伊織は、8年勤めた広告代理店の仕事をクビにされただけの、普通の人間だ。
その伊織が、ひょんなことからある中国人の日本観光ガイドをすることに。
そしたらいつの間にか裏社会の人間たちの抗争に巻き込まれていた! なんでだ!?
導入部分がすごく好きです。
一般人の伊織の視点を通すことで、無理なくコアな世界に入り込むことができます。
まだ会ったばかりのころの伊織と曹瑛のちぐはぐな関係性も面白いです。
ともに困難を乗り越えていくことで、二人の距離が縮まっていきます。
血も涙もないはずの元暗殺者が、大切な仲間を得ることで心を開き始める。その様に心揺さ振られます。
読み応えがありながら重すぎない。
随所で美味しそうなものもたくさん出てきます。
スタイリッシュな漢たちによる、光の道へ踏み出すための物語。
ぜひ読んでみてください。
これは『読むアクション映画』です。
とにかくカッコいい! クールでハードでワクワクする、その上ちょっとクスッと笑えてじんわり沁みる、最高にスタイリッシュな作品です。
本作には、二人の『無職』の男が登場します。
一人は広告代理店を退職したての平凡な主人公・伊織。
一人は裏社会に精通する隙のない中国人暗殺者・曹瑛。
全く接点のなかった二人が出会うところから幕開けする物語は、アクション、飯テロ、ブロマンスと見どころたっぷり。
シリアス一辺倒ではなく、適度にコミカルな描写の入る抜け感が良い塩梅で、スピーディで爽快な読み心地を味わえます。
元暗殺者である曹瑛の容赦ない冷徹さは、まさにプロ。彼は復讐を果たすため、中国マフィアや日本の極道と渡り合っていきます。
曹瑛はもちろん、ヤクザの若頭である榊など、クールでハイスペックないい男たちの競演に胸が躍ります。
ハードでダークな舞台の中で、主人公である伊織の平凡な善良さが光っています。
曹瑛におすすめのグルメや観光地を紹介したり、ヤバいことに巻き込まれても意外な小器用さで絶妙なアシストをしたり、味方はもちろん敵に近い立場の相手をもお人好しで絆してしまったり。
どんな状況でも自然に光であり続ける彼は、復讐のためだけに孤独に生きていた曹瑛の心を照らしていくのです。
互いに『無職』であるからこそ、ここからまた一緒に新しく歩き出せる。キャッチコピーにある通り、『絆の物語』であると感じました。
隅から隅までカッコいい作品です! 全力でおすすめします!