新・桶狭間の戦い
第7話
時に永禄3年5月18日、(西暦1560年6月12日)……
ついに俺達の軍勢は尾張の地に着いた。そして軍勢の目の前に城が見える。
「殿、あれが蟹江城にございます。城主の服部友貞殿はこちらのお仲間になりました」
鳥屋尾さんが俺に教えてくれた。一応説明すると、令和で言うと愛知県蟹江町にある城だ。本丸とかもあって、うん、まあまあの城だな。とにかく今日はこの城で軍議となるだろう。しかし気になることもある……
「あのー、僕達北畠軍はどれくらい集まったんだっけ?」
「本隊は四千、それに神戸具盛殿二百、服部殿も手勢三百ほどで加わるとの事」
俺は史実は知っている。桶狭間の戦い。織田信長は三千ほどの兵で今川二万五千以上の軍を打ち破っていることを。ぶっちゃけこちらの兵が思ったほどいない。
「……殿、これが今、掻き集められる限界です。これ以上は国が持ちません」
鳥屋尾さんは俺の気持ちを察したのか声をかけてくれた。さすがは軍師にした事はある。よく気がつく。
「殿の駄目駄目っぷりは近くの国で知らぬ者はいないですからな、誰も寄ってきませんよワハハ(爆笑)」
真逆にモブは豪快に笑う。俺は殺意が沸くが、こんな所で喧嘩をしている訳にはいかない。ここは我慢だ。しかし、こいつ本当に腹立つな。
俺は深呼吸をしながら気分を落ち着かせ、気晴らしに乗っている馬を撫でる。しかし、なかなか馬に乗るのも慣れてきたな。一応鎧を着て乗馬まではなんとかなった。しかしこれだけは……
俺は腰にある日本刀に手をかけた。ズシリと重い。そしてこれは人を斬る道具だ。いくらゲームとはいえ俺に人が斬れるのか……斬るということは人を殺めることだ……
「おーい、よう来たな!」
うん、なんか遠くから聞きなれないおっさんの声が聞こえる。蟹江城の前に髭もじゃの太ったおっさんが馬に乗っている。そのおっさんはその見かけによらず颯爽に馬から降りた。
「殿、こちらも無礼になりますから下馬しましょう」
ほいほい、分かりましたよっと。以外に下馬が一番難しいんだよな。それ、あっ、足が引っかかった。あっあっ、誰かお助け!
ガラガラガッシャーン!!
俺は足が引っかかり無様に地面に落ちた。それを見てそのおっさんは大笑いする。
「北畠の殿様は噂通り駄目駄目ですな」
クソー、いきなりみっともない姿を見せてしまったな。鎧が重くてなかなか言う事を聞かない。俺はクラクラする頭を押さえながらそのオッサンを見た。
服部 友貞
戦闘/C-
政治/D
武芸/C-
知略/D-
スキル/独立独歩
うーむ、あまりパッとしないな。まあ俺が人の事言えないけどな。
ようやく立ち直った俺はその太ったおっさん……服部友貞に声をかける。なんせ一応俺が総大将だし。
「えーと、俺は北畠具教。よろしく頼む、おっさん」
服部友貞はまた高々に笑う。うん、なんか変な事言ったかな。
「ワハハ、領主というのは何かと偉そうなのに飾らない男だな!気に入った!まあ、とにかく城に入って泥を落とそう」
なにやら気に入られたらしい。こんなおっさんより可愛い女の子に気に入られたいものだ。
「殿、またいやらしい事かんがえてるでしょ」
後ろからモブが野次を飛ばす。いちいち煩いぞ。そして俺は馬から落ちて鎧もなにもかも泥だらけになっている。戦いが始まる前からこの調子で大丈夫かという声が僅かに味方から聞こえた。
(前途多難な感じだな。しかしこっちも作戦を練ってきたんだ。負けられないぞー!)
俺は気をとり直した。そして心の中でメラメラと燃えるものを感じる。おそらく戦国大名が感じてたあろう不安と興奮の入り混じったものを……
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