第十二話 未読

渦中の甥から「(部屋に収納がないから)冬物の布団を預かってほしい」と連絡がきた。例の事態もさることながら、頼られることはむしろ嬉しいので、日付を設定してサクッと回収する運びとなった。


しかし、ここでもまた苦い思い出がフラッシュバックする。それは前回学生寮に行ったときに手前の細い路地で、買って間もない車のバンパーを擦ったことだ。



人間、苦手意識が芽生えると途端に実力が発揮できなくなるという困った性質を備えている。わたしはこのトラウマとも呼ぶべき壁を打ち破るべく、甥のいる某所へ車を走らせた。


すんなり学生寮の前に着いたわたしは、LINEで甥を呼び出すとにした。だがそのメッセージは30分経っても既読にならなかった。


本来なら捨て書きを残してさっと帰宅するところだが、相手はわたしの年齢の半分に満たない甥である。車で煙草を吸いながら辛抱強く待ったが、一向に返事がこない。仕方なく目立たない所に路駐し、甥の部屋前まで行くとドアベルを二度鳴らした。


ヤツは『今起きました』とばかりの表情でドアを開けると、「今朝、7時には起きてたんだよ」と謎の言い訳を始めた。


いや、今11時なんだが?(怒





つづく

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