第21話 冷凍庫

「終わった。」

店の近くで呟いた。声が聞こえるのだ。何言ってるかは分からないけど

なんか凄い揉めてるし、それに声大きいし、めっちゃ目立つ。下手したら通報…絶対に誤解されるな。急いで家に近づくと声がはっきりと聞こえ出した。


「駄肉、妹さんは無駄な肉が多いんですよ。それに比べて、私のスタイルは完璧ですから」

自称幼馴染がそう言っていた。なんか思ってる言い争いと違う。


「姉さん、嫉妬ですか?まあ可哀想に嫉妬ですか。」

なんか椿の方もめっちゃ好戦的だし。


何の喧嘩だよ。椿、姉の生まれ変わりは受け入れたのね。これ2人で喧嘩してるなら、あんまりこっちに矛先が向かないのでは?


「えっと、ア」

そう言った瞬間喧嘩は止まった。


「「空くん(兄)説明して」」

無理だった。美人の睨みの迫力が凄すぎる。


「えっと、ははは。」

愛想笑いが勝手に出た。


「ふう、空兄。ここは私の家でもあるんですよ。せめて報告するべきじゃないですか?」


「……はい」

正論だった。椿の言う事はど正論だった。


「私にも妹の事ちゃんと教えておくべきですよね。」

それも…いや、妹がいる話したし、てか何でその熱量で、自称幼馴染は怒れるのだろうか?


「……待って、椿が怒るのは分かる。星宮さん、君は何で怒るわけ?」


「それは、私が空くんの運命の相手だからですよ。椿ちゃんは空くんにとって妹みたいなものでしょ。」

運命の相手ね。本当に彼女が幼馴染の生まれ変わりだったら、それはまあ1回目の人生の運命の相手は僕だったかも知れない。でも生まれ変わったのだったら、新しい人生を楽しんでほしい。


「うん、まあ。」

それはそれとして、椿は大事な家族で妹の様な者だった。


「未来の義理妹の事はよく知っておかないとだからね。」

まあ、自称幼馴染が何か言っていた。


それから何故か沈黙が生まれた。


その自称幼馴染の言葉にしばらく黙っていた椿が目を少し赤くしながら

「……空兄、何でこの高校生を家に置いてるの?お姉ちゃんの生まれ変わりでも追い出してよ。」

そう叫んだ。めっちゃ拒絶してる。『まあ空兄軽蔑したよ。ロリコン』よりはましだが、相談すれば良かったよね。


「いや……」

でも、この自称幼馴染を追い出すのは気が引けた。何か気が引けるのだ。


「追い出したら、私が騒ぐからね。空くん。」

それに自称幼馴染はこんな事を言うのだ。


「大丈夫です。もしこの人を追い出して空兄が捕まっても私がずっと味方です。追い出しましょう。」

椿が凄まじい覚悟を持っていた。いや捕まりたく無いですよ。


「いえ空くんは追い出しません。だって空くんはロリコンですから。」

自称幼馴染は、またそんな事を言っていた。


「ふっ、姉さんいつの話しをしてるんですか?空くんの部屋に入った事無いんですね。」

うん?待って、椿は僕の部屋に入った事あるの?


「あるよ。でもそれがどうしたの?」

自称幼馴染も案の定侵入していた。


「姉さんは探索が甘いですね。空兄が今」


椿が何かを言おうとした時に防衛本能か

「ああああああああ」

叫んでいた。叫ぶべきと本能が言っていた。


「「……」」

2人は息ぴったりにこっちを見た。


「はぁ。とりあえずアイス溶けるので冷凍庫に入れても良いですかね?」

見られながらとりあえずそう言った。このまま半外で会話を続ければ近所迷惑だし、アイスもやばかった。


「「じゃあ家でゆっくり話そうか。空くん(兄)」」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る