甘いだけの恋ではいられない。だからこそ、幸せを願わずにはいられない。

6人の主要登場人物からなる、恋愛を中心とした群像劇。
となると、恋の矢印があっちに向いたりこっちに向いたりで、事態を把握するのが難しそうと思いがちかもしれませんが、本作はその辺のところは実にわかりやすいです。
各章ごとに、視点とメインになるキャラが分かれているため注目すべきポイントがすぐにわかりますし、少し読み進めていくと誰と誰がペアになるかもだいたい察することができて、そのあたりは割とシンプル。
ただし、ペアになると思われる二人の関係となると、そう簡単にはいかなくなるのですよね。

傍目にはどう見ても恋の矢印は向き合っていて、あとはキッカケさえあればくっつくのでは。そんな2人でさえ、乙女ゲームでいえば攻略難易度が激ムズなくらいなかなか上手くいかない。
そして、どうしてそんなことになったのかが、丁寧に説得力を持って書かれています。

この説得力こそ、本作の最大の魅力。
両想いなのになかなか上手くいかないというのは恋愛ものの定番ですが、それって描写がしっかりしていなければ、展開に納得がいかなかったり登場人物に感情移入できなかったりする場合もあります。好き同士ならさっさとくっつけばいいのに。
ですがその理由と心情がしっかり書かれていれば、そんなもどかしさが非常に心に刺さります。もちろん、想い合っている二人は早くくっついてほしい。だけどこれなら、そう簡単にはいかないのもわかる。わかってしまう。
上手くいかない切なさと、登場人物の悲しみや憤りが、すっごく伝わってくるのですよ。

そしてそんなだからこそ、いつかそれを乗り越えていって。想いよ通じあってと思わずにはいられない。
作中でも、他の子たちの恋愛が上手くいくよう応援や画策をするシーンがありましたが、それにはすっごく共感しました。

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