第13話 平日の午後の家 1
「空くんごめんね」
夕食を食べた後でそんな風に彼女が言ってきた。良く考えたら僕はどうして3食彼女に作っているのだろうか?タダで。
「何が?」
謎の謝罪があった。思い当たる節が多すぎる。
「そんなことより、空くん勉強教えてよ。」
そうか、僕はお金を取ってもいいと思う。よく考えたらというか考えなくても、バイト代より絶対に食費の方が高い。
「僕の家庭教師のバイトってことでいいですかね。」
僕はお金を回収することにした。
「うん?何を言ってるんですか?普通に教えてくださいよ。ケチなんですか?」
彼女はそう言って胸を張って言っていた。いや、いや、いや待って待って。
「ケチはそっちでしょ。こっちは食費を君の食費とかを払ってるんだよ。だから家庭教師代金ぐらい請求してもいいでしょ。請求させろや。」
思わずそう言っていた。
「仕方ないな、もう。」
「……」
いや、ええマジで賃料を取ろうかな?
「…すいません、払わせてもらいますよ、空くん。お金は払うので、ちゃんと教えてくださいよね。でもよく考えたら高校卒業して結構時間が経っている空くんに教えられるんですか?」
なるほど、この人は僕の事を舐めているのだろうか?
「僕、ちゃんと大学行ってるんですよね、まあ教科によりますけど、教科書見れば教えられます。」
「それならいいですけど。でも空くん教えられなかったらクビですからね。」
「それは別に良いけど、何で急に勉強?今まで勉強している姿なんて見たこと無かったけど」まあそれは、彼女がこの家に寄生し始めて時間が経ってないからだろうけど。
「失礼ですね、勉強してましたよ。でも気が付いただけでしょ。分からないので悩んでたけど1人で分からない所、悩むより聞いた方が早いなって」
なるほど、勉強していたのか、全く気がつかなかった。僕が家事とかいろいろしている間に勉強していたのか。それだったらまあしょうがないか。
どうでも良いが彼女は自分の洗濯だけはしてくれる、と言うか、『乙女の服を一緒に洗濯なんかさせないから』らしく自分の物は自分で洗濯している。
でも結局僕が干す羽目になっているので、彼女の行為に意味なんてほとんどないと思う。まあそんな事はどうでも良いか。
「それで分からないのは、足し算ですか?それとも引き算ですか?もしかして掛け算ですか?星宮さん」
とりあえず煽ってみる事にした。
「馬鹿にしてるんですか?もう、空くん。昔はもっと素直だったのに。」
「馬鹿にしてる。架空の記憶ですね。」
そんな風に15歳歳下の幼馴染を名乗る少女に13歳みたいな悪ノリをした。とりあえず勉強を教える前に飲み物でもと思い台所に向かった。すると彼女は僕の動きを察したのか。
「違うし、ちゃんと私の前世の記憶です。ああ、私もお茶で良いよ。本当はコーヒーが良いけど、空くん、コーヒーは散々匂い嗅いでるから家では良いって言ってどうせ淹れてくれないし。」
そう言われたので二杯分のお茶を用意した。
結局、英語と古文漢文は単語や文法を完全に忘れていたり、社会系は記憶を失っていた。しかし、理系の意地を見せて、理系科目だけはしっかりとマウントを取ることが出来たので良かったとしよう。
とりあえず、彼女に『英語と国語全然出来ないじゃん、社会系も役に立たないじゃん、空くん』
って笑いながら言われたのがイラッと来たので暇な時に勉強をして今度ドヤ顔をしようと密かに誓った。それに勉強を教えてくれる大学生にもあてがあった。
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