みんな違って、みんな生きづらい。地球外生命体との交流が色眼鏡を外す

対人コミュニケーションに難があり、不登校気味だった主人公・紬希。
久々に来た教室で、他人から頼られることにこの上ない喜びを覚える優芽と友達になるのですが。
なんと優芽は、正体不明の地球外生命体とよく分からない契約を結んでおり……?!

様々なタイプの「生きづらさ」にフォーカスする物語です。
考えることの苦手な優芽のため、宇宙人モルモルとの「通訳」を買って出た紬希は、それを契機に多くの新たな世界に触れていきます。
例えば、認知症の老人の日常生活。
例えば、子供の発達支援の現場。
例えば、海外ルーツの生徒の学校生活。
「常識」「普通のこと」だと思っていたものが、他者にとってはそうでなかった。
そうして彼女は、今まで自分が「色眼鏡」をかけていたことを知るのです。

モルモルの不思議な力を使えば、ある程度のことはできる。だけどそれは決して万能ではない。
ゆえに、問題を真に解決することの難しさを実感してしまう。
ファンタジー要素がリアリティを上手く引き立てていて、唸りました。

紬希の仲良しグループのメンバーも、個性豊か。それぞれ多かれ少なかれ凸凹を抱えているのが見えてきます。
それでも「みんな上手に人間関係を作っているのに」と沈みがちな紬希は、どんな自分の在り方を見つけるのでしょうか。

難しいテーマを丁寧に扱った、すらすら読みやすいお話です。
登場人物みんなを好きになります。
おすすめの一作です!

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