東日本大震災は、風評被害を生み出しました。
被災地を助けたいという思いと、放射能への畏れ。この二つの間で、葛藤した人は多いのではないでしょうか?
このエッセイの書き手であるヤマシタさんも、その一人。
被災地に協力したい。無用な差別はしたくない。
そう考えながらも、放射能を気にする奥様への理解度が高く、奥様の活動に協力します。
そこで生まれた、うしろめたさ。
家族を守りたいと考えるのは、至極当然のこと。
それはヤマシタさんだけでなく、もう一人の登場人物であるUさんも同じでしょう。
誰も悪くないし、誰も責められない。
私の個人的な意見としては、助けたいからといって自己犠牲を払うのは、助けられる側の望むところではないと思います。
苦しみの中から伸ばされる助けの手よりも、安定した生活と心の余裕の中から伸ばされた手のほうが、被害者は握りやすい。
ヤマシタさんが、奥さんとUさんに誠実に向き合った姿勢は賞賛に値します。
そして今後二度と、放射能による被害が起こらないよう願います。
実体験だからこそ心を打つ、深く考えさせられるエッセイです。