第七話 再訪

現状説明を受けるため、GWが明けたタイミングで再び不動産を訪れた。


目的の物件は骨組みが終わり、いわゆる「棟上げ」を執り行ったあとだという。子供の頃、実家の近くで新築が建つときは、この棟上げの式典で餅や小銭を屋根の上から撒いたものだが、2022年現在はそのような風習は残っていないのだろう。



現地を視察するため、車を走らせること20分。目的の区画に到着した。もちろん関係者以外立ち入り禁止だが、わたしはもうすっかり関係者になったので、ズカズカと入り込んだ。


家屋は美しく削り出された材木が立ち並び、複雑に組み合わさっている。

壁も窓もないが、内側から見える世界はなかなか見応えのある景色だった。


「建売の場合、こういった途中経過の視察はそうできないんですよね。

 かなり珍しいですよ?」


基礎工事の段階で商談を進めているわたしだけの特権というやつだろうか。

スマホを取り出したわたしは、記念に内部構造を撮り収めることにした。


再び外に出て、改めて車庫と庭、そして通りに面した距離を確認する。webサイトに掲載されていた『イメージCG』とそこまで差異はないが、やはりコンクリ舗装や外構などのエクステリアが完成しないと、なかなか想像しにくく感じた。



「広告掲載はシステムの都合上、まだ載せることになるのですが、お客様が最初のお申込みですので、このまま進めば夏には引っ越しができそうです」


良かった。ひとまずは難関をクリアできたようだ。

このあと銀行の本審査なるものが控えているわけだが、きっと大丈夫だろう。

……生命保険とか掛けられるんですよね?


すんなり通るといいなぁ。いけるかなぁ。

生命保険の審査はどうだろう? 何気にこれ、心配なんだよなぁ。





つづく

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