第十四話 銀行
気づけば蝉も鳴き始め、7月も半ばを過ぎた。
本日は銀行のローンセンターなる店舗で、本審査の申し込みを行う。
10時集合に対して、15分前に到着していたわたしは車の中で煙草を吸いつつ、自分の心を落ち着かせていた。大丈夫だ、きっと問題ない。
5分前に不動産担当、Fさんが現れる。わたしたちはシャッターの前で待つことにした。そして10時になりセンターのドアが開場されると、秘密のブースへと移動。
いつも不思議に思っていた銀行の謎ブース(小部屋)はこういう時に使うんだなぁ、と初めて知る42歳。
すでに予習済みとはいえ、ついにこの時を迎えた。
……『団信』だ。
「ご持病などありましたら、正直に申告してください」
銀行員は言う。
わたしは堂々とした態度でこう言った。
「漢字間違えると恥ずかしいので、スマホ使います」
記載項目のなかには、該当する病名がなかったので『その他』の欄にこう書いた。
睡眠障害/現在も治療中。
通院頻度、月1回で投薬あり。
顔を上げてはいないが、不動産の担当者の雰囲気が少し変わった。
……ように感じた。
本審査には10営、だいたい2週間かかるという。
銀行員は書類を1ページ目から見直すと、
「これでしたら、 “ ほぼ ” 通る内容だと思います」
と、やや含みを残した言い方をした。
つづく
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