ある女性の記憶と再起の物語、では終わらない計算された違和感がすごい!

冬の小樽、凄惨な交通事故で恋人と記憶を失った凛は再びその地を訪れる。そこで無気力と絶望に苛まれた彼女を迎えたのは個性が豊かすぎる面々、必要以上に賑やかでお節介な彼らとの日々が少しずつ凛の心を溶かしていく――――

というありがちなテレビドラマみたいなお話だと思っていましたよ、私は。少なくとも最初の10話くらいまでは。

でも次第に「おや?」と違和感に気づくのです。さっきまで賑やかにしていた人達が垣間見せるその裏側に、軽薄なセクハラ野郎だと思った男の真摯な横顔に、ほんの少しずつ記憶が戻っていく凛が抱える闇の深さに。

これは何か違うぞ、誰も彼も秘密を抱えているんじゃないか? この子の過去とは一体? と感じ取った頃にはもうすっかりこの物語に魅了されています。誰もが途中で気づくでしょう、読者が感じた違和感は全て計算された伏線で、何もかもが一つに繋がっているのです。

ミステリー好きの方にはたっぷりの伏線とミスリードを、ドラマ好きの方には濃いキャラクターを、恋愛好きの方には試練とハッピーエンドを。
ひと捻りもふた捻りも入った珠玉の物語、是非お手に取ってご覧ください!

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