第12話

雨が強く降り続いている。ある人里離れた小屋にも激しく雨音がひびいている。そこに足軽達が集まっていた。どうみても下っ端な格好で皆汚れていた。


「いやーなにをなさるんですか!!」


女の悲鳴が小屋に響く。その小屋の中には、まだ年の頃14、15といったくらいの村娘がいた。しかし村の皆とはぐれてしまった。その時案内してやると言われついて行ったその村娘は、足軽達にここに押し込められたのだ。


「私は義元様に献上の品を、村のみんなで届けに来ただけですよ。なんでこんな事するんですか!」


足軽の中の一人がすっとその村娘の前に立った。


「まあそんなつれない事言うなよ。俺達と楽しもうぜ」


その足軽はゲスな笑みを浮かべている。そんな中、後ろのほうにいた一人の足軽が止めようとしている。


「おい、止めとけって。軍律違反だぞ。もしこんな事しているのがばれたら・・・」


しかし、そんな助言などどこ吹く風と言わんばかりに、村娘は足軽に押し倒された。村娘の着物が乱れ、薄っすらと白い肌が露わになる。


「ひぃひぃひぃ……久しぶりの女だぜ!」


村娘を押し倒した足軽は興奮気味だ。


「おい、これ以上はやめとけ。これ一応カクヨムで書いてる作品なんだから、エロいシーンになったら消されるぞ!」


「おいこら、突然メタなこと言うな。大丈夫だ、安心しろって。バレやしない」


「おい、こら……」


「だから何度もしつこい!って、ヒィィィィィ!!!」


思わず後ろを振り返った足軽の顔に、鋭い真剣が突きつけられた。立派な甲冑を着込んだ侍がいつの間にか現れ、刀を突きつけているのだ。顔は明らかに怒っている。


「貴様、なにをしている!!」


驚き焦った足軽はそのまま力なく座り込んでしまった。足はガタガタと震えている。


「いや違うんです。誤解です!!」


「煩い!!誤解もクソもあるか!!地元の民に乱暴狼藉するなとお達しがあっただろうが!!連れて行け!!」


その者の部下と思われる侍達が座り込んだ足軽を取り押さえ、強引に外に連れて行く。


「おっお助けを!!」


乱暴しようとしていた足軽は連れて行かれた。刀を納めた侍が後ろで呆然としている足軽達を睨みつける。


「戦の前に兵を無駄に減らしたくない。あの者は兎も角お前達は見逃す。とっとと持ち場に戻れ!!」


「ひぃぃぃ分かりました!!」


まるで雲の子を散らすかのように足軽達は散っていった。小屋には一人の侍と村娘だけが残る。


「あっ……ありがとうございました」


その時、小屋の外で男の悲鳴が聞こえた。おそらくあの足軽が処刑されたものと思ったが、恐ろしくてそれを言うことが出来なかった。


「娘、怖い思いをさせたな。もうよいぞ。はやく村に帰ったほうがいい」


侍は先ほどまでの鬼気迫るような感じから一変し、温和な声で村娘に語りかけた。


「分かりました。あっあのうお侍様、お名前は……」


「今川家家臣、藤枝氏秋じゃ。もし戻る道中、同じ目にあったら俺の名前を出せばいいぞ」


「ご恩は一生忘れません。ありがとうございます、ありがとうございます」


村娘は何度も頭を下げてから、小屋から出て行った。藤枝氏秋はそれを見届けた後、ふーと溜息をつく。


あと藤枝氏秋は伊賀守という官位貰っているみたいなんですが、官位とか書いちゃうと作者が混乱してしまうので省いています……


「兵が乱れておる。こんな事ではいくら兵が多数でも役に立たぬ。義元様に注進するか……」


藤枝氏秋が小屋から外を眺めた。昼前から降り始めた雨はどんどん激しくなり、視界が悪くなっている。


「この雨では行軍を一時止めるのは分かるが……」


今川軍は、大高城に向かっており今日中には到着予定であった。しかし、この雨の為一時休憩を取った。普通なら奇襲を警戒するが、丸根砦、鷲津砦などこの辺りの織田方の砦を相次いで撃破しており、安全であると皆思っていた。


「まるでもう勝ったかのような雰囲気だ。まだ戦は始まったばかりというのに……」


藤枝氏秋はなにか分からぬが、強烈な不安に襲われた。小屋を出て、繋いでいた馬に乗り今川義元の本陣に向かっていく。雨はますます激しさを増していった ……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る