第28話 親子の再会

「ワタシ、あやかしカメンさんたちを探しました。ずっと探していました。リッキーに取り憑いたキテラを倒せる人たちは、彼らしかいないと思っていました」


 あやかし仮面にキテラ討伐を依頼していたのは、リクくんのお父さんだという。

 リッキーというのは、本来リクくんに付ける名前だったとか。さすがにいじめられるとアヤコから指摘を受けて、今の名前にして家でのみリッキー呼びにしていた。


「魔法少女が相手だと、キテラに取り込まれる危険があった。実際、素質のあったリッキーは取り込まれてしまいました」


 理性で抑え込めていたが、リクくんは恋愛感情を揺さぶられて、利用されてしまう結果に。


「ワタシ、何もできなかった」と、リクくんのお父さんが自分を責める。


「最後まで人に頼って。ワタシはだめな父親です」


「そんなことない!」


 リクくんより先に、わたしは断言した。


「あんたは、リクくんを誰よりも心配していた。だから、自分ひとりではどうにもならないと悟った。そんなときは、人を頼っていいんだ」


 一人で苦しんでいたって、何も解決なんてしない。


「そうですよ。僕たちは迷惑だなんて思っていませんし。ですよね?」


 苺谷いちごだにくんが、あやかし仮面の一団に呼びかけた。


 他の面々も、うなずいている。


「だから、なんの心配もないんです」


「そうよ。あんただって何もしていなかったわけじゃないでしょ?」


 アヤコが、ダンナさんに優しい視線を送る。


「ハイ」と、リクくんのお父さんはうなずいた。


 彼は『キテラを倒せる魔法の石』を、リクくんに届けたという。その過程で重症を負い、今日まで帰国できなかったのだ。


「あなたが探し出してくれた魔法石があったから、ミサキは魔法少女になれたし、リクも救えたの! だから、誇っていいのよ」


「アヤコ、ワタシは、またリッキーの父親でいていいのですか?」


「あなたはリクの父親よ!」


 アヤコが、ダンナさんを抱きしめる。


「リッキー。おいで」


「ダディ!」


 しゃがんだお父さんに、リクくんが抱きついた。


 何も知らない妹ちゃんも、同じように飛びつく。


「よかったわ。ありがとうミサキ。あなたのおかげよ」


「何もしていないさ、わたしは」


 緊張が解けた途端、急にわたしのお腹が鳴った。


「そうだわ! お弁当!」


「いけない! 作ってきたのに食べさせてなかった」


 その後、急遽弁当タイムとなる。


 さすがに苺谷くんと二人だけというわけにもいかず、ビニールシートをまとめてみんなで食事をした。


「おいしいです、ミサキ先輩!」


「よかったぁ……」


 焦げた卵焼きも、苺谷くんは否や顔をせずに食べてくれる。

 こういうところだよお。惚れてまうやろ。



「みなさんも……」


 わたしは、お弁当をあやかし仮面たちにも分けようとした。

 だが、誰もいない。


 もう、わたしたちの後ろにあやかし仮面たちはいなかった。


「みんな役目を終えて、帰りました」


 キテラの残党狩りに向かったのだろう、とのこと。


「それだけじゃないでしょうけどね」


 思わせぶりなセリフを、アヤコがつぶやく。


「そうだ。アヤコ、これは返すよ」


 食後、わたしはアヤコに髪留めを返した。大事なものみたいだし。


「じゃあ、これだけ返してもらうわね」


 アヤコは髪留めから、魔法の石だけを取り外す。


「無理やり魔法少女にして、ごめんなさい」


「いいって。こうでもしなきゃ、リクくんから理不尽は取り除けなかった」


 わたしの髪に、アヤコが髪留めをつける。


「代わりに、あたしが持ってる魔法石をあげるわ。幸せを呼ぶパワーストーンよ。がんばんなさい」


 アヤコから背中を押された。


 振り返ると、もうアヤコたちはいない。スマホのメッセによると、別ルートで帰るそうだ。


 今、苺谷くんとふたりきりである。


「あ、あの苺谷くん」


 わたしは、苺谷くんに声をかけた。

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