淡く光りひっそりと寄り添ってくれる、月のような物語

未知との遭遇からそれは始まった。
「ムーのドナーにならないか?」
「良いよ! あたし、君のドナーになってあげる!」
かくして物語は幕を上げる。ザ・ドリームランド!

と、景気の良さそうな冒頭からは想像もつかないような、現実に則した物語。

紬希はすぐにあれこれと考え込んでしまう女の子だ。
優芽は考えるよりもまず行動な女の子だ。
モルモルは白いお顔に黒い体のキュートな地球外生命体だ。

三者三様の彼女たちは、自分を知り、世界を知っていく。
私たちの世界を振り返れば、それはどこにでも発見できる。

自分が考えていることはあくまで自分だけのことであって、それが世界の真実ではない。
こちらの視点。相手の視点。客観的事実。社会的扱い。
一つの物事には常に異なる観点が存在する。
それを知ることは、時に見える世界を変える。
この作品は私たちが見て見ぬふりをしてきたその先の世界を見せてくれる。

紬希と優芽はアイデンティティと外世界との乖離に揺れながらも、手を取り合い成長していく。

生き辛さに悩む私たちの背中をそっと押してくれる、月明かりのよう。
頼られたい女の子が引っ張ってもらいたい女の子の心の扉を開く。そして白いお顔に黒い体のキュートな地球外生命体がヘッブする。

変わらないものがありながら、それでも夢を見て日々を生きる、少女たちの物語。

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