★の数で判断しないできちんと読んでほしい。間違いなく名作だから

この物語は、タイトルにもある通り「ギリシャ物語」の外伝となります。
ギリシャ物語の第一話では「とある事件」を引き起こした主人公ティリオンが、追われている場面からスタートします。ギリシャ物語(本編)の中でも事の顛末は語られるわけですが、この外伝は当時のキャラクターたちにスポットライトを当てて、「なぜ悲劇が起こってしまったのか」を掘り下げる構成となっています。

そして物語を掘り下げるうえで欠かせないのが、群像劇ならではの多彩な登場人物たちとなります。彼らには一人一人意思があり、それぞれの立場がある。そんな微妙に違う立ち位置の中で、各々が最善を尽くそうと行動するのですが、運命の歯車はそんな彼らをあざ笑うかのように少しずつ少しずつ軋みを上げてズレていく。優しさから端を発した行動も、偶然に偶然が重なれば悪意と受け取られてしまう。誰一人悪人はいないのに。誰一人として迂闊な行動はしていないのに。みんながみんなティリオンのことが大好きなのに。小さなミスともいえないミスの積み重ねが悲劇へと繋がる。その過程を繊細かつ丁寧に描かれたのが、本作「ギリシャ物語 外伝~旅のはじまり~」です。

外伝単体で読んでも十分面白いのですが、私は断然「ギリシャ物語」を読んでから外伝へ入ることをオススメしたい。なぜならそちらの方が、登場人物たちの苦悩がガツンと胸に飛び込んでくるから。
途中不可解な部分もあるかとは思いますが、しかしそれらは綿密に仕組まれたストーリー上の必然です。最後まで読めば必ず納得します。

外伝と聞くと、なんとなく「おまけ」というようなイメージがありませんか?
とんでもない! この作品をおまけなどと侮っていたら絶対に後悔しますよ。

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