは殺さないで」


「それは、保証しかねるが」


「知り合いかもしれないんだ!」


 リクくんのこともある。リクくんが殺されてしまうかもしれない。その事態は避けなければ。


「……善処しよう」


 離れた場所で、二人は切り合う。


「子どもを盾にするとか、ハルキさんが喜ぶと思っているのか?」


「黙れ! ハルキくんならわかってくれる!」


「じゃあ、その手はなんだ?」


「手だと……はあ!?」


 意識ををなくしているはずのハルキくんが、魔女の手首をつかんでいた。


「そんな、ハルキくん。そうまでして、わたしを拒絶して……」


「違う! お前に、罪を重ねてほしくないんだ!」


 ハルキくんは、おそらく誰にでも平等に優しさをふりまいている。


 それが、このメイドを勘違いさせた原因だろう。


 彼女は、ハルキくんの愛情に甘えてしまったのだ。


「お前にできることは、ハルキくんの幸せを願ってあげることだ。推しの幸せは、お前の幸せだろ?」


「そう思っていた。でも結局は、孤独に理屈を付けて押さえつけているだけ!」


 ボスであるキテラの気配が強いからか、余計に魔女の欲望が肥大している。


 キテラもあやかし仮面と戦いつつ、魔女の勝利を確信していた。


 ハルキくんの手が、より力を増す。自分に、刃を向けさせた。


「やめて、ハルキくんっ!」


「よせ。キミが死ぬぞ!」


 わたしと魔女が止めようとするが、ハルキくんは無意識に自分へとナイフを向ける。




 サユさんが、そのナイフを止めた。自分の手で、握りしめて。




「お願いですハルキくん。やめてください」


 サユさんの血がナイフを通して、ハルキくんの口の中へ。


「……サユさん?」


 ハルキくんが、目を覚ます。


「よかった! ハルキさん!」


 血まみれの手で、サユさんがハルキくんと抱き合う。


 毒りんごの魔女は、毒気を抜かれたように呆然とする。もう、誰がハルキくんにとって大事な人物か、理解したのだ。


「今だ! 浄化! ジュワ!」


 わたしはステッキから、ビームを放射した。


 魔女の姿が、元のメイドへと戻っていく。


「……ちっ」


 キテラが、撤退をする。


「待て!」


 あやかし仮面が追いかけたが、見失った。

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