第十六話 吉凶
7月末、わたしは新居を訪れていた。
とはいえまだ住める状態ではなく、最新の進捗確認のためだ。
無事に「団信」をクリアしたものの、予期していなかった別の問題が起きていた。
それが以前にも軽く触れたが上下水道との接続である。
もともと更地だったこのエリアには道路までの分岐パイプが埋設されておらず、新規工事が必要だった。当初、8月中の工事予定だったのが、延びに延びてあろうことか9月中旬にめり込んでしまったのだ。
「いい知らせと、悪い知らせがある」
よく聞く台詞ではあるが、まさかこんなオチが待ち受けているとは……。
建物は外構、つまりエクステリア込みでお盆明けには完成するという。
そこからひと月もの間完全に寝かせることになるのだ。なんという贅沢な仕込み。
その晩、下の姉から電話があった。
わたしはこの浮かれた気分を戒めるべく、姉に叱ってもらおうとこんな話をした。
「1階のリビングにさ、ビリヤード台を置こうと思ってるんだ」
「お前、ちょっと落ち着けや」
姉は呆れを通り越したトーンで即答した。
つづく
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