第11話 お誕生日会

 三廻部みくるべ サユさんの、お誕生日会当日を迎えた。


 お屋敷は、テレビドラマに出てきそうなほど豪華である。


たちばな先生、荷物をお持ちします」


 中年のメイドさんが、わたしのビニール袋を持とうとした。


「いいんですよ。お気になさらず」


 わたしは、自分で荷物を持ってお屋敷の中へ。


 メイドさんなんて、テレビや動画サイト以外で初めて見た。しかも、メイドカフェのようにミニスカでもないし、年齢も行っている。


 わたしは特定の誰かにプレゼントを渡すことはせず、みんなで食べられるアソートを大量に買い込んだ。


 男手である苺谷いちごだにくんは、ジュースを箱買いする。


「ごめんね。片方持つっていったのに」


「平気ですって。ささ、注いで回りましょう」


 人数分の紙コップに、ジュースを注いでいく。


「お手伝いします」


 清潔感のある少年が、シャンメリーをみんなの紙コップに注いでいった。この子が、サユさんの婚約者だろうか。


「ではみんな、今日は私のお誕生日会に来てくれてありがとうございますわ。乾杯」


 主役であるサユさんが、みんなの前に現れる。淡いピンクのドレスがよく似合っていた。


 乾杯をした後、歓談となる。


「きれいね、三廻部さん」


「ありがとうございますわ。先生」


 他の生徒たちも、着付けをしてもらったのかドレスアップしている。


 その様子を、うらやましそうに見ている「少年」がひとり。富小路とみこうじ リクくんだ。



「よかったら、先生もいかが? 大人向けのドレスもありますの」


 サユさんがわたしを、二階へ誘導しようとした。


「とんでもない。気を使わなくて結構ですよー」


 こんなキラキラした服なんて着たら、場違い過ぎて死んでしまう。


「では、プレゼント交換と行きましょうか」


 生徒たちで、プレゼントの交換をし合った。


「まあ、うれしいわ」


 サユさんに当たったのは、安物のブローチだ。それでも形がきれいで、サユさんはたいそう喜ぶ。


「これ、手作りですわね? どなたのかしら?」


「それ、ボクの」


 恐る恐る、リクくんが手を挙げた。


 周りが一気に、変な空気になる。


「素敵! つけてみていいかしら?」


「ど、どうぞ」


 サユさんが、ブローチをドレスにつけた。


 感動で、サユさんは言葉が出ていない様子である。


 他の生徒たちも、あまりに似合っているのでボーッとしていた。


「まあ。こんな美しいアクセが、あなたのお店では売ってらして?」


「うん。よかったら観に来てよ」


「ありがとうございますわ。結婚指輪は、あなたにお願いしようかしら? ねえ、ハルキさん?」


 隣に立つ少年に、サユさんは声をかける。


「そうだね。ぜひ頼みたい」


 中学生風の少年も、さわやかに返答した。


「そんな結婚認めない!」


 だが、そんな穏やかな空気をぶち壊す存在が。


 わたしの荷物を受け取ろうとした、中年のメイドさんだ。


「ハルキくんと結婚するのは、この私だあ!」


 中年メイドさんの表情が、豹変した。魔法使いの老婆のような姿になる。


「きゃあ!」


 怪人となったメイドさんに、サユさんが突き飛ばされた。


「おしめを替えている頃から、私はハルキくんを慕っていた! それなのに!」


 魔女怪人が、サユさんとハルキさんに向かって、黒いリンゴを投げつける。


「危ない!」


 サユさんをかばって、ハルキさんが毒を受けた。



「ゆ る さ ん !」



 わたしは髪留めに触れて、変身する!

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