第十話 半分

少し日が空いたが、スケジュールを詰めるため三度不動産を訪れた。

全体的な進捗としては半分ほどで、予定通り8月には引っ越しができるようだが、大きな障壁がひとつあるという。それは下水道との接続だ。


もともと空き地だった場所ということもあり、下水道の配管が届いてないのだ。

敷地内は施工業者の領域だが道路側は市の管轄になるため、どうしてもそこで手間を挟むらしい。なんとも悩ましい。


とはいえ、こればかりは待つしかないが、それに伴う懸念点がある。

8月31日に今のマンションにて更新料+火災保険料の支払いがあるのだ。

流石に残り数日のために、20万近くも払うのは無駄すぎる……。



わたしは不動産の担当に相談をしてみた。すると、なんということでしょう!?

「もし、8月31日を過ぎて更新料が生じた場合は、オプションの代金から同額を差っ引きます」という非常に頼もしい約束を頂けた。これにはわたくしも大満足である。


いやはや、なんとも商売上手な不動産に出会えたことか。

気前よくオプションのウッドデッキとカーポートを追加しておいて本当に良かった。


事務所内でひと通りの作戦を練ったあと、現地の様子を見ませんかということで同行させてもらった。実は先週暇つぶしにこっそり視察していたので、そこまで新鮮味はない。



冒頭で「進捗は半分」と書いたが、あれは嘘だ。外構工事や道路などを考慮しなければ、建物自体は7割ほど完成している。あとは内装と外壁パネル、ソーラーシステムなどだ。


……『ソーラーシステム』??

嗚呼、素晴らしきかな21世紀。


いよいよ完成が楽しみになってきた。

次回の打ち合わせは7月2日。待ちきれない。





つづく

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