なんか知らないが北畠具教としてゲーム世界の戦国時代を駆ける!!
フェニックス
伊勢の国内政
第1話
俺はこの日もいつものように椅子に座り、安い粉コーヒーを飲みながらパソコンの画面を見ていた。そうこの日までは・・・
俺の名前は五十嵐秋羅。30歳、職業はニートだ。えっニートは仕事じゃないだと、やかましい。色々忙しいだよ!
おっと動揺してしまった、ごめん、ごめん。しかし熱いなこのコーヒーは。
ふー、落ち着いてゲームでもするかな。カチィカチィっと・・・うん、こんなゲーム、パソコンに入れていたかな?
「ドキ!ドキ!!戦国武将伝」・・・?酷いタイトルだな。すごいクソゲーの匂いがするぞ・・・
ちょっと考えてから、ゲームを起動すべくクリックをする。
(おっ、ゲームが起動するぞ。うっなんだこの光は)
パソコンの画面から光が放たれ、俺を包みだす。これは一体どういうことだ!
(なんだなんだこれはーあああぁぁぁぁぁぁ)
どれほど時間がたったか分からないが、俺は目を覚ました。
(ここはどこだ・・・なんだこの風景は!)
床は板間で、大きな和風な部屋に俺がいた。俺が生活していた部屋はもっと小汚くて、ゲームが積んであって、漫画が広がって、ティッシュが散乱しているはずだ。明らかに今までと違う所にいる。
俺は混乱していた。たしかゲームを起動しただけ・・・なんでこんな事に・・・
「お目覚めですか」
俺はいきなり声をかけられて驚いた。慌ててその声がした方に振り向く。いつの間にやら俺の隣にちょん髷で着物姿の中年のおっさんが座っている。
「なっなんだあんたは?」
そう言われたおっさんが顔色一つ変えず答える。
「これは失礼しました、私はゲームチュートリアルのモブでございます」
いきなりとんでもない話をされて、俺は思わず引っくり返ってしまった。
「ゲーム?この世界はゲームのなかなのか」
「ご明察にございます。ようこそドキ!ドキ!!戦国武将伝の世界へ。貴方様は戦国大名としてこの世界でご活躍してください」
にわかには信じられないような話であった。よく異世界に飛ぶ小説を読んでいたが、まさか実際にあるとは。だがじょじょに胸の高ぶりが込み上げてきた。
「つまり大名としてこのゲームでのし上がればいいんだな」
モブのおっさんが深々と頭を下げる。
「そうでございます。存分にご命令下さい」
俺は思わず高笑いしてしまった。すごい、これはすごいぞ。年下の社員にタメ口で指示されながら仕事をしなくていい世界。かあちゃんに仕事しろとガミガミ言われない世界。まさに桃源郷だ。
よしそうとなれば、まずなにをしようか。うんうん、まあとにかく自分のステータスとか部下の能力を見なくては。
「うーんとモブさん、ステータスとか見るのにはどうしたらいいの?」
「モブと呼び捨てで結構でございます。ステータスを見たいと心の中で思えば目の前に出てきます」
ふーんと頷きながら、俺は感心してしまった。なかなか便利のシステムだ。早速自分の能力を見てみよう。まず自分のステータスだ。すると俺の目の前にステータス表が浮かび上がる。どれどれ・・・
名前/北畠 具教
戦闘/D-
政治/D
武芸/D-
知略/D
エロ/S
・・・なんだこれはーーー。俺は思わず叫んでしまった。
「このゲームは元々の貴方の能力がそのまま適用されるという最先端なシステムを搭載しております。本当の北畠具教はもっとデータはいいのですが、書き換えをおこないました」
俺は顔を真っ赤にして怒鳴りつけた。
「なんで書き換えるんだよ。大体こういうのってチート能力になるのが普通だろ!」
「そんな都合の良い話ないですよ、ゲームじゃあるまいし」
(俺の能力ってこんな物なのか・・・うっ涙が・・・しかしエロだけやたら高いな、俺ってエロかったんだな。ってかエロのステータスっていらないだろ!)
そして俺は北畠具教って大名でやるのか・・・知らないなこんな大名。俺が知ってるは信長とか家康だけだしなー
「うーんとモブ、この北畠具教ってどんな人なの」
「端的に申しますと、伊勢の国の大名で永禄十二年・・・西暦だと1569年に織田信長に攻められて降伏、天正四年、1576年に織田家によって殺されています」
俺は顔が青くなった。えっなにそれは・・・俺、信長に攻められるの・・・
「・・・今、何年なの?」
「永禄二年、1559年でございます。史実だとあと10年もしたら攻められる事になります。あっゲームですから当然もっと早く攻められるかもしれません。ご了承ください」
「そんなぁぁぁぁひでえぇぇぇぇ能力だってこんなに酷いのにぃぃぃぃ」
「ゲームでも斬られたらすごい痛いですから、このあたりもキチンと再現しております。ちなみにクリアーするまで帰れませんよ」
「そんな再現しなくていいだろ。うぅぅぅ仕方がない・・・死にたくないし、頑張るか」
「そうです、その意気です。さあそろそろ評定を始まります。部下の能力とか国力は目の前に現れるようにしてください。あと私以外はこの世界がゲームだとは思っていません、その点お気をつけ下さい。大丈夫です、私も安心サポートいたします」
「安心サポートっていうのに限っていい加減な事が多いような・・・」
そうこう言っているとゾロゾロと人が入ってきた。みんな厳つい顔している。なんかみんなガッチリしてるし怖そうだ。大丈夫かなやれるかな・・・
男達が自分に向かって座る。そして一人の武将が話し出した。
「殿、今年の戦略はいかがいたしますか。長野家と決着が着いた今、私としては志摩の九鬼を攻めるべきと考えますが」
この人の能力を見てみよう。俺は心の中でステータスを呼び出す。そうするとステータス表が出てくる。自分以外の人には見えないのか、まったく周りは気にしていない。
名前/鳥屋尾 満栄
戦闘/B
政治/B
武芸/B
知略/B
えーっとなんて読むんだ、とりやお?でいいのか。なかなか能力が高いな。史実も簡単に書いてある。最後まで北畠具教に仕えて最後は戦死か、良い人なんだな
俺がその意見をうんうん聞いていると、また別の武将が発言した。
「三好家がこちらを狙っているという風説があります。まず大和口を固めるべきかと」
この人は誰だ。なんか俺より若そうだけど。どれどれ・・・
名前/木造具政
戦闘/C
政治/C
武芸/C
知略/C
普通だな。まあオールDの俺が言う台詞ではないけど。ってかエロのステータスって他の皆にはないのね。意味あるのかな・・・
「それは風説に過ぎぬ!」
「本当に攻められたらどうするのか!」
おいおい最初からなんか揉め出したぞ。とにかく落ち着いて考えてみよう。
うーんと……
①とにかく織田家に攻められる。
②でも今攻めても勝ち目がなさそう
③つもり誰かと一緒なら勝てるかも
俺は隣にいるモブに話しかけた。
「そういえば桶狭間って何年に起こったの?」
「永禄三年、1560年の5月です。つまり来年ですね」
うーん俺は腕を組んで考えこむ。その姿を見て喧々諤々の議論をしていた武将達もざわめきが収まる。
(どうなるかな、勝てるかな。でもやるしかないな、うん、やろう)
俺を立ち上がって、大きな声で叫ぶ。
「わが北畠家は織田攻めを当面の目標とする!」
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