第四章 三十路魔法少女教師の親族

第15話 恐怖の授業参観! なんで教師のわたしまで!?

 今日は授業参観の日だ。


 まさか、教師であるわたしの親まで現れるとは。


「あちゃー」と、アヤコまで頭を抱えている。


「ミサキ、ウチに帰らずまだ教師ごっこなどをしているのか!」


「ごっこじゃない! 授業中なんですから、父さんは黙ってなさい!」


 わたしは、教科書に目を戻す。


「黙るのは貴様のほうだろうが!」


 父も、引き下がらない。昔から、父はこうだった。言ったら聞かない男で、だからわたしは、家を出たのである。


「考えなおさんか、ミサキ! 極道の娘が、人にものを教えるなど!」


 極道……その言葉が出て、教室獣がザワついた。


 やはり、隠し通せるわけでもないか。


「あの、たちばな先生、極道とは?」


「わたしの家のことです。指定暴力団、橘組」


 また、教室内がザワつく。


「そうだ。お前は極道の道からは逃れられない。お前に、人の子どもを教えることはできぬ!」


 父はかたくなに、わたしが教師になることに反対していた。


「あのー。お言葉ですが」


「なんだ若造?」


 副担任の苺谷いちごだにくんが、手を挙げる。


「一介の教師である貴様に、発言権はない」


 わたしが父の暴言に意見しようとしたら、苺谷くんに止められた。


「改めてお言葉ですが、ボクが教師になれたのは、ミサ……橘先輩のおかげです」


「なに?」


「ボクは昔、どうしようもない不良でした」


 ああ、そうだったな。


 苺谷くんの家は古武術の道場で、彼も拳法を習っていた。だが、それがアダに。街へ出てはケンカばかりして、生傷が絶えなかった。


 あろうことか、初対面のわたしにケンカを売ってきたんだ。家庭教師で来たのに。


「その結果、ボクはミサキ先輩からカーフキック一発食らっただけで泣きました。丸一日立てませんでしたよ」


「だろうな。ミサキはウチの若い衆ですら敵わん」


「極道だと知っていたら、ケンカをふっかけませんでしたよ」


 しかし、わたしに完膚なきまでに倒されたのが効いたのか、苺谷くんはすっかりおとなしくなる。街でケンカもしなくなり、勉強にも熱を入れるようになった。


「今のボクがいるのは、ミサキ先輩がいるからです。それでも、彼女が教師にふさわしくないといい切れますか?」


 苺谷くんが、力説をしてくれる。


 ここまで頼もしい子に成長したのか。


 教え子ながら、わたしは少し涙ぐんでしまう。


「ほほう。わしは、あなたを見くびっていたようだ。極道の頭を前にして、臆せぬ度胸、気に入りましたぞ」


「では」


「なので、立派に成長なさったあなたが、このクラスをおまとめになればよろしい。娘は連れて帰りましょう」


「そんな!」


 わたしは、苺谷くんの肩をつかんだ。


「仕方ないさ。こういう人なんだから」


 ここまで、聞き分けのない男だったとは。父よ、見損なった。


 かといって腕ずくでわからせても、わたしが教師をクビになるだけ。


 わたしの教師生活も、これまでか。潮時だな。


「先生をやめさせないで!」


 なんと、リクくんが先頭になって、わたしと父の間に割って入った。


 他の生徒たちも。

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