若さゆえの、甘くもほろ苦い恋愛。さよならの先にあるものは?

お互いに好きなのに、うまくいかない恋愛ってあると思います。
若さゆえに視野が狭かったり、選択を間違えたり、自分がしたことが許せなかったり、相手を守るつもりが傷つけてしまったりすることがあります。
そうやって経験していくことで妥協を覚えていくわけですが、要領良く生きることに反比例するように、瑞々しさは失われてしまう。
 
『さよならと問う』の登場人物たちは、心配してハラハラしてしまうほどに危なっかしい。
でもだからこそ、目が離せない。爪を立てれば傷ついて腐敗してしまいそうな果実のような人物たち。その果実の瑞々しさが人々を虜にするように、彼らの不器用さがもどかしくもあり、羨ましく感じます。

丁寧に描かれる心情と会話。時折入る、太宰治や石川啄木や伊勢日記などの文学が、登場人物たちの心情をさらに深めます。
日本文学を学んだ作者だからこその心地良い文体の中に、恋愛の楽しさと悲しさともどかしさが描かれています。それが桜の盛りと散るときのような喜びと切なさを感じさせてくれて、読者の感情は忙しい! 

彼らの未来がどうなるかまだ分からないけれど、さよならの前にあるものは真実への歪みなのかもしれない。願わくば、登場人物たちが自分が納得できる未来に進んでほしい。
そんなふうに感情移入して読んでしまうぐらい、質の高い文学作品です。

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