第17話 ナギナタ対ヨーヨー
「どうしたミサキッ! よそ見をしていてはワシは倒せぬぞ!」
父が吐き出すブレスの火力が、格段に上がった。
「うるせえ! てめえなんてよそ見してても倒せるんだよ! デュワアアア!」
わたしは、ハートビームをフルパワーで放出する。
炎とハートが霧散した。
ここからは、肉弾戦の勝負になる。
「ぐぬう。どうしても教師の夢は、あきらめきれぬか?」
「母さんのあとを継ぐんだ!」
ナギナタとステッキでは、リーチに差がありすぎた。
わたしは、避けるしかない。
「ならん! ワシの後継者となって、
まだ、言っているのか?
「もう組なんて、能力のある奴らに継がせればいいだろ! 特に部下には困っていないはずだ!」
「男児がおったら、考えた! しかし、ワシにはお前しか生まれなかった」
だからって、母を蔑む理由にはならないはずだ。
「お前はそこらの男より強い! 橘組を支える屋台骨にふさわしいのは、お前しかおらんのだ!」
ナギナタの足払いを、わたしは武器へのカーフキックで逆にすくい上げる。
さっき、あやかし仮面が見せた技だ。
父のナギナタに、ヒビが入った。
「見事! それでこそ、橘後を注ぐものよ! ゆとりな若造共では、こうはいかん!」
誇らしげに、父が語る。自分の子どもに、技をかわされたのに。
「組が傾いているのは、あんたが情けないせいだろ! 自分が組を制御できないからって、娘に頼ってんじゃねえ!」
「父を支えるのが娘の仕事だろうが!」
なんて、わがままな人間だろう。
昔、母から聞いたことがある。「あんたが強すぎるから、父は甘えてしまった」と。
わたしが出ていけば、父も少しは変わるだろう。そう期待していたのに。
結局父は、わたしに依存したままだった。
ヤクザ稼業が嫌なわけじゃない。父が嫌いというわけでもなかった。
やりたいことがある。ただそれだけだ。
しかし、父は認めようとしない。
「くっそ、懐に入り込めさえすれば……?」
わたしは、胸に光るネックレスに目を通す。
変身して、すべての衣服やアクセサリは魔法少女のユニフォームに変換されていたと思っていた。しかし、ネックレスはそのままである。なぜだろう?
まあいい。これは、使えるかもしれない。
「苺谷くん、借りるよ! モードチェンジ! デュワ!」
ステッキとネックレスを、わたしは魔法で融合させた。
相手のリーチに届く武器を、作り上げる。
完成させたのは、超合金ハイパーヨーヨーだ。先端には、ステッキの先をはめ込んでいる。糸の代わりに、ネックレスのチェーンを用いた。
「くらえ!」
わたしは、ヨーヨーを投げつける。
「ぐほおおお!」
父の顔面に、ヨーヨーが炸裂した。
「うわ。すげえ威力」
母が昔見ていたTVドラマで、女子高生が使っていた武器である。わたしは世代ではない。
「お、おのれえ。ヨーヨーとは考えたな。しかしげふっ!」
父の脇腹に、ハイヒールが入った。
だが、わたしのではない。
「ぐほおおおお!」
父が無様に転がっていく。
「なにやってんだい! 帰るよ!」
「げええええ! 母ちゃん!?」
やってきてしまった。ヤクザよりも怖い母が。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます