歪に絡み合う感情、都合良く纏まることのない想いの行方。
美しく円満に纏まらない物語の美味を味わせてくれる、大変読み応えのある群像劇です。
六人の大学生それぞれの持つ個性と、彼らなりの真剣な葛藤の末に選択していくもの、その先に待っているもの。予想をしない彼らの選択や行動に、「え、いや待って、どうして!」と読み手はじりじりと焦燥を抱かずにいられません。それでも、人間の心というのは、きっとそうスムーズに正解など見出せない。ハッピーな展開ってそう簡単なもんじゃないと、物語は読者にそんな言葉を叩きつけてくるようです。
甘さばかりではない恋情のままならなさ、不快感、後味の悪さ。人を愛したいという強烈な欲求、その気持ちが的の中心に当たらないもどかしさ——。青春期にしたたかに味わう複雑な感情がぎっしりと詰まった、この上なくリアルな手触りの物語です。
ずしりとした読み応えのある、色彩豊かな群像劇。ぜひご一読ください。
第1章を読み終わった時点で、このレビューを書いています。
とても面白い物語ですが、
何故わたしが面白いと思っているかは自分自身でもハッキリわかっていません。
それでも自分の言葉でレビューは書きたいなと思いました。
そう思わせるだけの不思議なチカラがある物語です。
それで、あんまりに下手くそなレビューにならないように。
と他の方のレビューをすこし読ませていただきましたが、
「リアルな」という言葉を使用しているレビューが多かったように思います。
たしかにリアルだなと思う人物像や状況はたくさんありました。
そして、同じカクヨムの書き手としては、リアルだと思わせる物語を描くチカラがあるのは羨ましい。
でも、考えてみればリアルってなんなんでしょう。
我々の日常生活は、だいたい昨日や明日と同じ日常を繰り返すばかりで、誰かの目にも留まることはありません。
そんな「リアルな物語」に魅力があるのは、きっと心の撮影が上手だから。
不合理な気持ちを理解できるように、わかるはずのないものをわかってしまうから。
どこか遠くの誰かや、その親しい人に響いてほしいドラマです。
あまりまとまっていないレビューになってしまいましたが、
最後まで読んでいただいた方がいたら嬉しいです。
「群像劇」なんですよ。これ、私じゃ絶対かけない「プロット管理」が死ぬほど大変な「群像劇」。もう、それだけですごいのに、キャラの「行動」とかが読んでて「混乱」してないんですよ。男女6人ですよ?そんなの普通は書けないんです。
そして、さらに信じられないのが「恋愛模様」がそこに絡むんです。私も登場人物の心境変化を「プロット」や「フラグ」で管理する方なんですが、ここまではできないなというのが、この物語を読んだ正直な感想でした。
って、全然「読み手」を考えたレビューになってなくて、ごめんなさい。物語としては、クリスマス前におきた「とある事件」をキッカケに、男女6人の感情に「色々」な変化をもたらします。それを「色々」な角度で語る感じで、なんというか、とれも「読み応え」があるというか「わかるわかる」と、各人の「心情」に対して、とても納得感が得られる物語になっています。
「大人の恋愛」が好きな人にはおススメの一作です。
誰かに惹かれる心。それは理屈で考えられるような物では無い。
好きと言う気持ちに忠実に生きられない時もある。
振り回され、己の醜い部分と向き合う羽目になる。
群像劇形式のこちらの作品。
クリスマス前の男女六人に起こった出来事が、それぞれの章で角度を変えて語られていきます。
同じように愛に焦がれながらも、立場を変えれば見え方も関り方も変わってくる。
そんな彼らの心情を丁寧に描き上げることによって、恋とは愛とは、なんと不確かな感情の集合体なのかが浮き彫りにされていきます。
確かな筆力で描きだされる世界は、切なくも美しいです。
ガラス細工のように繊細で危なっかしい彼らの姿を、どうぞ皆さんも感じてみてください。お勧めです!
大学生活。
法律上は成人でも、子供と大人の移り変わりの多感な時期です。
男女入り交じるキャンパスライフで、それぞれの思いを胸に、大学生活を謳歌します。
そして恋愛は、その充実した生活を鮮やかに彩る大切な要素。
そんな大学での青春生活をどこまでもリアルに追究した、秀逸な作品だと思います。
恋仲とは、どこまでも複雑で、理論では説明できないもの。
ときに、何で言動をとるのか、不可解なことも。
ある視点からは、読者は、女性をフッた男性に怒りを覚えますが、視点が変わると、共感してしまったり……。
そんな、ある恋愛劇を群像劇という形で様々な角度から切り取った、リアルな青春ドラマです!
大学生の竹野内小夜は、彼氏持ちのリア充。悩みもありますけど、それなりに楽しいキャンパスライフを送っていました。しかし……。
本作は彼氏彼女のほのぼのとした日常を描く恋愛小説ではありません。
仲良しカップルっていいなーなんて思いながら読み進めていましたけど、第4話で衝撃展開が訪れました。
何もかもトントン拍子にいく恋愛なんてない。恋に障害はつきものなんて言いますけど、本作でも気持ちのすれ違いや横恋慕など、数々の障害が起き、恋路の邪魔をしてきます。
恋することの苦しさ、切なさが濃厚に書かれていて苦味が強いですけど決して深いになることはなく、頑張って恋を成就させてと、読んでて必死で応援していました。
そして本作で面白いのは、群像劇という点。
様々な視点で物語を見ることで謎だった部分、キャラクターの意外な一面が分かってきて、一度読んだ部分でも読み返すと新たな発見があるかもしれません。
時に甘く、時に切なくほろ苦い恋はどこへ向かうのか。
読めば読むほど、話に深みが増す作品です。
6人の主要登場人物からなる、恋愛を中心とした群像劇。
となると、恋の矢印があっちに向いたりこっちに向いたりで、事態を把握するのが難しそうと思いがちかもしれませんが、本作はその辺のところは実にわかりやすいです。
各章ごとに、視点とメインになるキャラが分かれているため注目すべきポイントがすぐにわかりますし、少し読み進めていくと誰と誰がペアになるかもだいたい察することができて、そのあたりは割とシンプル。
ただし、ペアになると思われる二人の関係となると、そう簡単にはいかなくなるのですよね。
傍目にはどう見ても恋の矢印は向き合っていて、あとはキッカケさえあればくっつくのでは。そんな2人でさえ、乙女ゲームでいえば攻略難易度が激ムズなくらいなかなか上手くいかない。
そして、どうしてそんなことになったのかが、丁寧に説得力を持って書かれています。
この説得力こそ、本作の最大の魅力。
両想いなのになかなか上手くいかないというのは恋愛ものの定番ですが、それって描写がしっかりしていなければ、展開に納得がいかなかったり登場人物に感情移入できなかったりする場合もあります。好き同士ならさっさとくっつけばいいのに。
ですがその理由と心情がしっかり書かれていれば、そんなもどかしさが非常に心に刺さります。もちろん、想い合っている二人は早くくっついてほしい。だけどこれなら、そう簡単にはいかないのもわかる。わかってしまう。
上手くいかない切なさと、登場人物の悲しみや憤りが、すっごく伝わってくるのですよ。
そしてそんなだからこそ、いつかそれを乗り越えていって。想いよ通じあってと思わずにはいられない。
作中でも、他の子たちの恋愛が上手くいくよう応援や画策をするシーンがありましたが、それにはすっごく共感しました。
主人公である女性は、男性と付き合っていた。一生懸命に彼を愛し、些細な言動やプレゼント一つにも拘っていた。しかし、ある日突然彼から別れ話を切れり出され、そのまま本当に別れてしまった。それはどうやら、「魔女」と呼ばれる女性に関係しているらしかった。その「魔女」は、他の人と付き合っている男性を奪うと言うのだが……。
傷心の女性は幼馴染の先輩に優しくされて、フラれた時の傷を癒していく。そしてそのまま二人はつき合うことになる。しかし、先輩は女性を想えば想うほど、自分が女性の傍にいるべきではないと、身を引いてしまう。つまり女性は短期間の間に、二人も大切な男性を失ってしまうのだった。
そんな女性を慰めたのは、同性の友人だった。友人には彼氏がいるものの、女性を必死に慰めてくれる。持つべきものは友人だ。しかしその友人と彼氏の関係にも変化が訪れようとしていて……。
若者たちの複雑な恋愛模様を、丁寧に描いた群像劇。
レヴューでは女性が主人公のまま書きましたが、章によって主人公は異なり、それぞれが抱えた胸の内にあるものが、読者を魅了しています。誰に感情移入するかによって、作風が変わって見えてくるのも、この作品の魅力です。
是非、御一読下さい!
読み始めは、自分にもこんな大学生活があったな、と懐かしさを呼び起こしてくれる物語でした。そうそう、校内はこんな感じで、そんな感じの教授がいて、恋人がいて――、なんて。
まず、その大学生活がものすごくリアルなんですよ。描写がね、生々しいんですね。なんていうか。自分もそこにいるんじゃ、いたんじゃないかって錯覚するくらい。あれ、私ここの卒業生だった?って。
それでちょっと若返ったつもりでキャッキャと読んでおりましたらば、ヒロインの女の子に次々と試練が降りかかるわけですね。
私なんかはもうおばちゃんなものですから、こんなきれいな筆致でね、どこか文学の香りさえするこのお話に対して大層下世話なコメントを書いてしまったりしているんですけれども、なんて言うんでしょう、逆にね、体裁なんて気にせず怒りをぶつけたくなるほどに感情移入してしまうんですね。ストーリーそのものもそうなんですけど、そういう引き込む文章力がもうお見事だなと。いや、私は何様なんだ。
ほんとヒロインの小夜ちゃんはマジで幸せになってほしい。どんな形であれ。
第二章22話を読んだ時点でレビューを書いています。
人に気を遣いすぎてしまい、自分の心を言葉にするのが余り上手ではない小夜という女性と、彼女に純粋な愛情を抱いていた男との心模様が物語を織り成しています。
幼く、自己中心的な行動が罪悪感として根付いてしまい足かせになってしまう事や、相手を思いすぎる余り心と裏腹の行動を取ってしまうことを経験した方も多いでしょう。自分の気持ちをもう少しだけ正直に話していたら。相手の心にもう少し耳を傾けていたら。自分の恋愛に重ねてしまう人も多いのではないでしょうか。そんな、ありふれた男女の恋物語です。
登場人物達の心情が美しく赤裸々に語られ、知らず知らずに感情移入してしまいます。甘い恋にときめいたり、相手の言動に傷付いたり。登場人物達の言動に激しく揺さぶられる心を、今持て余しているところです。
「六人の群像劇」と言う事なので、物語が今後どのように進んでいくのかまだ分かりません。でも、皆が納得する終着点を迎えて欲しい。まるで友達の恋を応援するように切にそう思います。
こんなに素敵な恋物語を読まずにいるのは勿体ない。
お互いに好きなのに、うまくいかない恋愛ってあると思います。
若さゆえに視野が狭かったり、選択を間違えたり、自分がしたことが許せなかったり、相手を守るつもりが傷つけてしまったりすることがあります。
そうやって経験していくことで妥協を覚えていくわけですが、要領良く生きることに反比例するように、瑞々しさは失われてしまう。
『さよならと問う』の登場人物たちは、心配してハラハラしてしまうほどに危なっかしい。
でもだからこそ、目が離せない。爪を立てれば傷ついて腐敗してしまいそうな果実のような人物たち。その果実の瑞々しさが人々を虜にするように、彼らの不器用さがもどかしくもあり、羨ましく感じます。
丁寧に描かれる心情と会話。時折入る、太宰治や石川啄木や伊勢日記などの文学が、登場人物たちの心情をさらに深めます。
日本文学を学んだ作者だからこその心地良い文体の中に、恋愛の楽しさと悲しさともどかしさが描かれています。それが桜の盛りと散るときのような喜びと切なさを感じさせてくれて、読者の感情は忙しい!
彼らの未来がどうなるかまだ分からないけれど、さよならの前にあるものは真実への歪みなのかもしれない。願わくば、登場人物たちが自分が納得できる未来に進んでほしい。
そんなふうに感情移入して読んでしまうぐらい、質の高い文学作品です。
経験したことのないはずの痛みを、驚くほどリアルに感じさせる青春群像劇です。
まだ2人目の主人公の章の連載中ではありますが、あまりに素晴らしいのでレビューを書きます。
大人へ向かう途上にある若者たちの恋。
好きな人が同じように自分を見てくれる、たったそれだけのことが、どうしてこんなに難しいのでしょう。
ただ大人への道を辿るだけで、どうしてこれほど困難にぶつかるのでしょう。
思うようにいかない、駄目な自分ばかりが目につく、素直な言葉が出てこない——先が見えない。
ひどく苦しくて、何度も窒息しそうになりました。
言葉の選び方はもちろん、シーンの切り取り方が非常に秀逸だと感じました。
何もかもを描き込むのではなく、登場人物の心境を読み手に想像させる文章がとても好きです。
美しいものだけでなく、人の醜い部分や性的なシーンも豊かに表現されているのが見事です。
これまで視点となっている2人の主人公ともに、それぞれ深く感情移入しました。
今後、誰の視点でどんな物語が綴られるのか、期待しています!