第10話 星宮 楓という名の少女4
「空くんなんか言う事あるんじゃない?」
土曜日の営業が終わって掃除をしている僕の目の前に彼女はドヤ顔をしながらやって来た。
何のことか分かったが言いたくなかった。だって…絶対に調子に乗る。
「掃除手伝ってくれるの?」
「…まあ、手伝うよ。空くん。私、掃除も出来るから。」
彼女は不服そうにこちらを睨みつけつつ、当てつけのようにそう叫んでいた。
「……じゃあ、テーブルを拭いてくれる。」
「分かったよ。空くん……」
彼女は頬を膨らませながら、あからさまに不機嫌な態度で、テーブルを拭き始めた。
それから、しばらくして我慢の限界が来たのか。彼女は声を上げた。
「って違うでしょ。なんか、私出来ないみたいに言ってたけどどうだったかな?空くん。」
彼女は完璧にバイトをこなした。しっかりと店の雰囲気に合わせた丁寧な仕事だった。会計も一回教えたら完璧に覚えたし、文句の付けようがないぐらい完璧だった。調理以外は完璧だった。
「ごめんなさい。あそこまで優秀だとは思ってませんでした。」
「でしょ。忘れたの?空くん。私結構器用な方だったんだよ。それにコミュ力もあるし、気も使えるんだよ。」
彼女はドヤ顔で僕の顔をニヤニヤ見ながら、テーブルを上機嫌にテーブルを拭いていた。
「じゃあ、もうちょっと気を僕にも使って欲しいんだけど。」
「何言ってるのよ。空くん。気を使ってるよ。ふっ空くんはロリコンだからちょっと子供っぽい態度の方が好きでしょ。」
「……ロリコンじゃない。」
酷い風評被害だった。
「違うの?でもメイド服は好きでしょ?どうですか?私のメイド服、可愛いですか?」
めんどくさい感じはすごい幼馴染だった。
「可愛い、可愛い」
「雑なのは良くないよ。私キレてこの店の前でネガティブキャンペーンするよ。」
「そしたら、君のご飯なくなるけど良いの?」
「良くないです。でも雑可愛いはダメですよ。…いやでもちゃんとした可愛いもやっぱり要りません。恥ずかしいので」
彼女はなんか1人で騒いで自己解決していた。元気だな。
「はぁ、それで、何か食べたい物ある?」
とりあえず、思いのほか頑張った事と馬鹿にしていた事を謝罪したかった。
「お詫びの品ですか?空くん。」
「いや、まあ戦力になったし。」
「食べ物じゃなくても良いの?空くん」
嫌な予感はした。
「まあ内容次第」
「それなら私が幼馴染って」
「それは却下で」
彼女は幼馴染ではない星宮 楓である。
「はやい。じゃあ、ええ焼肉食べたい。空くん。お外で食べたいな。」
彼女はわざとらしく猫撫で声であった。可愛い見た目なのがなんか絶妙に腹が立った。
「はぁ、さっさと掃除と片付け終わらせるか。」
「私も全力で手伝うよ。」
「張り切りすぎて汚したりしないで下さいね。」
僕がそう少し馬鹿にした風に言うと
「空くんは私を何だと思ってるの?」
彼女は地団駄を踏んでいた。
高校生の地団駄はやっぱりやめた方が良いと思う。
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