第16話 父と対決

「ミサキ先生は、ウチのとーちゃんを更生させたんだ」


たちばな先生のおかげで、あたしは承認欲求にとらわれずに済んだわ」


 わたしが助けた生徒たちが、口々にわたしを擁護する。


「先生がいなければ、わたくしは婚約者を失うところでしたの!」


 学級委員のサユさんが先頭に立ち、わたしをかばった。


「おのれ。親の言うことを聞けぬばかりか、こんな小さな子どもまでたぶらかしおって! 許せぬ!」


 父が、羽織を脱ぐ。もう夏も近いというのに、桜吹雪が舞った。父が、ナギナタを持った歌舞伎の獅子となる。


「ぬえええい! 許せぬ! 子は親の言うことを聞いておればよいのだ!」 


 ナギナタを振り回し、父が暴れ出す。


「聞き分けがないのは、あんたの方だ! ゆ る さ ん !」


 わたしは、髪留めに手を添えた。


 アヤコが変身用の空間を作り出し、わたしは変身をする。


「デュワ!」


 髪留めを外し、ステッキへと変えた。


 変身が完了し、わたしは魔法少女姿に。


 戦闘フィールドは、悪者が取引していそうな倉庫である。


「ええい、トンチキな格好をしよって! そんな姿で人様の前に出るとは!」


 父が、コンテナを切り裂く。


 この場所に、児童は誰も閉じ込められていないようだ。ならば、思う存分戦う。


「なんと情けない!」


「情けないのはこっちだ! 父よ! どこまでわからずやなのか!」


 ステッキで、ナギナタを受け止める。


 カーフキックで、父の内もも裏を蹴り込もうとした。


「なんの! 貴様にカーフキックを教えたのは、ワシぞ!」


 さすがに、父にはよけられる。


 それでも、カーフキックは見せかけの技だ。本命は別にある。


 ナギナタを受けつつ、ステッキを滑らせた。そのままカーフキックの足を前に出して、相手の懐に。


鉄山靠てつざんこう!」


 ショルダータックルを、相手の胸にめり込ませる。


「ぬうう!」


 本物の歌舞伎よろしく、父が首をグリンと動かした。口から、炎のブレスを吐く。


「デュワアアア!」


 わたしはステッキを構えて、ハート型の光線を放った。


 炎と光線が交差する。


「さあ、もっと威力を上げなさい!」


 いつの間にか、魔女パープル・キテラが父の側に。彼女が、父を操っているのか。


 わたしの光線が、ブレスに押されていく。


「そうはいかん!」


 またも、あやかし仮面が助けに来てくれた。魔女キテラと、激しい攻防となる。


 ブレスの威力が弱まり、わたしは父を追い込む。


 魔女の方も、相手の体術に押されそうになる。


「こしゃくな!」


 あやかし仮面の足を、魔女が杖ですくい上げようとした。


「おっと!」


 あやかし仮面が、一歩後退する。足先をカギ状にして、杖を蹴り込む。


 つんのめった魔女が、軸足に力を入れる。


 その軸足へ、さらにあやかし仮面の蹴りがめり込んだ。


「ぐう!?」


 これまでの戦いでも余裕ぶっていたキテラが、初めて苦しそうな顔になる。


「え……!? あの技は!」


 魔女の杖に食らわせたのは、わたしが苺谷いちごだにくんに教えた「カーフキック」じゃないか。


 どうして、あやかし仮面が?

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