小さな不思議、等身大の少女。そんなお話です。
最初本作のタイトルを見た時、
「少し輪廻論的なテーマがあるのかな」
「なんとなくショートショートっぽいな」
と思い、あらすじを読むと
「ん? シュールギャグかな?」
思いました。
しかし実際はそのどちらでもなく。
本作には魔法少女が登場し、地球外生命体マスコットもいます。
もちろん魔法も登場し、それがいろんなことに関わってくる話でもあります。
それでも本作において大事なのは、少女たちの心の揺れ。
自分自身に、相手に、世の中に、怖いこと苦手なことに、分からないことに。
どう向き合っていくのか。どう取り組むのか。
それで自分は変われたのか。変われなかったのか。
それでいいのか、よくないのか。
きっと誰にも心の中にあって、きっと誰もが共感できる、
きっと誰もが触れると痛くて、でも本当はしっかり触れたい部分。
魔法でなんでもピピッと解決するような、小学生の頃に見た魔法少女と違って。
人間そのもので乗り越えようともがく、少し大人になった少女たち。
そのストーリーがきっと、あなたの心のそんな部分を、優しく洗い流してくれると思います。
みんな誰もが心に押し込めているものがある。
特に思春期で未成熟な心を持っている学生は、その想いをうまく消化できずに、時には立ち止まってしまう。
本作は、そんな心を様々な形で表現した珠玉の物語である。
物語は、人と関わることを怖がる紬希と、人の役に立ちたい優芽の二人が中心となって描かれる。
紬希は何事も深く考えるたちがあり、それ自体は悪いことではないはずだが、彼女は何事もマイナスに捉えてしまう。その結果、自傷行為のように自分を否定して、自己嫌悪してしまう。
優芽は反対に考えることが苦手であり、難しい話になると眠ってしまうほど。考えるよりもまず先に行動! というスタンスで、誰かの役に立つために様々なことにチャレンジしていく。
正反対ではあるが、二人とも互いに足りない部分を補うことができており、互いに相手の自分にはない魅力を羨んでいる。
紬希は、自分の足りない部分に自覚的であり、自分のことを『宇宙人』だと思っている。
みんなのように当たり前に人と会話できない、当たり前に感情の機微を察せない、当たり前に周囲と合わせられない……。
独自解釈であらぬ方向へと突き進み、間違った思考に行き着き、破綻する歪みを抱えていると考えている。
優芽を尊敬しながらも、彼女のようにはなれないと自己嫌悪が膨らむ紬希。
優芽は自分の知らないことを知り、勉強ができて、何ごとも深く考えられる紬希のことを尊敬し、紬希を頼りにしている。
しかし、それをうまく伝えられず、紬希が自己嫌悪から抜け出せるきっかけを与えられずにいる。
何よりも、紬希の『宇宙人』だと思い込んでいる心を知らずにいる。
それは、思考するのが苦手だからであり、優芽もその点は自覚的であるがために自分から難しい思考を放棄している。
頭が悪く取り得もないから、せめて人助けをすることで自分の価値を高めたいと思う優芽。
二人とも魅力ある能力を持ちつつも、自分自身をうまく消化できていない。
そんな思春期の苦悩と葛藤を、様々な視点からひとつの物語として編み込んだ本作は、上質な人間ドラマである。
是非とも、ご一読いただきたい。
周囲の関わりに悩む女子中学生の紬希さんと、魔法少女になり人の役に立ちたいけど考えなしな優芽さん。少女達は社会問題、福祉施設等の見知らぬ世界に苦悩葛藤しながら触れていくのであった。
第一に注目して頂きたいと思うのが、「紬希さん優芽さん達学生の心境」です。
学生時代、理想と現実のギャップに悩んだ人も多いのではないでしょうか。
そんな複雑な心境を巧みに表現していて、共感しながら読み進められる楽しさがあります。
第二に「魔法という夢のような力に隠れたダークさ」です。
この魔法、使い方を間違えれば廃人になります。このダークさに惹かれる人もいるはず。
第三に「登場人物の視点を追いながら勉強ができる」ことです。
地域問題、介護保険、発達障害など、普段目を向けない世界を知ることができます。
完結済み、1話ごとの話が1500文字程度、親しみやすい文章表現、ということで、サクサクと気軽に読める良作でございます。
頼られたい女の子と引っ張ってもらいたい女の子。
魔法少女に地球外生命体。
ふとしたきっかけと非日常が絡み合い、二人の世界が変わっていく。
上記の文章は小説の概要からの抜粋です。
中学生の紬希と優芽。引っ張ってもらいたいほうが紬希で、頼られたいほうが優芽。そして、地球外生命体のモルモル。
抜粋した小説の概要に「魔法少女と地球外生命体」とあるので、これから本作を読む方のなかには有名なアニメ作品『魔法少女まどか☆マギカ』を連想する人も少なからずいることでしょう。実を言うと、ぼくがそうでした。この作品を読みはじめる前、および読みはじめた直後の、ぼくが。
しかし実際にある程度のところまで読み進めていくと、『まどか☆マギカ』とはまったく異なる作品なのだということがわかってきます。『まどか☆マギカ』だけでなく、魔法少女の言葉から連想するであろう物語とはずいぶんと異なることに。
読了後のぼくの感想は「いい意味で予想を裏切られた、たいへん魅力的な小説」でした。
少女たちの悩みや作中で描かれる社会問題。それらを通じて、われわれが心に抱かされるような機微であったり、もどかしさなどが作者のたしかな筆力によって表現されています。個人的には、ここが本作の大きな魅力のひとつ! 登場人物たちの悩みに共感したり、共感するまでには至らなくても、うなずけるような描写が多々ありました。
本当に素敵な作品だと思います。読んだ人たちの心にしっかりと残るような!
『永劫輪転ドリームランド』、おすすめです!!
誰しもに、雁字搦めに心を縛り付けて、解こうとすればその棘に血を流すような、厄介な呪いがある。紬希にとっては色眼鏡。優芽にとっては…。作中にも様々な呪いを抱えた少女たちが登場します。その呪いは先天的であったり、後天的であったり、みんな同じじゃない。だから厄介。
この作品ではそんな『みんなちがう』部分を、地球外生命体というSF要素を支柱にすることでエンタメ性たっぷりに描き出しています。ひと言で『みんなちがう』と纏めてしまうのはとても簡単。でも、その本質を深い部分まで理解できている人はそう多くはないはずです。紬希の内向的で繊細な性格は、誰かから見れば同じだけ他者を強く思いやることができるという美点でもある。だけど紬希自身はそんな自分を肯定してあげられない。そこには誰の励ましも届かない、絶対的な事実という壁があるからです。角度によって色を変える世界で移ろいながら、若く未熟な少女たちが自身の呪いに打ちひしがれ、時にぶつかり、時に誰かの呪いによって救われ、その呪いを解こうとして届かず無力感に苛まれる様子が生々しく描かれています。
私が特に印象的に感じたのは、彼女たちが呪いに苦しむその心すらも赦し合う美しさでした。癒えなくても届かなくても、そこには確かな赦しがある。丁寧かつ奥深い人間ドラマの果てに映し出される世界の美しさには、思わず心が震えました。しかもそこに地球外生命体が重要なピースとしてはまってくるから、その鮮やかな手腕に感服すらしてしまうのです。
地球外生命体?魔法少女って?あらすじで疑問が浮かんでも大丈夫。読み終えるころにはそれらが不可欠なピースであるとわかります。
人間ドラマって複雑そう…それも大丈夫。1話あたりの文字数が少なくさくさく読めて、Web小説としても優れているのがこの作品の特徴です。
タグに並んだ言葉もなんだか難しそうだし、小説で多様性なんて理解できるか不安…そんな風に感じている人にこそ、私はこの作品を読んでほしいのです。理解できない、こわい、自分なんか。そんなあなたを縛る呪いすらも、ここでは赦されるから。
少し他力本願な少女と、人に頼られたい少女。現代を舞台にした物語に、可愛い地球外生命体も加わります。
くすっと笑える描写もあり、普段見逃しがちな問題提起に思わずドキッとして考えさせられる話もありました。
本当は分かっているけど、見ないふりをしている事が多くあると思います。
話中に身近な社会問題が色々と出てきますが、それを重いと感じさせない構成がすごいと思います。
とても生きづらい日本社会ですが、この物語の登場人物のような人達が周りにいれば、もっと日本が好きになったり興味を持ったりできるのかな、と思います。
この物語は完結しているので話数が多いなと感じた方もいるかも知れませんが、1ページが読みやすいように少なめになっているので、どんどん読み進められます。
文章も分かりやすく読みやすいので、ぜひ読んでみてください!
このお話は、頼まれたがりの女の子と引っ張ってもらいたい女の子、優芽と紬希の物語。
このふたりが徐々に変わっていく過程を、細かいエピソードを積み重ねて、丁寧に追っていきます。
その過程で、特に紬希の心情が赤裸々に描かれていて、読んでいて苦しくなるほどでした。自分で自分を追い詰めてしまう性格の紬希に、共感した人も多いのではないでしょうか。
そしていつしか、しっかり者というイメージだった優芽の輪郭がぼんやりとしてきて、危ういイメージの紬希と逆転していく。この辺りの作者の上手さと面白さをぜひ味わっていただきたい。
ここにモルモルという地球外生命体が加わり、最終章の五章では凄い展開が待っています。
ハラハラ、ドキドキ、読む手が止まりません!
残念ながら、モルモルや魔法少女のことを上手に解説することができないので、
興味を惹かれた方、まずは読んでみてください!
導入から序盤、インパクトを持ってくるわけではないのですが、主軸がとても親近感の湧く話のため、共感を覚えつつつい読み進めてしまう素晴らしい掴みになっています。
とても丁寧な描写と生き生きと喋る登場人物たち、そして生き生きと描かれているからこそ際立つのが登場人物の持つとても共感できる不安です。
何気ない日常描写もとても配慮されており、思考と行動の矛盾が見ている読み手にこれでもか、というほど伝わってきます。
そして、1章を読み進めるとよくある魔法少女とパートナーという枠に収まらない斬新な設定に思わず頷いてしまいました。
とてつもない力を持つ、わけではないのですが、少女の願望を叶えるささやかながらも見事な設定です。
そんな普通の日常の中にちょっとしたコクをくわえた物語。少女たちの行く末を見守りたくなります!
未知との遭遇からそれは始まった。
「ムーのドナーにならないか?」
「良いよ! あたし、君のドナーになってあげる!」
かくして物語は幕を上げる。ザ・ドリームランド!
と、景気の良さそうな冒頭からは想像もつかないような、現実に則した物語。
紬希はすぐにあれこれと考え込んでしまう女の子だ。
優芽は考えるよりもまず行動な女の子だ。
モルモルは白いお顔に黒い体のキュートな地球外生命体だ。
三者三様の彼女たちは、自分を知り、世界を知っていく。
私たちの世界を振り返れば、それはどこにでも発見できる。
自分が考えていることはあくまで自分だけのことであって、それが世界の真実ではない。
こちらの視点。相手の視点。客観的事実。社会的扱い。
一つの物事には常に異なる観点が存在する。
それを知ることは、時に見える世界を変える。
この作品は私たちが見て見ぬふりをしてきたその先の世界を見せてくれる。
紬希と優芽はアイデンティティと外世界との乖離に揺れながらも、手を取り合い成長していく。
生き辛さに悩む私たちの背中をそっと押してくれる、月明かりのよう。
頼られたい女の子が引っ張ってもらいたい女の子の心の扉を開く。そして白いお顔に黒い体のキュートな地球外生命体がヘッブする。
変わらないものがありながら、それでも夢を見て日々を生きる、少女たちの物語。
対人コミュニケーションに難があり、不登校気味だった主人公・紬希。
久々に来た教室で、他人から頼られることにこの上ない喜びを覚える優芽と友達になるのですが。
なんと優芽は、正体不明の地球外生命体とよく分からない契約を結んでおり……?!
様々なタイプの「生きづらさ」にフォーカスする物語です。
考えることの苦手な優芽のため、宇宙人モルモルとの「通訳」を買って出た紬希は、それを契機に多くの新たな世界に触れていきます。
例えば、認知症の老人の日常生活。
例えば、子供の発達支援の現場。
例えば、海外ルーツの生徒の学校生活。
「常識」「普通のこと」だと思っていたものが、他者にとってはそうでなかった。
そうして彼女は、今まで自分が「色眼鏡」をかけていたことを知るのです。
モルモルの不思議な力を使えば、ある程度のことはできる。だけどそれは決して万能ではない。
ゆえに、問題を真に解決することの難しさを実感してしまう。
ファンタジー要素がリアリティを上手く引き立てていて、唸りました。
紬希の仲良しグループのメンバーも、個性豊か。それぞれ多かれ少なかれ凸凹を抱えているのが見えてきます。
それでも「みんな上手に人間関係を作っているのに」と沈みがちな紬希は、どんな自分の在り方を見つけるのでしょうか。
難しいテーマを丁寧に扱った、すらすら読みやすいお話です。
登場人物みんなを好きになります。
おすすめの一作です!
まず言わせてください。主人公の紬希ちゃんの気持ちがわかりすぎて、自分とリンクしすぎて泣きそうになり、携帯を叩き割りそうになりました。
でも、私なんかと同じにしたら、失礼なくらい紬希ちゃんは頑張り屋さんです。
緊張しいで、上手く受け答えできなくて。変な風に理解が働き、とんちんかんな事を言う私も、『自分を引っ張ってくれる人』がいればなぁと、思っています。だから、よかったね紬希ちゃん!
そんな紬希ちゃんを理解し、さり気なく助けてくれる宇津井さん。頼られたい彼女と紬希ちゃんの出会いは、必然だったと思います。
生きづらい現代に寄り添い、魔法少女という面白さも兼ね備えた優しいお話を、読まなきゃ損ですぞー!
長文失礼しましたー!
最初に注意、これは「魔法少女」ものの皮をかぶった「ドキュメンタリー」です。いや、何をバカなことを言ってるんだ?と思うでしょ?マジなんですよ。
「人の役に立つ」って、どういう意味なのだろう?我々は「目を向けなければいけない現実」にあえて「目をつぶって」、自分勝手な救いを「神」みたいな「超越した存在」に求めてるのではないか?と。
これが、この物語を読んだ後の私の素直な感想です。我々は、あまりにも、「自分」のことしか見えなくなっているし、都合の悪い事を「見ない」努力をしすぎなのです。
「本当に救われなければならないのは自分ではない!」そんな当たり前のことを学べる小説です。これは「若い人」に絶対に読んで欲しい一冊です。
本作は導入からしてファンタジー要素を含むのですが、その実は少女たちの成長を描く現代ドラマです。
ゆっくりとした話の流れで、読者は戸惑うことなくストーリーに没頭できるでしょう。本作の肝である地球外生命や導入部の謎も少しずつ解明されますので安心して読み進められます。
主人公紬希と魔法少女(?)優芽。ストーリーはこの二人を中心に(現時点で)流れていきます。主人公はどこにでもいるような内気な女の子。対する優芽は地球外生命体やら人々の役に立ちたい性分と多くの属性を抱える女の子です。ある意味、彼女も主人公格なのでしょうね。宇宙人共々成長していくことでしょう。二人がどのように考え、行動していくかを読み解く。読者の楽しみの一つでしょうかね。
詳しくは読んでみていただきたいので割愛しますが、本作はジャンルにある現代ドラマで間違いありません。一風変わった導入部に戸惑うことなく読み進めるのが吉です。きっと彼女たちが織りなすストーリーに没入できることでしょう。
可愛らしく、それでいて人間らしく。
ジャンルに相応しい物語が紡がれています。
お勧めの作品です。