本作品は、作者渾身の【ギリシャ物語】とそれに続く【ギリシャ物語II 前編】の
前日譚である。
物語では或る美しい青年が生まれ故郷の
アテナイから隣国スパルタへと逃避行する
まさに『原因』となった事件を描き出す。
主人公の美しさと優しさ、そして文武両道
天賦の才が際立つが、それを支える7人の
家臣の忠誠と愛情…更には親世代の悲劇が
ここに詳らかとなっている。
この物語を読まずして後の壮大な叙事詩
【ギリシャ物語】は語れないと言いたいが、これらは単独で読んでも充分に完成
された物語である。但し、この続きは頗る
気になり読まずにいられなくなるだろう。
作者は、フィクションであるとの注釈を
入れてはいるが、非常に当時のギリシャ
文化や風俗を学ばれており、これをして
歴史書としても良いのではないかと思う。
しかもコメントすると、懇切丁寧に背景関係性などを解説してくれるので嬉しい。
ギリシャに関心のある人は勿論、今まで
あまり身近に感じた事のない人も必見!
これは悲劇と絆と新たなる冒険への美しい
序曲である。
「ギリシャ物語 Ⅰ」
「ギリシャ物語 Ⅱ」
へと続く、前日譚。それがこの、「外伝〜旅のはじまり〜」です。
作者さまが言うには、3つのうち、どれから読んでも良い、とのことです。
まず、歴史モノ? と嫌厭することなかれ!
入念な下調べでギリシャ時代を生き生きと描かれていますが、一話の文字数は控えめ、行間も多めにあいていて、説明も完結。
つまり、とても読みやすいです。
登場人物紹介が繰り返し挟まれ、読者は、「えーと、これ誰だっけ?」と思い出す手間が省けます。
ところどころギャグっぽい会話も挟まれ、明るい雰囲気で話は進みます。
……途中までは。
主人公、ティリオンは、すごーい美男子です。優しい人柄もあいまって、みーんな、ティリオンが大好き。
そしてここギリシャでは、なんと男性✕男性も……、おおっと! これ以上は言えねえ!
つまり、ティリオンは、男からも女からもモテモテです。あまりに美形すぎるゆえ? 屋敷奥深くで近臣たちに守られながら、外出の自由を与えられず、生活しています。
そして、ティリオンは周りから、とある秘密にされている事があります。
重大な、重大なことが……。
壮大な物語が、ここから始まります。
・読みやすく。
・歴史ロマンで。
・ティリオンが目の保養で。
・話がしっかりしてて、面白い。
おすすめですよ!
ぜひ、ご一読を!
『ギリシャ物語』『ギリシャ物語Ⅱ【前編】』と読み進み、外伝へとやってきました。
主人公であるティリオンは圧倒的なまでの美しさに恵まれた青年です。
神々しいまでの美貌、相手を思いやる優しさを持つティリオンに誰もが魅せられ、近臣達は心から彼を大切に想い、仕えています。
そしてティリオンを愛する人々の想いは、けして上辺だけのものではないのです。
それにも関わらず、『ギリシャ物語』の冒頭で、孤独な逃走劇を繰り広げていたティリオン。
彼を理解するのに、外伝の物語が多くのことを教えてくれます。
そして改めて、『ギリシャ物語』の世界が、登場する人々1人1人によって織られていく、精緻な物語であることを実感することでしょう。
たくさんの魅力に溢れた物語です。
この物語は、タイトルにもある通り「ギリシャ物語」の外伝となります。
ギリシャ物語の第一話では「とある事件」を引き起こした主人公ティリオンが、追われている場面からスタートします。ギリシャ物語(本編)の中でも事の顛末は語られるわけですが、この外伝は当時のキャラクターたちにスポットライトを当てて、「なぜ悲劇が起こってしまったのか」を掘り下げる構成となっています。
そして物語を掘り下げるうえで欠かせないのが、群像劇ならではの多彩な登場人物たちとなります。彼らには一人一人意思があり、それぞれの立場がある。そんな微妙に違う立ち位置の中で、各々が最善を尽くそうと行動するのですが、運命の歯車はそんな彼らをあざ笑うかのように少しずつ少しずつ軋みを上げてズレていく。優しさから端を発した行動も、偶然に偶然が重なれば悪意と受け取られてしまう。誰一人悪人はいないのに。誰一人として迂闊な行動はしていないのに。みんながみんなティリオンのことが大好きなのに。小さなミスともいえないミスの積み重ねが悲劇へと繋がる。その過程を繊細かつ丁寧に描かれたのが、本作「ギリシャ物語 外伝~旅のはじまり~」です。
外伝単体で読んでも十分面白いのですが、私は断然「ギリシャ物語」を読んでから外伝へ入ることをオススメしたい。なぜならそちらの方が、登場人物たちの苦悩がガツンと胸に飛び込んでくるから。
途中不可解な部分もあるかとは思いますが、しかしそれらは綿密に仕組まれたストーリー上の必然です。最後まで読めば必ず納得します。
外伝と聞くと、なんとなく「おまけ」というようなイメージがありませんか?
とんでもない! この作品をおまけなどと侮っていたら絶対に後悔しますよ。
アテナイで大切に育てられていたティリオンが、何故、由緒ある実家を捨てて逃げているのかが、この物語を読めば分かります!
ギリシャ物語の外伝ですが、ギリシャ物語を読んでいなくても、楽しめると思います。
当時のギリシャや、アテナイ事をしっかり調べて書かれていますので、そうなんだと言う発見もありますし、読みやすい文章でクオリティがとても高いと感じます。
外伝では、登場人物それぞれの心情の描写が特に素晴らしく、それぞれの人物に共感しながら、物語の中に引き込まれて行く感じです。
そして、どんな風に気持ちがすれ違って行ったのかという様子がよく分かります。
素晴らしい物語だと思いますので、是非、皆さん読んでみてください!
誰もが見惚れてしまうほど、美しいティリオン。彼は幼少期に受けた虐待と事件のため、深刻な後遺症を持っていました。そんなティリオンを、近臣たちは深く愛し、気遣い、大切にしていました。
しかし、美しいティリオンを誘拐しようと、犯罪者たちが動き出します。近臣たちはティリオンを守り切れるのでしょうか。
こちらは『ギリシャ物語』の前日譚にあたりますが、どちらからでも楽しんでいただけると思います。
私は本編から先に読ませていただきましたが、ラストを知っていても、今回明らかになる真実や、ラストに至る経緯を、ハラハラドキドキ楽しませていただきました。
近臣たちはみんな個性豊かで、ティリオンとのやり取りが微笑ましいです。特に、ティリオンと彼の第一の近臣・フレイウスとの関係は、ロマンティックで、二人の絆がとても強いものだと感じました。
そんな彼らに、一体何が起るのか……。
是非、本編と外伝をあわせて楽しんでくださいませ!
ちなみに、近臣たちだけでなく、敵として登場するキャラクター達も魅力的です。ネタバレになるので名前などを伏せますが、一番の切れ者の活躍には、思わず声援を送ってしまいました。
あの名作「ギリシャ物語」の外伝。本伝より先に読んでも楽しめます。穏やかなタイトルとは裏腹に、波乱万丈、不運の女神に魅入られたとしか思えない、父と息子、ふたりの男性の苦悩と葛藤が綴られます。
重く悲しい物語のあちこちに、「ウチのクセモノ!」シリーズで炸裂した作者様の卓越したユーモアが散りばめられ、笑いもたっぷり堪能できます。また、キャラクターひとりひとりがしっかり作りこまれて、描かれています。当レビュー筆者は、登場する悪役たちに興味津々。悪役にするには惜しいほど、ひとりひとりのキャラが立っていて、できることなら外伝のさらに外伝に登場してほしいくらい(期待)。
重厚なのに、クリームがふわっと軽く、フルーツも効いて、おかわりが欲しくなっちゃうケーキのよう。飲み物を添えて、極上の読書タイムを召し上がれ。
文字での表現の中で、剣を交えての戦闘描写は非常に難しいと感じています。
緻密に書いていたらスピード感が失われてしまう。
ざっくり書けば、その場の緊迫感が伝わらない。
しかし、この作者様にかかりますと、迫力あり、スピード感あり……命を掛けた死闘、その緊迫感が伝わって来るのです。
文章のリズム、テンポ、描写力……本当に素晴らしいです。
そして、この作者さまの小説は、もちろん描写力だけではありません。
史実に基づいた内容、時代背景、物語の構想。
……思い通りにならない現実に、どう対処したら良いか。
なんでもアリの小説とは、まったくの別ものです。
さて、私の場合、この作者さまの小説を読みますと、
自分の小説が稚拙に思えてくる。
自分の小説が書けなくなってしまう。
ああ……なんという事でしょう。
私は、この作者さまの小説から、
色々と学ばせて頂いております。
是非あなたも、本城冴月さまの世界を、体験されてはいかがでしょうか。
本編の『ギリシャ物語』がものすごく面白かったため、こちらも拝読させて頂きました。
本編から来たということはラストを分かっていて読み始めたわけですが、まだ明かされていない内側のからくりが見事に編み込まれていて、オチを知っているのに先がどうなるのかわからないスリルがありました。むしろオチを知っているので、そこにどうやって到達するんだろうという疑問と緊張感が、初めから終わりまで見事に続きました。
しかも恐ろしいのは、全ての要素が、辛いほどにドラマティックなのです。キャラクターたちは様々な個性を持ちつつも、根底に善良さを持っている人達が殆どです。その人々が、積み重なる運命の悪戯や如何ともし難い当時の社会ルールのために、悲惨な運命になだれ込んでいく様は、見ていて内臓がよじれました(T_T)
次々に連鎖する悲劇も偶然も、実に繊細かつ自然に、そして劇的に物語に織り込まれています。作者様のアイデア、構成力、あらゆる点における手腕に感服するしかありません。
レビューが下手で大変恐縮ですが、要はとても面白いということをお伝えしたいのです。そして色とりどりの登場人物の中には、きっとあなたのお気に入りが見つかるだろうと思います。
(私はニコラオス氏とバシルさんが特にお気に入りです)
拙文失礼いたしました。素敵な物語をありがとうございました!!m(_ _)m