第24話 とどめを刺す?

「待ちなよ、苺谷いちごだにくん!」 


 わたしが呼び止めると、苺谷くんが振り返った。


「やっぱりミサキ先輩が、魔女の送り込んだ魔物を倒していたんですね。魔法少女になって」


 たしか、一般人には認識阻害の魔法がかかっているはずだ。


「苺谷くんには、わたしだってバレない魔法が効かなかった?」


「はい。ボクは【あやかし】ですからね」


 彼らの一族は、かつてキテラに滅ぼされた一族の末裔だとか。あやかしの一族総出で、一度はキテラを封じたという。


「そうだよ。わたしは、自分ができることをしているんだ」


「いいと思います。だから、この役目は、ボクがつとめないと」


 倒れているキテラに、苺谷くんは素顔のまま短刀を振り下ろそうとした。


「待てよ!」


 わたしは、苺谷くんの手首をつかんだ。


「ミサキ先輩、止めないでください。キテラを止めるのは、一族の悲願」


 だから、アヤコたちが転居する場所へ向かって、キテラが目覚めるのを待っていたらしい。


「ダメよ! ミサキ止めて! キャ!」


 突然、魔法領域が崩壊した。


 アヤコが、あやかし仮面の色違いみたいな連中に捕らえられている。


「テメエら、アヤコから離れろ!」


「動くな!」


 あやかし仮面の仲間が、アヤコの首に刃を当てた。冷徹な殺意までは感じられないが、傷つけるくらいならしそうである。


「止めるでない! 魔女キテラを生かしておく限り、あやかしに未来なし!」


 和装の集団の中でも、ひときわ派手な面をつけた老人が、両手を上げた。アヤコが展開したものと同じ領域を、老人は形成する。


「さあ苺谷よ、トドメを!」


 あやかし仮面たちに焚きつけられ、苺谷くんがキテラに刃を向けた。


「それが、あんたらの答えなのか!? 小さい生徒の命を奪うことが、あんたの正義だとでもいうのか!?」


「これも定め! キテラが復活した今、もう見過ごすわけにはいかん!」


 なおもあやかし仮面のリーダー格が、苺谷くんを急かす。


「ダメ! リク、起きて!」


 悲鳴に近い声で、アヤコがリクくんに呼びかける。


 だが、魔女キテラは目を覚まさない。


「貴様もキテラのせいで、家族を失ったであろう! 思い出せ!」


 しかし、苺谷くんは刃を落とした。


「……ダメだ。ボクにはできない! 受け持っている生徒を殺すなんて!」


「かの領域は、邪悪なるもののみを倒せる! その少年とて、無事に生還できよう!」


「キテラと魂が同化していたら、死んでしまうんですよ!」


「少年も、愛する貴様に殺されれば本望だろうて!」


 苺谷くんの足元から、リーダー格が短刀を取り上げる。


「貴様ができぬなら、ワシが魔女に引導を渡してくれる!」


「ざっけんじゃねえ!」


 わたしは、リーダー格の顔をぶん殴った。

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