古代ギリシャを舞台とした『ギリシャ物語』の前日譚としての位置付けの本作品。
しかし、外伝やスピンオフという言葉で括ってしまうのはあまりにも惜しい珠玉の名作です。
物語の主人公はアテナイ氏族組織を束ねる将軍長の子息であるティリオン・アルクメオン。
しかし彼の出生にはある秘密がありました。
一見幸せに見えるティリオンの人生。
しかし運命の歯車は掛け違いを繰り返し、ついに取り返しのつかない事態が起こってしまう――
主人公であるティリオンをはじめ、登場人物すべてが人間としての魅力を放つ本作品。
そこには善人も悪人もなく、存在するのはそれぞれの事情と思惑だけ。
そう感じさせるのは各キャラクターの丁寧な掘り下げと、すぐれた心情描写のなせるわざでしょう。
全てを読み終えた時、あなたはきっとこれに続く物語を紐解いてみたくなるはずです。
さあ、かつてギリシャの地に生きた人物の数奇な運命に、思いを馳せてみませんか。
「続きが知りたい!」という思いは、物語を読んだり観たりする原動力のひとつですが、「どうしてこうなってしまったのか知りたい!」という思いもまた、大きな原動力のひとつでしょう。
「ギリシャ物語」本編を読んで抱いた疑問が――ティリオンはどのように母タラッサの死や、それを父テオドリアスが隠しつづけていたことを知ったのか、どうしてあれほど忠臣フレイウスを恐れているのか、フレイウスが自分を殺すと思いこんでいるのか、といった――この外伝では過不足なく解き明かされています。
ティリオンと近臣たちの仲睦まじい光景は微笑ましく、失われることがわかっているがゆえに切なく、本編には出番のないキャラや出番の少ないキャラの活躍も楽しく、本編以上に自由奔放にふるまう双子も可愛いです。
ティリオンを誘拐しようとするサーカス団のキャラ造形や使いかたも、実に巧み。根っからの悪人ではなく、だからこそ悲劇が引き起こされるという、運命の皮肉。
そしてそして何と、ティリオンとフレイウスの特別な絆を感じさせるシーンも……! ここだけでもごはん十杯はいけてしまいますよね?
どうやらテオドリアスとオレステスも若い頃はそういう関係だったようなので、ぜひ二人の過去話も読みたい……あっ、すみません、脱線しました。
小説でも映画でも、前日譚というのは得てして本編に及ばないものですが、「ギリシャ物語」は例外だということを保証します!
先がどうなるのだろう、とあれこれ想像させられ、読む手が止まらなくなりました。
本作は、「ギリシャ物語Ⅰ」の前日譚に当たる作品です。
本編の主人公であるティリオンは、ある時にアテナイの国を脱出し、追われる身となります。
その脱出・逃亡に至るまでの日々が描かれるエピソードなのですが、序盤の段階ではティリオンはとても平和な状態で暮らしており、周囲にいる『剣の師匠』であるフレイウス(本編ではティリオンを捕まえようと追跡する役)たちと、とても良好な関係を築いています。
この幸せな状態から、一体どうして脱出・逃亡するような事態に?
そんな疑問が浮かんだ瞬間、もう完全に「沼」にはまりました。
やはりこれぞ、「エピソード0」の面白さだ! と自信を持って言えます。
「後々にある種の悲劇・対立状態」になることがわかっている主人公。その主人公の身にこれから何が起こり、物語はスタート地点に到達するのか。
「ベルセルク」のガッツとグリフィスでもいいし、「喰霊‐零‐」の黄泉と神楽でもいい。「とても信頼し合っていたはずの仲間」が、「後に対立する」という構図が提示される。要するに「この先どうやって、この関係がこじれるの!?」という感覚は、ある種の怖いもの見たさにも通ずる興奮を与えてくれます。
本作はそういった「平穏から不穏へとじわじわ変転する緊張感」をしっかりと味わわせてくれ、読者を最後まで楽しませてくれることでしょう。
更に、ギリシャの貴族男性の間にあった「ある習慣」についての知識を得ることもでき、「OH! なんと! なんと!」と激しく心を揺さぶられることになりました(第八章に注目!)。
勉強にもなり、そして圧倒的なリーダビリティとキャラクターの魅力を味わえる、珠玉の作品。激しくオススメです!
壮大な物語、「ギリシャ物語」。その前日譚となるお話です。
美貌の青年ティリオン。
彼はアイドルのように皆の注目を集める人物ですが、実は幼少期に受けた虐待と事件による後遺症を抱えておりました、
しかし、彼には彼を深く愛する近臣たちがおりました。
ティリオンが犯罪団に狙われ、その近臣たちが彼を守り抜こうと奔走するのですが……。
とにかく、近臣たちが個性豊かな仲間達でとても楽しいです。堅苦しくなく読み進められます。
敵も非常に魅力的です。
時折突き抜けて笑えるようなギャグや、ギリシャならではのドキッとする展開も織り交ぜ、敵味方関係なく重苦しい過去が覗き、緩急が層のように折り重なった重厚ながら味わい深い物語となっております。
言うなればミルフィーユですかね。
サクッとした生地とこってりと濃厚なクリーム、それがいい塩梅なのです。
歴史物ですが、とてもとっつきやすいです。
名前も聞き慣れない名前が多いですが、人物紹介を適宜文末に入れていただいているので大変わかりやすいです。
おすすめの作品になります。
本作品は、作者渾身の【ギリシャ物語】とそれに続く【ギリシャ物語II 前編】の
前日譚である。
物語では或る美しい青年が生まれ故郷の
アテナイから隣国スパルタへと逃避行する
まさに『原因』となった事件を描き出す。
主人公の美しさと優しさ、そして文武両道
天賦の才が際立つが、それを支える7人の
家臣の忠誠と愛情…更には親世代の悲劇が
ここに詳らかとなっている。
この物語を読まずして後の壮大な叙事詩
【ギリシャ物語】は語れないと言いたいが、これらは単独で読んでも充分に完成
された物語である。但し、この続きは頗る
気になり読まずにいられなくなるだろう。
作者は、フィクションであるとの注釈を
入れてはいるが、非常に当時のギリシャ
文化や風俗を学ばれており、これをして
歴史書としても良いのではないかと思う。
しかもコメントすると、懇切丁寧に背景関係性などを解説してくれるので嬉しい。
ギリシャに関心のある人は勿論、今まで
あまり身近に感じた事のない人も必見!
これは悲劇と絆と新たなる冒険への美しい
序曲である。
「ギリシャ物語 Ⅰ」
「ギリシャ物語 Ⅱ」
へと続く、前日譚。それがこの、「外伝〜旅のはじまり〜」です。
作者さまが言うには、3つのうち、どれから読んでも良い、とのことです。
まず、歴史モノ? と嫌厭することなかれ!
入念な下調べでギリシャ時代を生き生きと描かれていますが、一話の文字数は控えめ、行間も多めにあいていて、説明も完結。
つまり、とても読みやすいです。
登場人物紹介が繰り返し挟まれ、読者は、「えーと、これ誰だっけ?」と思い出す手間が省けます。
ところどころギャグっぽい会話も挟まれ、明るい雰囲気で話は進みます。
……途中までは。
主人公、ティリオンは、すごーい美男子です。優しい人柄もあいまって、みーんな、ティリオンが大好き。
そしてここギリシャでは、なんと男性✕男性も……、おおっと! これ以上は言えねえ!
つまり、ティリオンは、男からも女からもモテモテです。あまりに美形すぎるゆえ? 屋敷奥深くで近臣たちに守られながら、外出の自由を与えられず、生活しています。
そして、ティリオンは周りから、とある秘密にされている事があります。
重大な、重大なことが……。
壮大な物語が、ここから始まります。
・読みやすく。
・歴史ロマンで。
・ティリオンが目の保養で。
・話がしっかりしてて、面白い。
おすすめですよ!
ぜひ、ご一読を!
『ギリシャ物語』『ギリシャ物語Ⅱ【前編】』と読み進み、外伝へとやってきました。
主人公であるティリオンは圧倒的なまでの美しさに恵まれた青年です。
神々しいまでの美貌、相手を思いやる優しさを持つティリオンに誰もが魅せられ、近臣達は心から彼を大切に想い、仕えています。
そしてティリオンを愛する人々の想いは、けして上辺だけのものではないのです。
それにも関わらず、『ギリシャ物語』の冒頭で、孤独な逃走劇を繰り広げていたティリオン。
彼を理解するのに、外伝の物語が多くのことを教えてくれます。
そして改めて、『ギリシャ物語』の世界が、登場する人々1人1人によって織られていく、精緻な物語であることを実感することでしょう。
たくさんの魅力に溢れた物語です。
この物語は、タイトルにもある通り「ギリシャ物語」の外伝となります。
ギリシャ物語の第一話では「とある事件」を引き起こした主人公ティリオンが、追われている場面からスタートします。ギリシャ物語(本編)の中でも事の顛末は語られるわけですが、この外伝は当時のキャラクターたちにスポットライトを当てて、「なぜ悲劇が起こってしまったのか」を掘り下げる構成となっています。
そして物語を掘り下げるうえで欠かせないのが、群像劇ならではの多彩な登場人物たちとなります。彼らには一人一人意思があり、それぞれの立場がある。そんな微妙に違う立ち位置の中で、各々が最善を尽くそうと行動するのですが、運命の歯車はそんな彼らをあざ笑うかのように少しずつ少しずつ軋みを上げてズレていく。優しさから端を発した行動も、偶然に偶然が重なれば悪意と受け取られてしまう。誰一人悪人はいないのに。誰一人として迂闊な行動はしていないのに。みんながみんなティリオンのことが大好きなのに。小さなミスともいえないミスの積み重ねが悲劇へと繋がる。その過程を繊細かつ丁寧に描かれたのが、本作「ギリシャ物語 外伝~旅のはじまり~」です。
外伝単体で読んでも十分面白いのですが、私は断然「ギリシャ物語」を読んでから外伝へ入ることをオススメしたい。なぜならそちらの方が、登場人物たちの苦悩がガツンと胸に飛び込んでくるから。
途中不可解な部分もあるかとは思いますが、しかしそれらは綿密に仕組まれたストーリー上の必然です。最後まで読めば必ず納得します。
外伝と聞くと、なんとなく「おまけ」というようなイメージがありませんか?
とんでもない! この作品をおまけなどと侮っていたら絶対に後悔しますよ。