私は今、読後の余韻をそのままにこのレビューを書いている。心を大きく揺さぶられて書かなければならない、という気持ちになったからだ。
しかし、この作品の魅力を伝えるのは非常に難しい。なぜなら、綿密に練られた一本のストーリーを最後まで読むことで、初めてこの感動へと辿り着くことができるからだ。
それでも何とかこの魅力を伝えるとするならば。何より秀でているのは、そのストーリー構成と散りばめられた伏線回収の手腕だと思う。章を隔てるごとに新たな事実が明らかとなり、物語の見え方が大きく変わっていく。同じ景色であっても、見る角度によっては全くの別物になるのと同じ理屈だ。
世界の見え方が変わった時、「なるほど」と声を上げ、「そういうことだったのか」と納得する一方で、「では、あそこはどうなのか?」という新たな疑問が生まれてくる。そしてこれらの疑問は、章が進むごとに順次明らかとなっていく。このバランスが絶妙で、続きが気になって仕方ない。
そしてクライマックスにおける心を揺さぶるような盛り上がり。
最後まで読み終えた今、私はとても心地の良い余韻に浸れている。
ヒューマンドラマでありながら、サスペンスやミステリー要素も盛り込まれた傑作です。
意外な展開が続き、ページをめくる手がとまらず一気読みしてしまいました。
ウェブ小説で、こんなにも素晴らしい作品に出会えるとは……。
大きな傷を負った主人公の凛が、少しずつ、自分の人生や周囲の人々との絆を再発見していく様子が、北海道の季節感あふれる風景の中で、切なく、美しく、描かれています。
人によっては辛いシーンもありますが、最後には大きな感動が待っています。
凛とともに、作中の喫茶店「お散歩」を訪れて、この心に残る再生の物語をぜひあなたも体験してみてください。
この作品の魅力をネタバレなしに伝える事は、なかなかに難しい。
私は2日間で、目をかっぴらいて読破した。最後の方はとくに、コメントするのも忘れ、むさぼるように読んだ。
それくらい面白い。
物語の冒頭は、交通事故にあい、プロポーズの最中であった恋人を失うシーンからはじまる。
ヒロインは、心身ともに深く傷つき、長く昏睡し、目覚めたら、高校生以降の記憶を失い、しかも、高校生の前の記憶も断片的なものになってしまった。
感情の起伏も失い、ただ、恋人と交通事故にあった地、北海道、小樽をめざす。
そこであったのはクセ強な人たち。やがて、そのクセ強な人たちの優しさにヒロインは癒され、ヒューマンドラマが………。
なぁんて、単純に、話が進むもんかい!!
この物語は、ヒューマンドラマであり、ラブロマンスであり、そしてサスペンス、ミステリーである。
読み進めるうちに、違和感……。
違和感……。
何かが、おかしい……?
と、読み進める手が止まらなくなるのである。
私はこの物語のヒーロー、好きだなぁ。魅力的です。ヒロインが惚れる気持ち、よーくわかります。
で、ごめんね。
ネタバレを防ぐために、このレビューには、ひとつ、嘘をひそませてあります。
途中まで読めば、どこが嘘だったか、すぐにわかりますよ……、ククク……。
さあ、貴方も、今すぐ読んでみればよろしい。
最後に一点だけ、けっこう、女性に対しての暴力的な表現があります。
(物語において重要な意味があり、これを省いては、とある人物の関係性は語れない)
それが読むのが辛い読者さまには、おすすめできないかな。
白で視界を奪われた北海道の路上、ガードレールを突き破り崖を転落する自動車。
事故の記憶と共に目覚めた主人公の凛は、長い昏睡で衰弱した身体で、なおも北海道を目指す。
そんな悲壮な冒頭から始まる本作、冒頭からヒトクセもフタクセもある登場人物の目白押し。
ひょっとしたら最初は眉をひそめる場面もあるかもしれません。
ですが、これらには裏があり、その不審にすらも理由があったりもします。
物語は冒頭の事故を越えて過去に踏み込んで行きます。
読み進めるうちに、そこかしこに違和感を感じ、それは不穏な気配となって心を騒めかせます。
ですが、それらは事実を踏んで行くうちに、徐々に晴れて行くでしょう。
本物語では、その人の強い意思こそが、その人自身の世界を切り開く様子を見られると思います。
そしてそこには、自分の取り巻く環境への愛情が伴わなくてはならないことも。
自らの意思を捻じ曲げてしまい、結果として苦しむ様子。
そんな存在に対して、意思を持って手を差し伸べる様を。
ミステリアスな展開に様々な伏線、ダークな過去に希望を感じさせる未来。
クセツヨな登場人物たちは一転して秘めた愛情を示し、意外な動機が詳らかにされる。
極寒の冬の北海道から始まり、初夏の爽やかな北海道に至る再生の物語。
最期まで飽きさせない、素敵な物語です。
記憶を失っても揺るがない現実がある。
断片的な悲しい記憶を少しずつ掘り起こしていく主人公が、喫茶店に集まる人と感情を触れ合わせていく愛の物語。
記憶と真相は誰の胸に置かれていて、行き着く先には悲哀と希望のどちらが待っているのか。
哀しい雰囲気を全体に纏いながらも、登場人物の冗談や軽口の表現方法が卓越していますので、小気味よく物語を拝読できます。
真相を早く知りたくなり、読み始めれば手が止まらなくなるはずです。
本作品のように、一人の心を守るため多くの人が協力して、生まれていく絆は非常に美しいものですから、現実においても多くの人が幸せになれることを願います。
本作品に出会えてよかったです。