第22話 キテラとの直接対決

 戦闘フィールドは、霧がかかった異国の山を思わる場所である。


 魔物たちが、群れをなして現れた。


 とはいうものの、弱い。以前に戦ったことのある魔物ばかりだ。

 キックやパンチ、一発で倒せる。よそ見をしていても、相手の動きが読めた。


「なんか、手応えがないぞ」


 アヤコと話し合いながら、わたしは魔物を殴り飛ばす。


「違うわ、ミサキ。あんたが強くなったのよ」


 これまで多くの魔物を倒したことで、わたしのレベルは相当なものまで高まったらしい。極めつけが、父に憑依していた魔物だった。魔物を操る魔女キテラも思惑からして、あれが切り札だったのでは、とのこと。


「でもたしかに、あの魔物たちは妙ね。宿主の持つ負の感情も、そこまで食い尽くしていないわね」


 とにかく数だけ大量に集めただけではないか、と、アヤコは分析した。


「それでも、前までのあなたなら苦戦していたでしょうね。とても、さばききれなかったはずよ」


 しかし、早く終わらせたい。弁当をまだ食べていないのだ。


「ンフフ。やはり、この程度の魔物たちでは、あなたを止められないわね」


 不敵な笑みを浮かべながら、魔女が姿を現す。


「魔女キテラ!」


「今度は、あたしが直接戦ってあげる」


 あげる……か。随分な余裕だな。


「その余裕を、粉砕してやるぜ!」


 わたしは魔女に、インファイトを仕掛ける。


「できるかしら?」


 杖を起動して、魔女キテラが火球を連発した。


「フンフンフン!」


 立て続けに三発の火球を、わたしは蹴り飛ばす。


「結構、強めに撃ったのに!」


 火球を打ち返されて、キテラも焦りの色を見せた。


「この原初の魔女に追いつくほどの、パワーを持つとは。侮らないで早く仕留めるべきだったわ」


「今更気づいても遅いぜ!」


 わたしのパンチが、キテラの懐に届く。


 魔女の背が「くの字」に曲がって、爆発した。


「ぐう! やったか!?」


「やってないわ!」


 アヤコが警戒しろと声を上げてくる。


「おっと」


 ヒールによるハイキックが、背後から飛んできた。


 紙一重でかわすも、足がもつれてしまう。


 後ろに裏拳を繰り出して、こちらも再び体勢を立て直そうとした。


 しかし、背後にはもう誰もいない。


 おまけにムリヤリ身体をねじったせいで、余計にバランスを崩す。


「おしまいよ。キューティーチャーミサキ!」


 魔女は上空にいた。杖から特大火球を形成し、わたしに叩き落とそうとする。


 足が踏ん張れない状態で、受けきれるか?


 だが、火球を撃ち込もうとした魔女の腹に、何者かの足刀が突き刺さる。


「あやかし仮面!」


 わたしのピンチにかけつけたのは、あやかし仮面だった。


「どこまでも、あたしの邪魔をっ!」


 魔女が、あやかし仮面に火球を叩きつける。


 自分もろとも、爆発した。


 魔女とあやかし仮面が、盛大に吹っ飛ぶ。


「いけないっ! あやかし仮面!」


 落下してきたあやかし仮面を、わたしはキャッチした。


 青年の仮面が、割れる。


「やっぱりキミだったんだね、苺谷いちごだにくん」

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